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アラヌスと海底遺跡  作者: 紗吽猫
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第五章 謎解き

すっかり項垂れてしまったアラヌスを元気づける為、ルチーナは手掛かりを探すことにした。と言っても何か検討がついているわけでもなく、当てどなく探すことになる。ただ、来た道を戻ってもこれ以上何もないはず…とすると、まだよく見ていないのはこのドラゴン像と巨大な扉がある部屋という事になる。ひとまず、壁から順繰りに手掛かりを探すことにした。

中心からは暗がりになっていて気づかなかったが、近づいてみると、壁に巨大な扉に書かれていた文字と同じ文字が書かれていることがわかる。だが、それは読める文字ではないので、何が書かれているかはわからなかった。

ルチーナは入り口から左周りで壁を調べていたが、左側の壁には長い文章のようなものが書かれていることしか特に何も無いようだった。

続いて中央の扉とドラゴン像を調べてみるが、何か仕掛けがあるようにも思えず、そのまま右側の壁へと移動する。だがそこで、手掛かりを見つける事が出来た。


「アラヌス!ちょっとこっちに来て」


部屋の右奥からルチーナの声が聞こえたアラヌスはしゃがみ込んだまま答えた。


「なーにー?」


「いいからこっち来なさいってのよ!」


ルチーナに急かされ、アラヌスは声のする方に歩いていく。ルチーナは入り口から見て右側の壁の前にいた。何か壁を指さしている。姿勢を指の先から移動していくと、そこには…


「壁画…?」


右側の壁一面に描かれた壁画があった。

それは絵巻物の様に右へ進むと変わっていく。物語でも描いているようだ。神殿のような建物、十字架の描かれた棺、大きな樹、空の上のお城、台座に突き刺さった剣、雲の中から顔を出している龍のような生き物、そして立ち向かうように剣を構える人。

全てを見終えると、ひとつの壮大なストーリーを読み終えた気分になった。これは、一体何を示しているのだろうか。


挿絵(By みてみん)


アラヌスはこの物語をどこかで知っていた気がした。そんなはずはないのだが、全く知らない物語では無いような気がするのだ。改めて、龍のような生き物と対峙する人の絵の部分を眺めていた時、ふと頭の中をある言葉が過ぎった。


ー 勇ましき者、太陽の剣にて竜を討つ ー


アラヌスはその言葉を知っている。ハッとしてメモを取り出し、書き留めてきた文章と壁画を見比べる。


「そっか…これって…そういうことだったんだな!」


遺跡内に散りばめられていた文章達は、壁画のシーンを文字に起こしたもののようだ。


「じゃあ、これは1番で…次に…」


バラバラだった文章がひとつの順番に並べられていく。アラヌスは書き直したメモをルチーナに見せた。


「ルチーナ!この壁画の順番だったんだ!ほら、こんな感じー…」


アラヌスはメモを見せながら声を掛けたが、ルチーナは壁画を凝視していて微動だにしなかった。まるで、そこにいるのは魂が抜けてしまった抜け殻のような感じさえする。これは只事じゃない、そう思ったアラヌスはルチーナの肩を思いっきり揺さぶった。


「ルチーナ!ルチーナ!どうしたんだよ!」


どれだけ揺さぶっても名を叫んでも反応がない。


一体、彼女の身に何があったのか。どうして、隣で見ていた自分には何もないのに、彼女にだけ異変が起きたのか。


「ルチーナ…悪く思わないでくれよ」


アラヌスはルチーナの意識を取り戻す為、思いっきりその腹に一撃食らわせた。


「かはっ!」


衝撃的な一撃を食らったルチーナは堰を切ったように反応し始めた。


「痛っ!!ちょっと!乙女になんてことするのよ!このお馬鹿!!!」


殴られたお腹を擦りながらアラヌスを睨んだ。だが、殴られて怒っているルチーナとは裏腹に、アラヌスは心底安堵したような表情していた。その表情を見たルチーナは訳が分からなかった。


「あんた、何を安堵したような表情してんのよ。そんな趣味の持ち主だったわけ?」


「は?いやいや、違うって。殴ったのは悪かったけど、こっちは必死だったんだって!」


アラヌスは様子がおかしかったこと、揺さぶっても叫んでも反応が無かったことを話した。だが、当の本人にその自覚はなかった。


「何か覚えてないわけ?」


「何かって言われても…」


そう言われて、記憶を遡る。だが、確かに意識が無かったのか、壁画の途中から見た記憶がないし、アラヌスが話しかけてきたことも記憶になかった。もう一度、壁画を見直す。その中で、棺の辺りで思い出したことがあった。


「棺…そう、棺よ!この棺を見ていた時に、声が聞こえた気がしたのよ」


「声?どんな?」


「…わからない…でも、知らない声よ。誰?って問いかけたの。けれど、答えはなかった…」


二人は棺の部分を眺める。だが、特に何も変な所は見受けられないし、ルチーナの言う声も聞こえはしなかった。

このまま、眺めていてもこれ以上何も無いような気がした。アラヌスは改めてメモをルチーナに見せ、話の続きをすることに。


ーー 光の都、神の子ここに眠る 大いなる樹、世界を支える柱とならん


ーー この地にそびえし神の城 嵐神さえ住まうは天空城 石の道をのぼらん


ーー 見上げるは大空 我らすべて天に捧げる時 天神、天より地に降り立つ


ーー勇ましき者、天より大空の力を授かりし時 勇ましき者、太陽の剣にて竜を討つ


「あの壁画の並びにしてみたんだ。なんとなく、繋がった感じするだろ?ただ、まだ不完全な感じがするし、もしかしたら行き止まりになってて進めなかった道の先にも、同じような文章があったのかもしんない」


「んー、そうねぇ。壁画と比べてみてもまだ足りない気はするわね」


「そうなんだ。でもまぁ、壁画もあるし、何となく抜けてる部分は想像がつくじゃん。だからわざわざ探しに行かなくていいとは思うんだけど…」


「だけど、順番がわかってもあの扉を開く為の手掛かりにはなってないわよ?」


そうなのだ。これだけでは鍵を開けることは出来ない。アラヌスは文章と部屋の中を改めて見比べる。何か共通点はないのだろうか。わざわざこの部屋の壁に壁画があり、補足するように文章が…それも自分達でも読める文字で書かれていたのだからきっと何かあるはずだ。

そう思って、アラヌスは部屋を見渡すうちにある事に気づいた。

部屋の中央付近の向かいあわせのドラゴン像。その間の床に剣の絵が描かれている。そしてその剣の前、壁画で描かれていた龍のような生き物と対峙する人の絵、それと同じような位置関係の場所にある床の少し凹んだ部分。


「もしかしてー…」


アラヌスはメモを仕舞い、その凹んだ床の前に来た。その様子に気がついたルチーナが話しかける。


「何?どうかしたの?そこに何かあるわけ?」


その問いかけには答えず、アラヌスは凹んだ床を踏み込んだ。その瞬間、カチッという音がした。

次の瞬間、左右にあったドラゴン像がその台座から姿を消していた。

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