■登場人物紹介という名の「妖怪名鑑」■ ~人妖抄録版~
「人妖抄録 ~「妖しい、僕のまち」異聞~」の登場人物の詳細です(※ネタバレ注意)。
本編と併せて、読んでみてください。
登場する妖怪は、能力こそ本作品オリジナルですが、日本古来の妖怪を中心に登場させようと思っています。
また、本作品の妖怪達は基本的に人間と変わらない容姿をしていますので、それを念頭にお読みください。
※話が進むにつれて、随時更新していきます。
■乙手守 文詠
種族:妖怪(文車妖妃)
性別:女性
年齢:20歳
降神町郵便局のとある支局に勤務している、新人の郵便配達員。
降神町役場の人間社会適合セミナーの卒業生で、見事就職に成功した新社会人である。
その正体は“文車妖妃”という特別住民。
文車とは、かつて宮中で書簡を運んでいた車のことを指す。
「文車妖妃」はその中に納められたまま忘れ去られ、返事をもらえなかった恋文等の手紙に宿る執念から生まれる妖怪とされる。
とある古寺に眠っていたところ、その身体から放たれる妖気によって、周囲の住宅に怪奇現象を発生させていた過去がある。
その後は降神町役場の職員によって保護され、無事に社会へと巣立った。
真っ直ぐな努力家で、心優しい性格。
そのため、就職後は地域の住民にも愛されている。
少々、方向音痴。
妖力は【忘却文朧】
手紙や書物の中で朽ちた書き手の思念や怨念を、実体化させることができるが、本人が未熟なため、せいぜい空耳だったり、見間違い程度にしか認識されない。
彼女の妖力は、実は郵便配達員より図書館司書に向いている。
その場合、成長を遂げると書物に記された情報を吸収し、具現化させることが出来る大妖怪になる可能性を持つ。
■鼓峡 達人
種族:妖怪(虚空太鼓)
性別:名前からして男性
年齢:不明(外見すら不明)
降神町の南側に広がる海域に住む職業不詳の特別住民。
その正体は“虚空太鼓”という音の妖怪。
山口県の周防灘に伝わる妖怪で、ある嵐の夜、軽業師達が乗った船が沈没し、彼らが救助を求めて打ち鳴らした太鼓が、とある時期になるとどこからともなく海上に響くという言い伝えから生まれた。
伝承通りの正体不明の人物(?)で、同じ妖怪でも姿・声・嗜好など知っている者がほとんどいない。
というのも、本人が極度の人見知りで、人付き合いもほとんど無いためとされる。
名前にあるだけに、太鼓の演奏については右に出るものは無く、その勇壮かつ繊細な響きは、聞く者に感動を与えてやまない。
正に「太鼓の達人」といえる。
妖力は現段階では不明。
■怪盗“サーフェス”
種族:妖怪(面霊気)
性別:不明(見る者により男性にも女性にも見える)
年齢:807歳
神出鬼没・正体不明の謎の怪盗で、シルクハットに燕尾服、仮面とマントに身を包んだ怪人物。
その正体は“面霊気”という付喪神の一種で、年月を経て、意思を持ち、動くようになった古い面の妖怪とされる。
本編の舞台となる降神町とは違う町で20年前に出現し、古美術品を中心に盗み去っていた(盗まれた品物は、いずれも大した価値は無かった)。
犯罪を行っていて、その実、人間界に紛れ出た危険な品物(妖怪を封じた石仏、動く人形など)を保護。
人間が、怪異により傷付かないように見張っていた好人物(?)でもある。
ノリのいい性格で、盗む前に予告状を出したり、肝心な時にうっかりミスをしたりと割とお茶目。
現在は一線を退き、静かに暮らしているが、とある老刑事の挑発を期に、現役復帰を密かに目論んでいる模様。
最近は降神町南部の港町で、民宿「しおさい」を営む老女に変装している。
妖力は【百科幻装】
仮面を変化させることにより、神代の神々や英雄、鬼神や怪物にまで男女問わず変身し、その能力を使役できる。
本編では手力男(怪力)、鈿女(挑発)、火男(火炎放射)、清姫(拘束)、頼政(狙撃)などを使用。
一見、万能かつ強力な妖力だが、変身できる時間は限られており、その時間を経過すると、サーフェスの自我が変身した仮面の自我に呑みこまれてしまい、二度と元の姿に戻れなくなってしまう。
ある意味、諸刃の剣ともいえる。
ちなみに名前の「Surface」は、英語で「表面」「外面」という意味。
その名の通り、彼(彼女)の本当の名前や素顔を知る者は誰一人いないとされる。
■鬼女“黒塚”改め“黒華”
種族:妖怪(人形の霊)
性別:女性(宿る魂も女性がベース)
年齢:326歳(見た目は十代前半。元禄期に製造)
「安達ヶ原の鬼婆」で有名な、鬼女“黒塚”を模した等身大の少女人形。
稀代の天才造型師 火毘鬼 九源太による唯一無二の傑作。
その正体は“人形の霊”という器物に魂が宿った妖怪。
古来より『人形』には魂が宿りやすいといわれており、人間の娘と恋に落ちたり、夜中に楽屋で格闘したりする人形の逸話が伝わっている。
現代の怪談にも、その痕跡は見る事が出来る。
従来は無害な存在だったが、外殻となった鬼女(当時、グレていた黒塚姫野本人)が強力な存在だったためか、その伝説に影響され、妊婦の生き肝を狙う物騒な存在と化した。
20年前には、とある人形博物館に収蔵されており、何者かによって意図的に封魔の紋で動きを封じられていたが、サーフェスのミスで活動を再開する。
行動理念も物騒で、生き肝集めを邪魔する者は、誰であれ始末しようとする。
妖力…というか、必殺技は【斬肉魔道】
関節という関節から鋭利な刃を発生させ、相手を切り刻む殺人機巧技。
製作者が鬼婆伝説に歪んだ解釈を持ち、冗談混じりの悪意を込めて仕込んだ隠し機巧で、製作者本人もまさか魂が宿り、開放されるとは意図してなかった。
現在はサーフェスの下で情操教育を中心とした再教育が行われ、彼(彼女)の隠れ家でメイドとして働いている。
教育が功を奏したのか、小動物が好きで、懐かれやすくもなった。
サーフェスからは「くーちゃん」と呼ばれ、妹の様に可愛がられているらしい。
近況では、サーフェスと共に、民宿「しおさい」で祖母に変装したサーフェスの孫娘として働いている。
■橘 愛美流
種族:妖怪(倩兮女)
性別:女性
年齢:21歳
降神町に住む、就職活動にいそしむ女子大学生。
その正体は“倩兮女”
人通りのない道を歩いている者に、突然笑いかけて脅かす妖怪。
その大きな笑い声によって人の不安をかきたてるほか、気の弱い者は失神する事もあるという。
笑い声で脅かす以外に害のない妖怪とされる。
性格はやや暗めで地味。
長く「倩兮女」としての性分…TPOをわきまえない笑い上戸に悩まされてきたため、人付き合いも苦手である。
一方で、本人は気付いていないものの、友人たちからは「笑うとつられて笑ってしまい、場が明るく和やかになる」と好評を受けている「ギャップ萌え」の女性。
妖力は【万衆招楽】
発動すると本人が爆笑。それを視聴した者は、身体の緊張が抜け、リラックス状態になり、つられて笑いだす。
抵抗するには一定の対妖力防御が必要である。
また、奇襲時に発動すると、短時間だが任意の対象に恐慌・失神状態を与え、行動不能にすることが可能。
ただし、本人が未熟な上にそんな気も無いので、今のところ任意での発動は出来ない。
■尾行澤 平斗
種族:妖怪 (べとべとさん)
性別:男性
年齢:17歳
降神高校に通う特別住民の男子生徒。
正体は“べとべとさん”
夜道を歩く人間の後をつけてくる妖怪。
その足音がするのみで人に危害を加えることはないとされるが、人によっては自分をつけてくる足音を不気味に感じることもある。
だが、そういう時は道の片側に寄って「べとべとさん、お先にお越し」などと唱えれば、ついてきた人間から離れるとされる(この言い方は、各地で異なる)。
奈良県宇陀郡では暗い夜道で遭うとされ、静岡県では小山を降りてくるときに遭うといわれている。
背が低く、目が隠れるほど前髪を伸ばした少年。
気が優しく、責任感も強いが、基本的に憶病で弱気な性格。
また、妖怪としての特性なのか、存在感が極めて薄く、本人も少し気にしている。
妖力は【無影音階】
姿を透明化させ、対象の背後を追跡する。
この状態になると、相手がどれ程速く移動しても振り切ることは出来ない。
また、同時に相手の足音を複製し、任意のタイミングで響かせることが可能。この複製音には、抵抗に失敗した相手を恐慌状態に陥れる場合がある。
相手を撹乱するには効果が高い妖力だが、その一方で、伝承通りに「先を譲られる」とその効果は消失してしまう。
■追掛 霙路
種族:妖怪 (ぴしゃがつく)
性別:男性
年齢:17歳
降神高校に通う特別住民の男子生徒。
正体は妖怪“ぴしゃがつく”
福井県坂井郡(現・坂井市)に伝わる“べとべとさん”に近い妖怪で、同じく夜道を歩いている人間の後をつけてくる。
“べとべとさん”と異なる点は、霙が降る夜に現れ、その足音が「ぴしゃっ…ぴしゃっ…」となるところ。
足音で恐怖を呼び起こす部分は“べとべとさん”と同じだが、この妖怪は憑いたら離れる事が無く、目的地に到着するまで執拗に追い掛けてくるため、気の小さい人間にとっては、より性質が悪い存在。
“べとべとさん”こと、尾行澤 平斗の従兄弟にあたり、背格好もよく似ているが、彼は前髪で片目を隠しているので、それで見分けがつく。
また、平斗とは違い、ポジティブかつアグレッシブでいたずら好きなところがあり、特に人を脅かす事が大好き。ちなみに性格は対極の二人だが、仲は良い模様。
妖力は【零陰響歩】
平斗の【無影音階】に似た妖力で、姿を対象の影に潜ませ、その背後を追跡する。
この状態になると、相手がどれ程速く移動しても振り切ることは出来ない。
また、同時に相手の足音を変質させ、「ぴしゃっ」という音を響かせることが可能。この複製音には、抵抗に失敗した相手を恐慌状態に陥れる場合がある。
【無影音階】の様に足音の複製は出来ない代わりに、先を譲られても破られることが無いのが強み。
■ゴータイショ―
種族:【初代】妖怪(瀬戸大将)/【二代目】人間→?
性別:いずれも男性
年齢:【初代】108歳/【二代目】29歳
初代の本名は「淵掛 竜司」
暴力団「九十九会」に所属するチンピラだったが、組を裏切り、宝珠「九十九珠」を盗み出す。
しかし、追手によって重傷を負い、落命。その最期に二代目となる「高槻 匠」と運命の邂逅を果たし、自らの妖力を込めた「瀬戸甲冑」と「九十九珠」を託した。
臆病で役立たずと言われていたが、芯は強く、心から降神町を愛していた特別住民。
その正体は“瀬戸大将”
付喪神の一種で、捨てられた瀬戸物で出来た武者姿で描かれる。
妖力は【重陶器身】
瀬戸物の鎧を纏う事で自らの各ステータスを向上させる事が出来るが、その効果はそれほど強力なものではなかった。
二代目の高槻は、教師を目指す正義感が強いだけのごく普通の人間の大学生だったが、竜司との出会いを経て、その身に妖怪の力と人間の心を有する存在となる。
元々特撮ヒーローに強い憧れをもっており、装着する「瀬戸甲冑」を「SET ARMOR」、使用する妖力を【重陶器身】から【超闘器神】と名付け変え、竜司との約束を守り通すため、正義のメタルヒーローとして悪と戦う道を選んだ。
鎧に内蔵した「九十九珠」による強化もあって、その力は本物のスーパーヒーローとして十分なものとなっており、数々の戦いをくぐり抜けてきたことから、その戦闘力は作中でも最強に近い。
使用する妖力は前述の通り【超闘器神】
「SET ARMOR」に備わった26の武器・防具を展開、自在に使いこなすもの。
主な必殺技は「徳利長槍」及び「徳利双烈槍」
永遠のライバル「プロフェッサーG」をはじめ、闇に紛れて降神町を侵略しようとした数々の悪の組織から、人知れず町を守り抜いた伝説の英雄である。
普段は人間として降神高校で古典の教師をしており、大きな身体と穏やかな性格から「テディ」の愛称で呼ばれている生徒思いの好人物。
■禅丈 丸弧
種族:妖怪(禅釜尚)
性別:(一応)男性
年齢:不詳
暴力団「九十九会」の幹部。背の低い、小太りで大きな丸顔の男。
グラサンをかけ、明らかにその筋の外見をしているが、微妙に女性趣味が混じった服装を好む。
口調はまんまオカマだが、本人は「オカマ」「デブ」などの言葉を掛けられると激怒する。
正体は“禅釜尚”
付喪神の一種で、古くなった茶釜が化けたものとされ、茶釜の頭部を有する姿で描かれる。
妖力は【頑面驚荼】
頭部を鋼鉄の茶釜に変化させるもので、これによる頭突きを得意とする(本人は普通に石頭だが、更に固くなる)。
ヤスと竜司の兄貴分だが「アニキ」と呼ばれるのを嫌う。
■ヤス(本名不明)
種族:妖怪(虎陰良)
性別:男性
年齢:不詳
暴力団「九十九会」の構成員。頬傷と咥えた長楊枝が特徴的な痩せ男で、背が高く、ひょろっとした外見に反して荒事に通じ、短気な性格の持ち主。記憶力が悪く、しょっちゅう禅丈を怒らせては頭突きを喰らっている。
正体は“虎陰良”
付喪神の一種で、三本爪の熊手を持った姿をしており、同じ付喪神である“禅釜尚”や“槍毛長”と一緒に描かれる事が多い。また、俊足の持ち主でもある。
妖力は【嵐痢捌破】
高速移動後に分身し、咥えた長楊枝を熊手に変化させて連撃を見舞う。一撃一撃は強力ではないが、回避が難しく、加重されていく攻撃は脅威そのもの。
更に禅丈との合体妖力として【弩壜駕壜】がある。
これは頭部を鋼鉄化した禅丈を熊手に引っ掛け、高速回転後に射出する荒技で、ふざけた名前とは裏腹に恐ろしい威力を誇る。
■狟下 宝太
種族:妖怪(袋下げ)
性別:男性
年齢:不詳(見た目は二十代半ば)
降神町に住む特別住民の青年で、工事現場などで生活費を稼いでいる。
正体は“袋下げ”
化け狸…妖狸の一種で、長野県北安曇郡大町(現・大町市)では化け狸が高い木に登り、通行人目がけて白い袋をぶら下げたという。
ただそれだけで、伝承では人に危害を加えたというものは伝わっておらず、また袋の中身が何であったのかも不明。
見た目はごく普通の青年で、やや目つきが悪いこと以外は普通。
性格はややひねくれており、物事を斜に構えてみることが多いが、根は割と純情。
ぶつくさ文句を言いながらも、悪事には絶対加担せず、弱い者を助けようとする気概も秘めている。
元は降神町役場の人間社会適合セミナーの卒業生だったが、適職に恵まれず、現在は日雇いの仕事で糊口をしのいでいる。
妖力は【妖狸白袋】
高所から白い袋を垂らし、相手を驚かせる(この時、確率で相手は恐慌状態になる)。
攻撃力は一切なく、ただ相手を驚かせるのみだが、垂らす袋は妖力で錬成されており、中には自動車程度の大きさものまで詰め込むことが可能。
また、垂らした際、相手は肉眼で狟下自身の所在を補足することが出来なくなる(頭上を見上げても暗闇しか見えない)。
子どもが苦手で、それは「目つきの悪い自分が笑うと怖がられるから」とのこと。
■高斐 智世美
種族:妖怪(高女)
性別:女性
年齢:17歳
降神高校に通う特別住民の女子生徒。
その正体は“高女”
その由来は不明で、諸説あるが、家の2階を覗きこむ女の妖怪で、嫉妬深い醜い女がこれに化け、男に相手にされないあまり、遊女屋などの2階を覗いて歩くものとされている。
外見は普通の女子高生で、短めの髪をヘアピンでまとめ、やや釣り目をした女の子。
高校生ながら身長は150センチに満たないため、それを気にしている。
隣家に住む浅間 正登とは幼馴染であり、家族ぐるみの付き合いをしている。
正登とは腐れ縁同士なので、しぶしぶ交流しているが、身長のことを弄られるので、基本的に苦手としている。
また、特別住民として目立つことを苦手としており、あまり人間と関わりを持ちたくない反面、面倒見はいい性格。
妖力は【摩天女峰】
身長を自在に伸ばすことが可能で、3メートルは優に超えることが出来る。
それに伴い、外見も大人びた姿になり、体型もスーパーモデルクラスに変化する。
前述の通り、妖怪として目立つことを苦手としているので、この姿は正登も知らない。
また蛇足だが、この姿になった彼女は、正登を一瞬で虜にする程、彼にとってタイプの女性であるらしい。
■大音 丈
種族:妖怪 (うわん)
性別:男性
年齢:不詳(見た目は三十代)
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“うわん”
“うわん”は古びた屋敷や寺に現れ、付近を人が通りがかるとその名の通り「うわん!」と大声を出して驚かせるはた迷惑な妖怪。
この時、その人が気を抜いていると命を奪い取ってしまうが、言われた側が同じように言い返すことが出来れば“うわん”は退散してしまうとの説もある。
外見はごく普通の会社員で、独身。
自らが持つ妖怪としての体質…「深夜、誰彼構わず吠えかかりたくなる」という欲求と戦っており、我慢できなくなると、深夜の町を徘徊する癖がある。
良識の持ち主で、人に迷惑を掛けたり、警察沙汰になりたくないという一心で堪えていたが、ひょんなことから自らの妖力で泥棒逮捕の一役を買い、味を占めてしまったのか、時折、大声を出したい一心で泥棒探しをするようになる。
妖力は【大脅音声】
その大声により、対象を高確率で恐慌・気絶状態に陥らせ、状況によっては即死すらさせられる妖力。
対象の不意を突いた状況下でしか発現しない特殊な性質を持っており、そうした状況を作るまでが肝となる。
本人の意思とは無関係に発動したくなる厄介な妖力らしく、悩みの種となっている模様。
■鮫島 与志樹
種族:妖怪 (七本鮫)
性別:男性
年齢:10歳
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“七本鮫”の一人で、鮫島兄妹の末弟。
“七本鮫”は、三重県志摩市磯部町上之郷にある「伊雑宮」に伝わる「竜宮の使い」ともいわれる七匹の鮫である。
毎年夏のある期間になると、彼らが伊雑宮参詣するために川を上ってくるとされ、この期間は海に船を出したり、漁をしたりしてはいけないとされている。
また、昔、ある漁師が子供とともにナマコ漁をしていた際、鮫に息子を食い殺されてしまった。
漁師は復讐のために七本鮫の一匹を捕まえ、腹を裂いてみたが中には何もなかった(犯人は別の鮫だった)。
その数日後、突如起きた嵐で多くの漁師が命を落とし、七本鮫を殺した漁師の家も、謝罪の供養をしたが没落したという。
このため七本鮫は今は六匹しかいないとされる。
降神小学校に通う小学生で、浅黒く日焼けしたわんぱく坊主。
クラスのボス的存在で、横暴だが仲間の面倒見はいい。
水棲の特別住民であるため、水中では人間を上回る動きを見せ、特に身軽さを活かしたアクロバティックな動きが得意。
実は「隠れゴータイショ―ファン」で、緑彦が兄の蒼馬共々ゴータイショ―に詳しいことを妬み、緑彦に意地悪をしていた。
■鮫島 明次郎
種族:妖怪 (七本鮫)
性別:男性
年齢:16歳
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“七本鮫”の一人で、鮫島兄妹の三男。
降神高校に通う一年生で、均整のとれた体格とそこそこ整った顔立ちをしている。
男気に溢れた、いまどき珍しい熱血系硬派で、特別住民としてプライドが高く、自分達兄妹が神の使いでもある“七本鮫”であることを誇りに思っている。
そのため、その名前を貶める相手には容赦しない。
水棲の特別住民であるため、水中では人間を上回る動きを見せ、特にパワーとスピードのバランスが取れた動きが得意。
実はモテるのだが、本人は恋愛より、男として自らを磨くことに余念がない。
■鮫島 仁兵衛
種族:妖怪 (七本鮫)
性別:男性
年齢:26歳
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“七本鮫”の一人で、鮫島兄妹の長男。
大手建設会社「楯壁土建」に勤める現場作業員で、鮫島家の家計を支える大黒柱。
二メートルを超す巨漢で、酒豪にして大食らい。
現場作業でも肉体鍛錬に余念が無く、怪力の持ち主。
明次郎以上の硬派だが、お嫁さんになってくれる女性を熱望しているので、目下、見目麗しい女性に興味深々。
水棲の特別住民であるため、水中では人間を上回る動きを見せ、特にパワーや耐久性に優れる。
豪快な性格だが、実は涙もろく、可愛い動物が好きな一面も。
■鮫島 葵
種族:妖怪 (七本鮫)
性別:女性
年齢:22歳
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“七本鮫”の一人で、鮫島兄妹の長女。
女子大に通う大学生で、様々なバイトを掛け持ちし、仁兵衛と共に鮫島家の家計を支えている。
サバサバした性格の女性で、スラリとした長身とモデル張りに長い手足が特徴。
色ボケ気味の兄や個性の強い妹、やんちゃな弟達を仕切る母親役でもあり、兄妹の中では一番の常識人で苦労人でもある。
水棲の特別住民であるため、水中では人間を上回る動きを見せ、特にリーチや身体の柔軟性に優れる。
酒好きで、飲み友なら常時募集中(後日談だが、アルベルタ、バルバラとは仲の良い飲み友になった)。
■鮫島 芳士
種族:妖怪 (七本鮫)
性別:男性
年齢:21歳
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“七本鮫”の一人で、鮫島兄妹の次男。
法学を専攻する大学生で、将来の夢は弁護士。
スマートな体型のイケメン男子だが、いかんせんチャラい。
何人かのガールフレンドがおり、暇を見ては遊び回っている。
しかし、芯から軽薄なわけではなく、幼女からおばあちゃんまで、女性なら平等に接するフェミニスト。
水棲の特別住民であるため、水中では人間を上回る動きを見せ、特にスピードに優れる。
仁兵衛や明次郎とは真逆で、努力しながら汗水流すことを「カッコ悪い」と公言しているが、実は隠れた努力家で、人目を忍んで勉学にも励んでおり、頭は兄妹の中でも一番いい。
■鮫島 神楽
種族:妖怪 (七本鮫)
性別:女性
年齢:17歳
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“七本鮫”の一人で、鮫島兄妹の次女。
降神高校に通う二年生で、十乃 美恋とは別クラスの同級生。
長い黒髪と姫カットが特徴的な、雅さ溢れる古風な少女。
口調も丁寧で、その凛々しい雰囲気が同性からも好かれている。
実は極度のブラコンで、密かに芳士が大好き。
その一途な想いを周囲にはひた隠しにしているが、兄妹内では公然の秘密となっている。
一方で、女遊びが激しい兄に、年がら年中ヤキモキしており、事あるごとに芳士を窘めるものの、目下効果は無い模様。
水棲の特別住民であるため、水中では人間を上回る動きを見せ、特に水を操る術に優れる。
兄妹の中では最も強い妖力の持ち主で、潜在能力は高い。
■鮫島 祢子
種族:妖怪 (七本鮫)
性別:女性
年齢:14歳
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“七本鮫”の一人で、鮫島兄妹の三女。
降神中学校に通う二年生で、漫画家志望。
サブカルチャーに傾倒するオタク婦女子で、家族にも内緒で同人活動に励んでいる。
つかみどころのない性格だが、小さい頃はオドオドした内向的な少女だった。
常に他人の顔色を伺っていたせいか、人間観察眼が驚異的に養われ、他人の所作や表情を一瞬で読み取り、相手の行動を予測する能力を得るに至った。
水棲の特別住民であるため、水中では人間を上回る動きを見せる…と思いきや、実は泳ぎは苦手で、前述の「観察眼」を武器に、兄妹を統制する頭脳となることが多い。
趣味を通じてネットで知り合った「HN.KENZOU」という男性とプラトニックな関係を構築中。
■抜守 就
種族:妖怪(暮露暮露団)
性別:男性
年齢:3カ月(見た目は二十代。布団としては99歳)
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“暮露暮露団”
ごく普通の家庭である歌多根家で長年使われていた布団が、年月を経て“付喪神”として妖怪化した。
飄々とした優男で、常に着物姿であるため、パッと見は江戸時代の遊び人みたいな風体。
性格はマメで人当りも良く、ご近所の人々からも好かれている。
歌多根家の一人娘、由愛が使っていた布団から妖怪化したので、彼女には特別な好意を持っている。
また、元が布団であるため、布団の虫干しが天才的に上手く、彼が干した布団は最高級の布団を凌駕する寝心地を誇る。
妖力は【命治浮綿】
自身の本体であるこの布団を媒介して、対象を睡眠状態にし、同時に対象の回復力を向上させることが出来る。
これは、睡眠が生物に回復を促すものであり、布団と睡眠は深い関係にあることから発現する治癒系妖力である。
ちなみに本体の布団は掛布団と敷布団で構成されており、どちらか片方分だけの妖力の行使が可能で、もう片方が健在なら一時的に消滅しても復活は可能。
■雪城 氷美華
種族:妖怪(雪女)
性別:女性
年齢:不明(見た目は二十代前半)
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“雪女”
北国に中心に数多の伝承を持つ非常に有名な女妖。
美しい女性の姿で吹雪の夜に現れ、出会った人間を凍死させたり、魂や精気を抜き取るとされる。
町の北部にある深山に住んでおり、人間との関りは持っていなかった。
そんな折に巡と出会い、人間社会適合セミナーへ勧誘されるも気候に適応できないことから一度は参加を断った。
が、その後、“雪ん子”の舞雪にも説得され、冬季限定の受講生としてセミナーに加わることになった。
鮮やかな明青色の長い髪に、やや青みがかった白磁の肌、蒼玉の瞳を持つ超絶美人。
おまけにプロポーションも抜群で豊かな胸の持ち主。
性格はおっとりマイペースで、無自覚・無防備に色気を垂れ流すため、初対面では巡を辟易させた。
妖力は現時点では不明。
弱点は熱や暑さで、夏場は避暑地でぐったりしている模様。
なお、作中おいて雪や氷の女妖の一族には美女・美少女が多く、とりわけ“雪女”一族には「正統派大和撫子」タイプが多い。
■寒沢 雫莉
種族:妖怪(つらら女)
性別:女性
年齢:不明(見た目は二十代半ば)
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“つらら女”
“雪女”同様、北国に伝承が残っている女妖。
人間と婚姻し、夫婦になるも風呂を強く勧められ湯船で溶けてしまう話がある。
また嫉妬深く、自分が去った後に後妻を娶った夫を氷柱に変化して刺し殺してしまった逸話が残っている。
“雪女”の氷美華と“雪ん子”の舞雪同様、町の北部にある深山に住んでおり、氷穴を改修した自宅兼オフィスを所有。
投資アドバイザーとして辣腕をふるっていた。
人間社会適合セミナーへ勧誘に来た巡を出迎えるも、防熱対策と抱えている仕事の都合でセミナーへの参加を断る。
が、その後、“雪ん子”の舞雪にも説得され、氷美華と共に冬季限定の受講生としてセミナーに加わることになった。
鋭利ともいえるほどのクールで大人びた眼鏡美女で、ビジネススーツに身を包み、公私共にカッチリキッカリしている。
冷徹で隙が無いように見えるが、気配りができ、心根は優しくてちょっぴりやきもち焼き。
妖力は現時点では不明。
弱点は熱や暑さで、夏場は氷穴に引き籠って快適に過ごしている。
なお、作中おいて雪や氷の女妖の一族には美女・美少女が多く、とりわけ“つらら女”一族には「クールビューティ」タイプが多い。
■凍神 舞雪
種族:妖怪(雪ん子)
性別:女性
年齢:不明(見た目は六歳くらい)
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“雪ん子”
“雪女”の子供とされており、雪が降る晩に“雪女”に連れられて遊んだり、人里に降りてきては人間の子供と遊んだりするという。
“雪女”の氷美華と“つらら女”の雫莉同様、町の北部にある深山に住んでおり、互いに親交がある。
町での暮らしや人の文化に強い関心を持っており、人間社会適合セミナーの勧誘に来た巡に都会の話をせがんだ。
セミナー参加にはとても意欲的だったが、防熱対策や雪の妖怪として成熟するには“雪女”たちから離れて暮らせないこともあり、結果としては参加を断念した。
が、都会暮らしを諦めきれず、氷美華と雫莉を説得し、最終的には冬季限定の受講生としてセミナーに加わることになった。
見た目は幼いが妖怪なので巡よりも年上で、ボーイッシュで大きな目の美少女。
藁帽子と東北弁の訛りが特徴的。
妖力は現時点では不明。
弱点は熱や暑さだが、雪の妖怪(というよりは妖精)としては未熟な分“雪女”や“つらら女”よりは熱に強い。
なお、作中おいて雪や氷の女妖の一族には美女・美少女が多く、とりわけ“雪ん子”一族には「元気いっぱい美少女」が多い。
また成長すると“雪女”や“つらら女”などに進化する。
■長久比 六佳
種族:妖怪(ろくろ首)
性別:女性
年齢:不明(見た目は二十代半ば)
降神町に住む特別住民の一人。
その正体は“ろくろ首”
日本の妖怪の中でも有名かつ代表的な女妖。
古典の怪談にも登場し、夜中になるとその首を長く伸ばし、行燈の油を舐めるたり、精気を吸うという逸話がある(一方でこれは妖怪ではなく一種の「奇病」とする説もある)。
元々は降神町役場が主催する人間社会適合セミナーの受講生で、卒業後はOLとして働いていた。
黒髪を結い上げたやや垂れ目の和風美人で、芸妓みたいな雰囲気を持っており、人受けがいい。
巡をはじめとして特別住民支援課の面々とは顔見知りで、気軽に相談もできるくらいに仲がいい。
妖力は【恐遊長頸】
首を伸ばすだけでなく、その過程で見た相手を恐慌・失神状態に陥れる。
また、対象に巻き付いて行動不能にできるだけでなく、捕縛した相手の精気を吸い取ることでドレイン効果も発揮できる。
作中では紆余曲折を経て、遊園地のお化け屋敷でバイトをすることになる。