2.出逢い
放課後、友達と別れてから、しばらく。
電車に揺られて、気づけば桜は新宿の街にいた。
「どうせ暇だもん」
小さく呟いて、ふらふらと歩く。
朝起きたら、リビングに五千円が置いてあった。
千円が置いてある時は、二日間。
五千円が置いてある時は一週間、お母さんが家を空ける時だ。
彼女が何をしているかなんて知らないし、そもそも興味もない。
単身赴任中の父親は自分のことなんて気にもとめてない。
ただ、唯一。
結婚して家を出た姉だけが桜のことを気にしてくれていた。
人混みに揉まれていると、孤独の寂しさも少しは紛れる。
ただ、それは"寂しさ"が紛れるだけであって、根本的な部分は何も変わらない。
信号待ちのショーウィンドウに映る自分の制服姿は、"学校"という囲いの象徴で、茶色い革靴は、"お金"というものの虚しさだった。
「ねぇ、君」
誰かから話しかけられた。
そして、桜の体は先程まで眺めていたショーウィンドウにくっつけられている。
「バイト探してない?」
どうせ、ガールズバーか何かの勧誘だろう。
法律では高校生を雇うのは禁止なのに、以外にもこういう勧誘は多い。
ただ、今回はちょっとたちが悪かった。
答えも待たず、私の腕は掴まれ、どこかへ無理やり移動させられかけていた。
「やめてください」
何度訴えても無視される。
––––––もう、どうにでもなってしまえ。
覚悟を決めた。
そのときだった。
「何やってんの、行くよ」
男に掴まれていない方の手を誰かに握られた。
「なんだよお前」
男が彼に問いかける。
「この子の連れです。離してください」
そう言うと、案外あっさりと離してもらえた。
駅の方までたどり着いて、彼にお礼を言う。
「ありがとうございました」
いえいえ、と謙遜した笑顔は想像以上に美しくて。
「なにかお礼がしたいので、お時間があったらなんですけど、お茶でもしていきませんか?」
お礼なんて言うのはたてまえで、本当は私が誰かといたかっただけなのかもしれない。




