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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

世界は 侭ならない事で溢れています

作者: にくきぅ

世界観は『孤独な魔王様』と同じです。

同じ大陸で あの魔国からは南東の方角に位置する 人間の国に生まれた 面倒臭がりの魔法使いの お話です。


では、どうぞ。


この世界には 多くの国が存在し、多くの人々が暮らしている。

ほとんどの者達は、城塞都市を形成する 国家都市に居住し、或る程度 安全な生活を送っている。

1っの城塞都市が、一国家だ。

国家間の交流はあるが、城塞都市を出ずに一生を終える者のほうが多い世の中だ。

理由は 単純、城塞の外は 危険だからだ。

この世界には 豊かな自然があり、其処には 樣々さまざまな生物がいる。

それと同時に、多くの魔物が存在している。

彼等も 自分達の(おも)えがく国家を構築して、一定の土地を支配し 暮らしている。

王道のRPGと違い、魔王とばれる存在は かなりの数がいる。

つまり、それだけ多くの魔物の国がある。

勿論、統率のとれていない土地では、森の猛獣のごとき頻度で 魔獣にも遭遇する。

云うまでもないが、一般の者達は、猛獣でさえ 遭遇すれば生命いのちの危機だ。

そんな世界だから、国家は 其々それぞれで高い壁を築き、多くの兵士・衛兵などが 外敵の侵入を阻んでいる。

しかし、他国との交流は 大切だ。

外交の面でも 交易の面でも、自国だけですべてをまかなえる国は ないと云っても良い。

故に、国家間には 街道が整備されている。

当たり前だが、其処にも危険はある。

国家間を結ぶ街道が 魔物の国に掛かっていたり、魔王の支配下にない はぐれ魔物が旅人や冒険者を襲うなど、日常茶飯事だ。

だからこそ、これ等に対抗すべく 勇者なる者達もいる。

勿論、勇者達をサポートする者達も 数多く存在する。

それは 冒険者ギルドと云う団体として確立しており、様々な支援のもと 成立している。

当然、勇者になれなかった・ならなかった者達もいる訳で、彼等は 総じて冒険者とばれている。

何しろ、城塞都市を出た人間を餌として襲う魔物もいれば、おのれの領土を拡大させようと画策している魔王もいる世界だ。

したがって、それをたおすポジションの冒険者達の需要は高く、相当の数が存在するのだ。




   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽




___視点:スピネル___


彼は、憂鬱ゆううつな気分で ち尽くしていた。

此処は、広大な草原の一郭だ。

様々な草が 腰の丈まで伸び、所々に 樹木が林立している。

風通しの良い、気持ちの良い草原だった。

「 ………全く」

小さな溜息が 言葉を紡いだ。

晴れ渡ったそらもと、彼は 足許あしもとを見詰めていた。

其処は、草のない場所だった。

周りを見れば、そんな箇所は一直線に伸びている。

南北へ伸びる 草のない線・・・・・は、国家間を結ぶ街道の1っだ。

言うまでもなく、城塞都市の外である。

彼は、其処にいた。

12〜13歳くらいだろうか、細いからだ付きの少年だ。

身軽な服装をし、ずだ袋を1っ 斜めに背負っている。

家の近所の林へ 木の実を拾いにでも出たかの様な、有り得ない軽装だ。

異様なのは、それだけではない。

真っ直ぐ伸びる髪は 美しい白金色をしており、瞳は 深みのある紅だ。

顔貌かおかたちは 恐ろしく整っていて、切れ長のは 大人びた光りを宿している。

中性的な顔立ちで、やわらかく笑むと 少女にしか見えない。

もう数年したら 傾国の美少年に育つだろう、と 誰もが断言する美貌だ。

しかし、今は どう見積もっても10代前半の、線の細い、闘えそうもない少年だった。

「弱い、弱すぎる」

声変わりをしていない少年の 小さな独白を聴く者はない。

しかし、彼は独りではなかった。

「これで、本当に冒険者の一行?」

彼の視線の先は、常に足許あしもとへ向いていた。

そして、其処には 人がいた。

甲冑を纏い 大剣をいた者・ローブを纏い 杖を携える者・衣服の上に簡易的な鎧を着け 片手剣を持つ者・身軽な衣服に 短剣をびる者。

格好は様々な者達が、彼の足許あしもとにいた。

そして、一様に眠っていた。

いや、彼等のからだ、または 装備が ぼろぼろになっている。

そんなところからも判る様に、昼日中ひる ひなかとは云え 危険地帯である城塞国家の外で 大胆にも寝こけているのではない。

もし そうだったら、余りにも無防備だ。

冒険者として 失格である。

しかし、少年にとっては 彼等の現状も『冒険者-失格』だ。


《 少しは 楽に旅が出来ると(おも)ったのに。》


少年の溜息は、草原を吹きわたる風にさらわれていった



   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎



このパーティは、先程 偶然にも合流した冒険者の一行だった。

彼等は、独りで旅をしている少年-スピネルに声を掛け、次の国まで護衛をしてくれると言うので 附いて来た。

そこそこ強いパーティではあったが、冒険者ランクで云えば、大して高いほうではない。

個々の力量は 兎も角、チームワークの点では 余りよろしくなかった。

個々人が 勝手に突き進み、其々で 魔物を撃破する。

そんな闘い方が通用するのは、格下の魔物だけだ。

事実、数匹の強者には かなうべくもなかった。

襲ってきたのは、鳥系の魔物だった。

形状は 鷲に近い。

もっとも、その頭は 2ッあり、脚は 4本あった。

鋼鉄で出来ているのか と疑いたくなる強度の翼は、右端から左端までで 5メートルはある。

爪も 嘴も鋭く、凶悪な切れ味を発揮する。

そんな魔物が、2羽で襲って来た。

彼等は、スピネルをかばいながら 奮闘した。

勿論、いつもの様に個人プレーだ。

戦士と 僧侶が、魔法剣士と 盗賊が、其々それぞれ タッグを組んで討伐にあたった。

しかし、協力し合う事がたくみではない彼等の共闘は、そう長く通用するモノではない。

結論から云うと、魔法も剣も大して効かず、あっと云う間に劣勢になった。

ものの数分で 殺されそうになる。

仕方なく、スピネルが倒したのだ。

魔法で雷を放ち、その一撃で 同時に2羽を灰にした。

序でに、余波で発生した小さな雷を当てて、彼等を気絶させたのだった。



  これに倒される魔王って、いるのか?



いたとしたら、余程 具合が悪かったのだろう、などと 失礼な事を考えながら、細く溜息をいた。

補足しておくが、伸びている彼等は 決して弱くはない。

魔法使いとして スピネルが規格外なのだ。

「 …………どうしよう、メンドイ」

足許あしもとからそらへと 顔を振り上げて、スピネルは呟いた。

ててこうかなぁ」

男女混合の冒険者達を このままにして、独り 先を急ぐべきか否かを、真剣に考えていた。




   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽




___視点:戦士-ボイド・魔法剣士-アマーティ・盗賊-イリーシャ・僧侶-ジェード___


晴れ渡ったそらが 夕闇に染まり始めた頃。

何処までも続く草原の中では、焚き火が 赤々と燃えていた。

彼等のいる辺り半径-2メートル程は、土が剥き出された場所になっている。

その中央に 薪が組まれ、燃え盛る炎が この一郭を照らしている。

炎に合わせて、影も揺らめいている。

焚き火から 少し離れた処に、白銀の髪の子供が丸くなって眠っている。

大人達は、彼と 焚き火を挟んで、反対側に集まっていた。

1人は、甲冑を纏い 大剣をいた者。

1人は、衣服の上に簡易的な鎧を着け 片手剣を持つ者。

1人は、身軽な衣服に 短剣をびる者。

1人は、ローブを纏い 杖を携える者。

其々それぞれ 異なった職業ジョブの 4人の装備は、かなり傷んでいる。

そう、彼等は、3時間前に この近くの街道で気絶していた者達である。

焚き火を囲んでの 食事の片付けが終わっても、全員の表情は暗い。

痺れを残しているのか、夜になっても 全員の体調は優れないらしい。

重苦しい雰囲気の中、ゴリマッチョな戦士-ボイドが 重い口をひらいた。

「何だったんだ?」

主語のない疑問だったが、全員の頭の中にあった事だったのだろう。

独白の様な一言に、女魔法剣士-アマーティが 曖昧な声を零した。

野営の準備をしていた僧侶-ジェードと 女盗賊-イリーシャは、作業の手を止めている。

彼らは、怪鳥の餌食えじきになりかけていた。

あの鋭い爪で切り裂かれ 血肉をむさぼられた挙句、残りは 非常食用に 巣へ持ち帰られていたかもしれない。

どうあがいても、あの状況からの生還はなかった。

それが、気付いたら 生きていたのだ。

怪鳥の姿はなく、離れた処に スピネルが倒れていただけだった。

揺り起こして訊いてみたが、少年は 何も判らないと答えた。



  こわくて、丈の高い草の間に隠れ 身を縮めていたら、突然 周囲が白くなった。

  次に気付いたのは、アマーティに揺り起こされた時だった。



スピネル少年は、そうとだけ答えて 申し訳なさそうに俯いた。

勿論、嘘である。

厚顔無恥にも 庇護すべき子供をよそおい、しれっと言ってのけたのだ。

随分 小慣れた対応である。

もっとも、足許あしもとへ向けた幼い顔は、苦笑いで染まっていたが。

少年より背の高い彼等は 深く俯いたスピネルの表情など見えず、気付きもしなかった。

泣きそうな声で『ごめんなさい』と小さく繰り返す スピネルの演技を見破れず、あかさまに動揺していた。

『いいんだ、何でもないんだ、気にするな』と 口早になだめ、この話題は これで終わりとなった。

そんな訳で、彼等は スピネルが寝入ったのを確認して、再び 検証に入ったのだ。

「『白くなった』って言ってましたね」

スピネルに聴いたはなしを思い出しながらの イリーシャの言葉に、誰もが 沈黙する。

この数時間、其々それぞれで 様々な可能性を考えていた。

怪鳥との戦闘中、何等かの事象が起きたのは 確かだろう。

人為的なのか、自然現象なのかは 兎も角としてだ。

それが あの怪鳥達を消し去ったのなら、自然現象よりも じゅつであった可能性が高い。

すぐそばにいた自分達が生きている事を考慮すれば、そう判断するのが妥当と(おも)われる。

しかし、此処に疑問が 1っ。



  『一体、何者が 何の目的で?』



これが判らない、皆目 見当も付かない。

通りすがりの魔法使いでもいて 気紛れでたすけたのだとしても、だ。

気が付いた時には 自分達のそばにいる者はなく、持ち物も ぬすまれていない。

「 …………相当なんだろうなあ」

ぼそり と、 僧侶-ジェードが呟いた。

魔法でたおしたとなると、それを放った倆者じゅつしゃは かなりの熟練度レベルと推察出来る。

実際、魔法剣士であるアマーティの魔法は 効いている様子もなかった。

く云う ジェードの風魔法も、怪鳥達には 効いていなかった。



  __ 自分達は 決して弱くない __



主観的にみても 客観的にみても、これは間違いではない。

ただ、襲ってきた怪鳥は 彼等のレベルではかなわない魔物だっただけである。

しかし、今回の敗戦は 自尊心を折るに足る重大事だった。

おごっていた訳ではなかったが、横槍が入らなければ死んでいたと云う事実は 重い。

自然と、全員の口数は減る。

彼等は、其々それぞれで思案を巡らせる。

そして、或る可能性を見出して 1人の人物へ視線を向けた。

其処にいるのは、小さな ずだ袋を枕にして眠っている 細身の少年だ。

背は低くないが ひょろりと細いからだ

大人の移動速度に 度々 置いてかれそうになりながら、それでも 懸命にいて来る。

頑張りは凄いが、その歳の子供なりの体力しかないと云える、頼りない子供。

事前も事後も、そばにいたのは彼だけ と云う事実。

「違うよ」

アマーティが、ボイドと イリーシャが考える可能性を否定した。

これに、ジェードが賛同する。

「スピネルには 魔力がないしな」

今 改めて、内包する魔力がないか 検分していたのだろう。

ジェードは、しっかりと断定した。

「なら『本人も判らずに 何等かの魔法を使った』と云う可能性は ないんですね」

イリーシャは、考えていた 一縷の可能性を呟いた。

スピネルが あの怪鳥達をたおせるとも(おも)えないのだが、近くにいた人物と云えば 他にない。

どうしても、その可能性を模索してしまう。

此処にいない『第三者』となると、どれ程 考えても判り様もない。

「 ーーーーーー兎も角、次に あれにったら………… 」

間違いなく 全滅する。

この言葉じじつを口にする者はなかった。




   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽




___視点:スピネル___


晴れ渡ったそらに、美しく星がまたたいている頃。

草原の中の焚き火を囲んで 3人が眠り、もう1人は、焚き火のそばで 火の番をしていた。

スピネルは、ずだ袋を枕に、横になったまま 周囲へ視線をはしらせた。

離れた処にいる3人は 熟睡しているらしく、動きもしない。

火の番をしている者は、こちらに背を向け 焚き火の前で胡坐あぐらを掻いている。

左手には 武器を持っているが、そのからだが ゆったりと揺れている。


《 消耗したんだろうけど、さ。》


夕刻の激闘がこたえたのだろう。

うつら うつらと舟を漕ぐ 大きな背を見つつ、ひそやかに溜息をいた。

スピネルは、最初から眠ってなどいなかった。

彼等からの 面倒な追及を避ける為、眠ったフリをしていたにぎない。

質問攻めにされても ボロを出す事などなかっただろうが、面倒に変わりはない。

故に、寝たフリが最適だと判断したのだ。

勿論、起きていたのだから 彼等の会話は聴こえていた。

何度 苦笑いを噛み殺したかしれない。

最も笑いそうになったのが『スピネルには 魔力がない』発言の時だった。


《 世界の仕組みも知らないのか。》


笑いは 笑いでも『あざけり』に属する冷笑だ。

そもそも、彼等は スピネルの魔力を感知する事など出来ないのだから。


《 本当に、知れ渡ってないんだな。》


力量差のある上位者とは出会った事がないのだろう、と スピネルは(おも)った。

しかし、出会っていたとしても その上位者が申告しなければ判らないだろう、とも(おも)った。

今のスピネルの様に 自分が格上の存在である事をかくしていたのだろう、と。


《 メンドイしね。》


黙っていればバレないと判っているのに、何がたのしくて自己申告をしなければならないのか。

そんな考えで、スピネルは 自身が魔法使いである事を黙っていた。



  __ 格下に存在を悟られる事がない __



これが、格の差がもたらす特典だ。

強い者は、自分よりも弱い者の存在を感知出来る。

だが、逆はない。

魔力の低い者は、自分よりも格段に強い魔力を感知する事が出来ない。

これは、世界の仕組みの 1っだ。

考えてもみてほしい。

魔力が弱い者達 = 一般人は、この世界の大半を占める。

そんな者達が、自分よりも強い魔力を 常に感じ取っていたら、到底 日常生活は送れない。

その対象が、城塞国家の中にいる冒険者達であれ、外にいる魔物であれ、同じ事だ。

蝋燭ろうそく-程度の火を熾す事が限界と云われる 7割もの一般人が、騎士や冒険者達と自分達とに どれ程のちからの差があるか理解出来る状態ならば、おそらく 恐怖しか感じない。

魔法とは 便利な反面、恐怖の対象にも成りちからだからだ。

とてもではないが 真面まともな生活は出来なくなり、国家は そのていを成せなくなる。

それがないのは『弱者は 強者に気付けない』と云う世界の仕組みにる。

一般人達に魔力を感知する能力がないのではなく、誰しもが 格の差がある強者・・・・・・・・ちからを感知出来ない。

勿論、人間であれ 魔物であれ、原理は同じだ。

故に、世界の仕組み・・・・・・と云えるのだ。


《 まぁ、誰も教えないよな。》


メンドイし……と、スピネルは 口をつぐむ事にした。

語弊のある表現ではあるが、この仕組み・・・を『特典』だと(おも)っている者は、おそらく すくなくないのだろう。

冒険者をしている彼等なら 自分よりも格上の魔法使いや賢者などと出会っているだろうが、このことわりを知らない様子からも そうと判る。

察知出来ないからこそ、昼間の怪鳥をたおしたのがスピネルだとは気付かない。

勿論、スピネルが 魔力の隠匿にかかわる魔法を使用しなくとも、だ。

それでも、彼等は スピネルの魔力に気付けないのだ。


《 それにしても、暢気のんきだな。》


そう、気付けないのだ。

だから、知らないのだ。スピネルが この一帯を障壁でおおっている事を。

実際に、彼等が気絶した時から今現在まで 周囲には障壁を張っている。

気絶し 無防備な彼等に代わって、周囲に結界を張っていたのだ。

その結界が 直径-40メートルもの範囲を包んでいる為、彼等は 誰一人 気付きはしなかった。

それなのに、こうして 無防備に眠っているのだ。

「大物だなぁ」

決して褒めていない口調で、呟いた。


《 これじゃ、リンデンベルクまで辿り着けないだろうな。》


彼等の目的地である リンデンベルク王国は、この世界に幾つもある城塞国家の中でも 規模の大きな国だ。

魔法文化も そこそこ進歩しており、農耕も 放牧も盛んで、地域工芸も 商業も 工業も、程良く発展している。

国は豊かで 国政や治安は安定しており、周辺に 危険生物の生息地などもない。

その事もあり、移住を希望する冒険者や 旅人・商人もいる。

しかし、其処に至る道程みちのりは 楽なモノではない。

リンデンベルクの周辺には、雑魚魔物しかいない。

これは、害となる魔物を、リンデンベルクの兵士達が 徹底的に駆逐しているからに他ならない。

って、リンデンベルク兵団の脅威が届かぬエリアには追いやられた魔物達・・・・・・・・・が生息している地帯がある。

此処は、そのエリアに含まれるのだ。

つまり、これから先の道程みちのりでも 魔物の襲撃にうと云う事だ。


《 どうしよう、メンドイ。》


リンデンベルクに着くまで お守りをするのは良いとしても、そうとバレない・・・・・・・様にするのが 面倒だった。

しかし、此処で放り出せば、彼等は誰一人として リンデンベルクには辿り着けないだろう。

楽をする道をえらべば、それは 見殺しにする事と同義である。

此処で 彼等から離れるのは、余りにも後味が悪い。

そうなると、単独で 先に進むと云う『最も楽な旅路』の選択肢はなくなる。

だが、何かに襲われる度に 気付かれない様に補助するのは 考えるだけで億劫おっくうだ。

かと云って、自分の実力を知らしめるのは、後々の事を考えると 面倒の極みだった。

何者であるか、など 教える気にもならない。

スピネルは、大きな溜息を零した。


《 それも これも、兄さんの我儘のせいだ。》


スピネルが こうして旅をしているのは、彼の兄に関わりがある。

或る事を頼まれ『何で 俺が…… 』と零しながら 隣国へ向かい、使いを済ませるべく 自国へ戻る途中なのだ。

そんな中で、頼りなさそうな4人組に出会ってしまったのである。


《 もっと広い街道をえらべば、こんなに襲われる事もないのに。》


最短ルートの この街道は、最も魔物の多いみちだ。

商人や 旅人は、定期的に騎士団が警邏する 別の街道を通るのだ。

荷馬車が 余裕で擦れ違える広い街道をえらべば、こんな危険な目にう確率も 格段に減る。

しかし、自身の実力をみ違えた彼等は そうしなかった。

確かに 弱くはないのだろう。

だが、決して つよくはない。

この街道を生き抜く事が出来るのは、もっと熟練度レベルの高い者達だけである。

そう云った者は、そう 多くはない。

これを考慮して、スピネルは、誰にも会わないだろう と このみちえらんだ訳だ。

まさか、強者つわものでもないのに お節介な一行に出会ってしまうとは 考えもしなかった。

本音としては、いい迷惑だ くらいにしか(おも)っていない。

「 ーーーーーーはぁ……… 」

だからと云って、見殺しに出来ないスピネルなのだ。

結局、此処からの数日を 苦労と溜息にまみれて過ごす事となった。





   ▼   ▼   ▼   ▼   ▼





___視点:スピネル___


ふと、スピネルは ました。

夜露をしのぐ為に 木陰で野営をしていた為、辺りは まだ暗い。

視線を上げれば、梢の隙間からそらが見える。

木々の葉の隙間からうかがえるそらは、朝陽が昇る前の時間だと判る色合いだ。

1時間もしない内に、木陰にも陽が射す様になるだろう。

スピネルは、枕にしていた ずだ袋から頭を離した。

上体を起き上がらせると、静かに伸びをする。

森の動物達を近付けない為に 夜通し燃やしていた焚き火は、消えそうになっている。

火の番をしながら 奇襲を警戒すべき見張りは、焚き火のそばに座った姿勢で項垂れ 動かない。

どうやら 熟睡している様だ。


《 全く………。》


そんな事だろうと(おも)っていたが、予測が当たったら当たったで、溜息が出る。

この旅の同道者-4人と 行動を共にする様になって、5日目の朝だ。

見張りをしている筈の人物が 完全に爆睡している光景をにするのも、もう 4回目である。

見慣れてきて 最早もはや 驚かなくなっている自分と、間違いなく寝入っている 度胸ある同道者達には、あきれるばかりだ。

スピネルは、複雑な(おも)いで 溜息をこぼした。

勿論、この状況を察していただけに 対抗策は施してある。

野宿をしていた この周囲には、何人たりとも近付けぬ様に、障壁も 防護壁も広範囲に展開している。

万一、同行している者達の誰かが 先に起き出したとしても、そうそう気付かれない程 大きく張ってある。

無防備に眠っていても、魔物も 森の獣も ただの盗賊も、スピネルのそばには近付けないのだ。


《 知らないで 良く眠れるよ。》


頭の中での呟きには『こいつ等、今まで どうやって生き延びてきたんだ?』と云う疑問も含まれる。

しかし、スピネルの能力の高さを悟られる訳にはいかないとなると、彼等の これまでの冒険生活を詳しく訊く事も出来ないのだが。


《 兎に角、後 数時間の辛抱だ。》


目的地であるリンデンベルク王国の城壁は、すぐ其処に見えているのだ。

後は、城門を通る為の審査が始まる時間まで 普通の子供をよそおえば良い。

そう(おも)い改めて、スピネルは、再び ずだ袋に頭を預けた。




   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽




___視点:スピネル___


リンデンベルク王国は、かなりの広さがある。

堅牢な高い壁と 四方の門をもって 外界から切り取った国土は、端から端までが 相当の距離だ。

故に、円形の城塞国家でありながら、国土の中には 幾つもの森林や湖沼があり、多くの街や むらがある。

東西の門、または 南北の門までは、馬を飛ばしても 丸一日はかかる広さだった。

人口も多く、農業・工業・商業は云うに及ばず、周辺国との交易もさかんで、多様な文化が混在する。

税金も関税も安く、したがって、物価も安く販売されている。

国外からの来訪者に寛大で、近隣の国家には珍しく 移住者も国家として受け入れている。

それもあってか、冒険者も商人団も 多く訪れる。

リンデンベルク王国の入国審査は、独特だ。

1度でも入国した事がある、または 国民である者は すべて登録されている。

国内での犯罪歴などの問題がなければ、出入国の審査は ないも同然だ。

出入国管理用の魔法具に手をかざすだけで、審査・登録が完了し、出国も入国も スムーズにおこなえるシステムだ。

冒険者や商人団に於いては、各国の冒険者ギルドや 商業ギルドが発行する登録カードを、出入国管理官へ提示する。

これまた 各国での犯罪履歴などがなければ、実に簡単な審査で済む。

特に 入国の際に半日も待たされる国家が多い中、このシステムは 好評だった。

そのお陰か、少々 遠廻りをしてでも この国で休憩を、と云う冒険者は多い。

スピネルと行動を共にしている4人も、そうだったらしい。

『らしい』と云うのは、はっきりと理由を訊かなかったからだ。

城門がひらくと同時に、スピネルは 4人に礼を言い、入国審査室を目指した。

審査の際、そばにいられたくなかったからである。

とっとと別行動になり、独り 先に審査室へ入る。

早い時間だけあって、まだ 他の冒険者などはいなかった。

「ああ、これは……… 」

入国審査官達は、紅玉色の瞳の少年を見るなり 姿勢を正した。

敬礼をする 一歩手前の姿勢だ。

すくなくとも、ずだ袋-1っで魑魅魍魎ちみ もうりょう跋扈ばっこする国外エリアにいた少年に向ける態度ではない。

彼等-入国審査官達は 一糸乱れぬ動作で、丁寧な お辞儀をした。

「お帰りなさいませ、どうぞ」

魔法具にる審査すらせずに、入口にっていた兵士は 門の脇にある小さな扉を示した。

これは、冒険者や商人団には使わせない 国内への最短ルートだ。

立ち番をしていた別の兵士も、スピネルに敬礼をすると その扉を押しひらいた。

「どうぞ、お通りください」

慇懃な態度に 口許くちもとを歪めたが、スピネルは 小さく頷いて扉へ歩き出した。



   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎



城門をくぐったスピネルは、城門の街に多くある辻馬車を拾って 或る街へ来ていた。

入国して すぐにむかったのは、首都から 2時間の処にある街だ。

大きな湖と そのほとりからり出す様に建っている古い城が特徴の、大きくはない街だ。

主だった産業は、農業と牧畜。

そして、手作りの革製品である。

街の中心地には 各種-商店がならび、一本 脇の路地へ入れば 各種-加工場や工房がならぶ。

だが、全体的には 牧歌的でのんびりとした街だった。

その外れには、スピネルが家としている 古い城があるのだ。

その城は、湖の中に建っていた。

り出した桟橋を想わせる 頑丈な石橋の先には、湖に浮かぶ古城が建っている。

石で組まれた大きな門には 大きな鉄の扉が設置されているが、今は 大きくひらかれている。

街の者達に言わせれば、じているところを見た事がない扉だ。

其処を 辻馬車が通ると、門の横にいた衛兵達が 軽く敬礼をする。

石造りの屋根がある玄関前のスペースに辻馬車が停まると、玄関の扉の前にいた衛兵の1人が 階段を降りて来て 辻馬車のドアを開ける。

「お帰りなさいませ」

浅いが 丁寧なお辞儀をする衛兵を ちらりと見て、スピネルは かすかに眉を寄せた。

そして、何も言わずに 辻馬車から降りる。

たすかった、ありがとう」

気取らない言葉で礼を言い、辻馬車の御者に 数枚の銀貨を差し出す。

とんでもない、公爵様から かねを戴くなど……… 」

おそれ多い と言って、御者は遠慮したが スピネルは譲らない。

「これは、貴方の仕事に対する 正当な報酬だ。何の遠慮もなく 受け取るべきモノだ」

御者は、引っ込める様子のない細い手と その持ち主、そして その後方にいる衛兵を かわがわるに見る。

困惑している辻馬車の御者に、衛兵は 笑顔で頷いた。

これをにして、御者は 迷いながら、おずおずと銀貨を受け取った。

「そ、それでは、はい………有りがたく」

「ああ、ありがとう」

小さく礼を言うと、スピネルは きびすかえした。

玄関へ至る 石の階段をのぼる。

8っある階段を、ゆっくりとのぼる。

門に控えている衛兵達-6人・玄関の前にいる衛兵と 今-後ろに控えている衛兵の2人、計-8人の様子を 垣間見かいまみる。

誰の表情にも 動揺はない。


《 また、か。》


そう(おも)いながら、スピネルは ひそやかに溜息をいた。

スピネルは、今日-この時間に帰ると連絡はしていない。

そもそも、旅のそらの下にあった彼に そんな事は出来ない。

いや、やろうと(おも)えば出来るのだが すくなくとも非常時でなければ する気もない。

なのに、急な帰還にもかかわらず 出迎えた者達に驚きの様子がないのだ。


《 またかぁ。》


8段しかない階段をのぼり終えると、玄関の大扉の横に控えていた衛兵が 扉を開けて、軽く礼をった。

これへも、スピネルは 眉を寄せた。

表情には出さないようにしているが、どうも この行為が苦手らしい。

12〜13歳の少年は、微妙な心境をかくしたまま 玄関の扉をくぐった。



  「「「「お帰りなさいませ」」」」



自宅の玄関を入るなり、メイド達が スピネルを出迎えた。

玄関ホールの正面-奥に、背の高い 壮年の執事がいる。

細身ながら 均整のとれた格躰がたいには、執事服が 良く似合う。

今年で 62歳になる筈だが、年齢を(おも)わせない 背筋の伸びた執事だった。

絨毯敷きの左右に メイド達がならび、その間を 壮年の執事がやって来る。

彼は、玄関ホールに一歩踏み込んだまままっているスピネルの前へ、無言で進み出た。

「お帰りなさいませ」

ぴしり と、礼をる姿も さまになっている。

彼の肩越しには、何人ものメイド達が左右にならび、未だに最敬礼のお辞儀をした状態で スピネルに敬意を示しているのが見える。

この様子に、12〜13歳の少年の顔が 引きった。

スピネルは 此処の主人あるじで、周りにいるのは 彼が雇っている者達だ。

この態度は、仕方がないのだろう。

たとえ、雇っている主人あるじが 12〜13歳の容姿を持つ ひ弱そうな子供であっても、礼を尽くすのが使用人のつとめだと言われれば それまでだ。

それに、こうした出迎えは 幼い頃から見慣れた光景でもある。

出迎える側としても、業務としてやっている事だろう。

それは、スピネルも判っている。

しかし、スピネルは それ・・を要求していない。

だからこそ、これを見るたびに 彼の顔は引きり、生真面目な対応を受けるたび気鬱きうつになってしまう。

「いちいち、出迎えなくていい」

スピネルの 命令とも付かない言葉に、執事が顔を上げた。

「それは、ご命令で?」

「仕事の手を停めてまで、態々わざわざ 出迎える必要はない、って言っているんだ」

「左様でございますか。では、次からは その様に」

しれっと そう言いながら、うやうやしく頭を下げる執事を ちらりと見て、スピネルは歩き出した。

石畳の床の上には絨毯が敷かれ、玄関と云うよりは 豪華なホテルのエントランスの様になっている。

そんな玄関から数メートル進み、正面にある階段をのぼる。

「お食事は 如何いかが致しましょう」

階段の下までいて来た執事の問いに、階段をのぼりながら答える。

「軽いモノでいい、先に 風呂に入る」


  「畏まりました」


余り感情のみえない『教本通りの執事』の返事だった。

実際、経験豊富で有能な執事である事は確かで、その仕事ぶりには 文句の付けようもない。

この古城で起きる すべての事は、ほぼ 任せておいて問題がない程だ。

だからこそ、 頻繁に国外へ出るスピネルが 公爵の地位にき 古城の主人あるじとなっても やっていけるのだ。

今から 20分後には、シャワーを浴び 汗と埃を洗い流して、着替えまで終わっているだろう。

おそらく、その頃には、多くもすくなくもない量の軽食が 部屋へ届けられるだろう。


《 堅苦しいのが、難点だな。》


階段をのぼりながら、そんな事を(おも)う。

直接 苦情を伝えても あの男にはひびかない事を知っているが、そろそろ本気で どうにかしてほしいと(おも)っていた。

細く溜息をきながら、スピネルは 自室へとあしを進めていた。




   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽




___視点:スピネル___


帰国から 6時間後、氷雪を(おも)わせる白金の髪プラチナブロンドの少年は、その幼さの残る顔を険しくさせていた。

彼がいるのは、美しい庭園の一郭だ。

周囲は、見渡す限りに拡がる 見事な薔薇の花園だった。

外界とは隔絶された様な、異世界の様な場所だ。

そんな 趣向をらした この花園を、険悪な表情のスピネルが歩いている。

好きな人には『かんばしい』と評されるかおりも、今のスピネルには 苛立イラだちをさせる要素でしかない。

頭の中で 同じ単語を繰りかえしながら、薔薇のアーチの奥へと進む。

長いアーチを抜けると、幾らかひらけた場所に出て その先に四阿あずまやが建っていた。

白い石造りの四阿あずまやには、先客がいた。


  「遅かったな』


爽やかな笑顔で声を掛けてきたのは、見眼 みめうるわしい青年だった。

白銀の髪は 緩くウェーブをえがき、薔薇園をわたる微風に 柔らかく揺れている。

紅玉色の切長きれながをし 鼻筋の通った、恐ろしくうつくしい青年だ。

整った顔も 均整のとれたからだ付きも、洗礼された仕草も 色気-漂う笑みも、何もかもが 常識を逸脱している存在だ。

そして、間違いなく スピネルと血の繋がりのある容姿であった。


  「食後の お茶が冷めてしまうところだったぞ」


兄-ユーリウスの言葉に、スピネルは あかさまに険悪な表情をかべている。

公爵の居城で 執事達が待ち構えていた様に、この国へ戻った時点で 王城へもしらせが届いたのだろう。

スピネルの兄は、弟の来訪時間を見越して お茶の時間にしていた様だ。

「帰る」


  「来たばかりじゃないか」


言い捨てる様にきびすかえしたスピネルを とがめもせずに、青年は 浅く笑った。

弟の態度を『拗ねている』とでも(おも)い、果てには『可愛い』とでも(おも)っている様な反応だ。

いかりの一部も伝わっていないばかりか、妙な解釈をされている と察したのか。

スピネルの左眉が ヒクヒクと痙攣けいれんする。

「 ーーーーーー……… 」

何か言ってやろうとしたのだが、何を言っても この青年ユーリウスこたえないだろう とも(おも)う。

判っていておこなう程 つかれる事もない。

スピネルは、歯を食い縛って こらえる事にした。

割と いつもの事であるが、だからと云って 悔しさは薄れない。

そんな彼の心情を知ってか知らずか、爽やかな笑みで ユーリウスは少年を招いた。


  「さあ、っていないで こちらへおいで」


美形である事も そうだが、ユーリウスは、そもそもの雰囲気が豪華と云おうか 華やかと云おうか。

派手な格好をしても 豪奢に着飾っても、浮く事なく 着熟きこなしてしまう。

そんなユーリウスには、薔薇と云う花が 良く似合う。

それ故か、スピネルは この花が嫌いだった。


《 何で こんな奴と血が繋がっているんだ⁈ 》


何処にも打付ぶつけようのないいかりに肩を震わせながら、仕方なく 四阿あずまやへ向き直る。

立ち去るのは簡単だが良策ではない だとか、落ち着け 今に始まった事じゃない だとか、頭の中で繰り返す。

もっとも、自分自身でなだめようとしても 納得のゆく心境ではなかったらしい。

スピネルは、最大級に不機嫌な顔をしている。

そんな少年に対し、ユーリウスは 満面の笑顔だ。


  「判るかい?」


スピネルは 遠慮なく険悪な雰囲気を撒き散らしているのだが、ユーリウスは 全く気にしていなかった。

空気がめていない訳ではないところが、タチが悪い。

20代半ばの青年は、四阿あずまやのベンチに腰を掛けたまま スピネルに紅茶を勧めた。


  「この間、お前が買って来てくれた紅茶だよ」


態々わざわざ ミルヴァーデン王国までって、ね」

スピネルは、嫌味を 棘々トゲトゲしい声で言い放つ。

いかりが滲み出た弟の言葉に、ユーリウスは 満面の笑みを向けた。


  「仕方あるまい? 僕は、この国を離れる訳にはいかないのだから」


そんな不自由な自分あにの代行として、自分あにの願いを叶えるのは 弟として当然の事……と示唆している口調である。

ユーリウスの立場から考えれば、別の者に頼んでも叶う事だが、何故か 彼は そうしない。

「だからって、弟をき使っていい訳じゃない」

憮然として返すも、この青年には 一向にひびかない。


  「兎に角、座りたまえよ」


どう文句を言おうとも、傍若無人・唯我独尊・馬耳東風なユーリウスには届かない。

スピネルは あきれの様な溜息をくと、のろのろとした足取りで 四阿あずまやあしを踏み入れた。

「スピネルは 平気だろう? 城塞の外を 独りで旅しても」

「 …………まぁね」

「僕のお陰で 自由に生きられるんだから、このくらいは 僕の為にしてくれるよね?」

夜会では 並み居る女達の視線とハートを独占する魅力的な微笑も、この弟には 効果がなかった。

生まれて10数年、年百年中 近くにあったモノだけに なんの感慨も湧かないのだ。

内心は これに見惚れる女達の気が知れない、とか考えているくらいだ。

「で、買って来てくれた?」

耀かがやかせての問いに、スピネルは あかさまな溜息と共に 手にしていた ずだ袋を突き出した。

それは、無造作に右手に提げられていた ずだ袋だ。

この場にも 相手にも相応しくない、使い古された 少年の旅道具だ。

しかし、突き出された ずだ袋を、ユーリウスは 迷いなく、それどころか 嬉しそうに受けった。

袋の中からは、幾つもの小箱が出てくる。

これまた ずだ袋には似合わない、高級そうな小箱だった。

ユーリウスは、その1っを手にり、うきうきとした顔で 蓋を開ける。

「ああ、いいね」

高級そうな小箱に入っていたのは、チョコレートだった。

「何で! 俺が! 態々わざわざ 隣の国まで! 喰べたくもない お茶菓子を! 買いにかなきゃ いけないんだ⁉︎ 」

苦悩を滲ませた表情をする 12歳くらいの美少年に、20代半ばの美丈夫は 満面の笑みで答えた。

「兄の頼みだからだよ」

しれっと言い、チョコレートを 1っ摘む。

それを口へ放り込み、拡がった甘みに 頬を綻ばせる。

「やっぱり、ノルドルンド王国のチョコレートは 絶品だな」

いつもの事だが、遠い隣国まで赴いて買って来たスピネルには 礼の言葉もねぎらいの言葉もない。

最早、ユーリウスは 弟の買って来たスイーツに夢中だ。

「だったら、定期的に輸入してくれ」

紅茶を買いに出向いた ミルヴァーデン王国は、このリンデンベルク王国の東にある城砦国家だ。

対して、今回 チョコレートを買って来た ノルドルンド王国は、北にある。

どちらもが、リンデンベルグからは かなり離れているが、一応 隣国・・である。

親密と云う程ではないが 定期的な国交も交流もあり、他の国と同様に 交易もさかんだ。

身分やかねがある者ならば、自分ののぞむモノを輸入するすべくらい 幾らでもあるのだ。

いやだよ、それじゃ駄目だから」

「何でだよ? 正式に輸入すれば、必要な時に 必要な量を買えるだろう?」

ユーリウスが一言 願えば、充分な事だ。

彼の立場ならば、商人団のほうから 喜び勇んで買い付けにってくれるだろう。

そして、欲しい物を届けてくれるばかりか、定期的に オススメの新商品まで献上してくれるに違いない。

そう進言しても、青年は 首を縦に振らない。

「だって、そうしたら 他の人も買えてしまうだろう?」

事もげに即答したユーリウスは、眼の前の弟の あかさまな不機嫌など見えもしないのか。

にこやかに、2粒目のチョコレートに手を伸ばしていた。

「何だ、その独占欲……… 」

自分だけで愉しみたいが為に、立場の弱い弟をき使っているのだ。

今回のチョコレートしかり、前回の紅茶の茶葉-しかりである。

重ねて云うが、彼の立場ならば、幾らでも 動いてくれる家臣がいる。

出入りの商人となりたい者達も、掃いててる程いる。

公然とは輸入しなくとも、彼等を使って個人的に入手する事は可能だ。

他には卸さない様に、と 一言 付け加えるだけで充分なのだ。

何も、他の貴族に知られたくない と云う理由だけで、態々わざわざ スピネルを隣国へ差し向け 買って来させる必要はない。

そんな 判り切っている手段を使わないのは、やはり 自分に対するいやがらせなのではないか。

面倒事を頼まれるたびに 脳裏をよぎる考えに、(おも)わず 紅い瞳を険しくさせた。


《 最大級の雷でも ブチ当ててやろうか。》


本気で悩んだ。

極論から云って、殺してしまうのは 簡単だった。

凶暴な魔獣であろうとも、スピネルの敵ではない。

つまり、人間の 1人や2人、どうと云う事はない。

骨の欠片カケラおろか、灰すらも残さず この世から消し去ってしまえるのだ。

しかし、これを実行するのは 酷くためらわれた。


《 こいつが死んだら、俺が 跡を継がなきゃいけないんだよなぁ。》


それだけは、絶対にいやだった。

強烈ないかりと殺意をこらえてきたのっぴきならない理由・・・・・・・・・・が、これである。

何度 き使われようとも、スピネルは これを引き合いに出されると 言う事をかざるを得ない。

そんな訳で、毎回 ユーリウスの我儘ワガママに振り回される事になるのだった。



   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎



食後の茶と 菓子を愉しむ兄-ユーリウスを 薔薇園の四阿あずまやへ置き去りにして、スピネルは 家へ戻る事にした。

広大な薔薇園から 最も近い建物の間には、植え込みと花壇で造られた迷路がある。

それを抜けると、大きな屋敷がそびえ建っている。

白い石で造られ、壁面からテラスの手摺てすりに至るまで、細部に亘って 彫刻が施されている。

建築の規模と 様式をかんがみれば、屋敷と云うよりも 宮殿と評したほうが正確だろう。

荘厳な白堊はくあの宮殿には、幾つもの塔がそびえ建っている。

御伽噺に語られる城-そのままな建築物だ。

陽のひかりの中で輝く 美しい宮殿にも、スピネルは 眉を寄せた。

此処は、家督と共に 兄が継いだ城だ。

つまり、スピネルも かつては此処に住んでいた。

遠く離れた〔湖の街〕の古城へ 居を移した今も、此処には 彼の為の部屋があり、いつでも使える様に手入れがされている。

しかし、スピネルは 宮殿に入らなかった。

庭を廻るようにして 門へむかうと、兄の居城をあとにした。




   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽




___視点:スピネル___


待てせていた馬車に乗り その足でむかったのは、首都から離れた 郊外の街だ。

スピネルの生国-リンデンベルグは、かなりの広さがある。

彼の居城がある〔湖の街〕は、首都から 馬車で2時間の距離にある。

その街のはずれに建つのが、数時間前にもいた あの城だ。

湖の中に、古城は建っていた。

かつては、王族が夏の避暑地として使用していた古城だ。

城の建つ湖も、それを取り囲む広葉樹の森や 稀少価値の高い植物が多い湿地も、今は スピネルの家のである。

これ等は スピネルが貰い受けた、この国リンデンベルクにいる間の家と その一部、なのである。

森にいだかれた湖のほとりから 岩石で出来た橋が伸び、湖の中へと続いている。

その先にあるのは、石造りの門と 一般的には城とばれる建築物だ。

兄の それとはくらべ様もない程 こじんまりとしているが、まぎれもない城である。

荘厳でもなく 華美でもない造りだが、小さいながらも 趣向をらした城だった。

〔湖の街〕の者達は、一捻ひとひねりもなく〔湖の城〕とんでいる。

スピネルを乗せた馬車は、岩石の橋をわたり〔湖の城〕の門を抜けた。



   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎



自宅にしている古城の玄関ホールへ入るなり、執事やメイド達が 彼を出迎えた。


  「「「「お帰りなさいませ」」」」


「 ………… 」

(おも)わず、スピネルはまり 喑黙おしだまった。

ほんの数時間前に『必要ない』と伝え、執事からも『では その様に』との返答を受けたにもかかわらず、帰宅した時の対応は 全く改善されていない。

もとい、改める気など 微塵もないのだろう。

そんな使用人達に、軽い眩暈めまいを感じていた。

出迎えや 見送りの挨拶に始まる 主従関係の色濃い対応に、心底 辟易してしまう自分がいる。

(おも)えば、昔から 好きではなかった。

一時いっときでも この環境から抜け出したくて、遠方へ留学した。

其処は、俗に〔魔法の国〕とばれる 単一都市国家だった。

国土の広さは、この国の 1/5もない。

だが、魔法に関しては 他の追随を赦さない程の先進国で、魔法の研究施設や 膨大な蔵書をかかえる魔法学園もある。

幼少の頃から 魔力が大きかったスピネルは、魔力の有効活用法を身に付けるべく 学園に入った。

勿論『おのれのちからを 国の未来に活用する為だ』などと云ってはいても、其処に 本心は欠片カケラもなかった。

ただ、貴族社会から遠く離れたかったのだ。

申し出てから承認されるまでに 5年の歳月がかかった事も、今では 良い思い出だ。

そうして手に入れた魔法学園での生活は、新鮮-そのものだった。

学園には 各国の王侯貴族などもいたが、実力主義の あの学園では、身分だけで不遜な態度をる者はいない。

否、り続ける事が出来ない。

教師達は そう云った者達に痛烈だし、学生同士でも 実力がないクセに傲慢な者達への批判は 辛辣だ。

威張り散らす彼らを構う者はなく、親の権力や家柄を振りかざす滑稽な者達を冷ややかに見詰める。

大概は それに耐え切れず、自己中心・唯我独尊な態度を貫けなくなり みずから言動を改める。

自然と淘汰され 不遜な者達がいなくなるのだから、スピネルにとっては 限りなく居心地が良かった。

あの魔法学園で 友が出来て、目標とするライバルが出来た。

そのお陰で、逃げ込んだだけの学園生活に 張り合いも出た。

のちに 帰国したスピネルが、違和感にさいなまれる日々に嫌気が差したとしても 仕方がなかったと云えるだろう。

次男である彼が家督を継ぐ なんてはなしも持ち上がったが、全力で拒んだ。



  兄は優秀なのだから、兄が継げば良い。



元々 嫡男である兄が継ぐ予定になっていたのに、冗談じゃない。

そう 言葉で拒絶してもき入れてもらえず、スピネルを余所よそはなしは着々と進んでゆく。

どう云う訳か、当事者の1人でもある兄-ユーリウスまでもが スピネルに家督を譲る気でいたのには、正直 驚いた。

懸命に拒否の旨を伝えると、父親は『どうせなら』と 隠居表明までしようとする。

つまりは、すぐにでも スピネルに跡目を継がせようと云うのだ。

覚悟を決めるとか 決心を付けると云った時間を与えずに、である。

恐ろしいのは、全員が本気だったと云う事だ。

兄を筆頭に、両親や 家臣の端々までもが 反対をしなかったのだ。

臣下達の権力争いでも絡めば 多少の反対意見が出るのが一般的だと云うのに、だ。

スピネルは、本気で焦った。



  このままでは 第一継承権を得てしまうばかりか、そのまま継がされてしまう。



スピネルは、恐怖した。

(おも)ってもいなかった人生設計だ。

何年後かには 兄が家督を継ぎ、自分は家を出て 好きに生きてゆく。

そう決めていただけに、絶望にも近い心境だった。

勿論、全力で回避しようと 全身全霊で努力した。

結果から云うと、すべてが無駄に終わった。

重ねて云うが、スピネルは 貴族社会が嫌いだ。

社交界だの サロンだの パーティだのに明け暮れる貴族だの、後継者争いだのに明け暮れる貴族だの、領民をしいたげつつ 権力に擦り寄る貴族だの、不正と賄賂で 私腹を肥やす貴族だの。

それと判っていながら 表向きは笑顔で付き合わなければならない立場など、本当に冗談ではなかった。

その中で生きなければならない未来は、彼にとって『死ね』と言われるに等しい。

しかし、周囲は、何だかんだと云っても スピネルならば そつなくこなすだろうと(おも)っている。

そればかりか、魔法学園で得た他国の知識や人脈などは この先 充分に役に立つ、と計算されていたらしい。

だからこそ、誰もが 彼の懸命の主張をいてはくれなかったのだ。

帰国後 ほんの数日で、スピネルは 追い詰められていた。

のっぴきならなくなって、彼は かつてのライバルに助言を求めた。

独りでは どうしようもなくなって、わらにもすが(おも)いでの相談だ。

これに対する助言は、実にシンプルで おそろしいモノだった。

今 考えれば、様々な影響を及ぼす こわい方法だと(おも)っただろうが、あの時は 冷静ではいられない状態だった。

スピネルは、それを実行した。

迷わずにおこなった説得・・の効果は、覿面てきめんだった。

自分の主張が ほぼ通ると云う 奇跡的な結果をり、想像するだにおそろしい未来を回避する事に成功した。

これが、スピネル-14歳の秋だった。

こんな混乱がおさまった 翌年、父は 惜しまれながら早期引退し、家督は 兄-ユーリウスが継いだ。

隠居した父は、母と共に 西の小都市にある別荘に移り住み、今は 気侭きままのんびりと暮らしている。

そう、長男であるユーリウスが家督を継いだのは、当初の予定通りだ。

決められていた事だったのだから それで良い筈なのに、いやがらせの様に 兄の我儘ワガママに振り回される日々が始まった。

それでも、あの城に居続け この国から出る事も出来ない立場にくらべれば、軽い障害だった。



   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎



御家騒動の様なモノが一段落した後、スピネルは 早々に家を出た。

父が隠居し、兄が家督を継ぐ前の事だった。

住む場所を移ったと云う意味ではなく、リンデンベルク国外への脱出だ。

彼が 家督を継ぐの継がないのと争っていた頃、そうと知った貴族達が スピネルに擦り寄ってきていた。

子供ならば御し易い、とでも(おも)ったのか。

彼等は、友好的な笑みを貼り付け 猫撫で声で たかってきたのだ。

大人達は 今以上の権力と利権の為に擦り寄り、後に得るだろう地位の為に言い寄る。

あまつさえ、兄を蹴落とせと囁く者までいた。

その娘達も また、同様に よくまみれていた。

何かしらの用事を口実に 近付いて来て、心にもない愛を囁く。

貼り付けられた笑顔が見事であれば ある程、底冷えがした。

おぞましいモノを見た気分だった。

結局 継ぐ事はなかったが、その後も スピネルに対し 媚びを売る貴族は多かった。

元々 貴族嫌いの彼は、最早もはや 吐き気しか覚えない。

兎に角、それ等から離れたかったのだ。

国内で、スピネルは 或る程度 有名だった。

その容姿の為、名も身分もかくしていても 誰なのか判らせてしまう。

故に、あしは 自然と国外へ向いた。

自分を知る者のない、こんな子供を敬う者のいない 何処かへ。

そんなスピネルに放浪癖が付いたのは、至極 当然の流れだった。

ただの子供として扱われるのも、心地好いと(おも)えた。

あなどられるのも 気にならなければ、優しさを向けられても 見ず知らずの者達に好意を寄せられても、いやな気はしない。

人攫ひとさらいや 追い剥ぎに襲われようとも、貴族達に囲まれた時-程の嫌悪感はなかった。

権力や 家柄に群がる者達よりも、外界の魔物のほうが はるかに良い。

スピネルは、いつでも そう(おも)っている。


《 魔物のほうが、本当にマシだよ。》


遠い眼で 呟いた言葉は、声にならなかった。

短い時間とは云え、数年前の出来事を鮮明に思い出していたスピネルは 逃避していた現実へ視線を戻す。

彼の前には、未だに頭を下げたまま 絨毯の左右に列を作っているメイド達と『出迎えはめろ』と言ってもかない 壮年の執事がいた。

数時間前と同じ光景に、(おも)わず 遠い眼になりかけた。


《 明日には、国を出よう………うん、そうしよう。》


此処にいるのは精神的に良くない などと(おも)いながら、スピネルは 歩き出した。

過去の騒動を思い出したせいか、会いたくなった者もいる。

遠くに住む友人に会う事を目的に、再び 旅に出るのも悪くはない。

深々とした御辞儀など辛い姿勢だろうに 微動だにしないメイド達の間を進みながら、そんな事を決意する。

この スピネルの(おも)いに気付いたのか。

数歩 後ろをいて来た執事が、不意に 声を掛けてきた。

「お出掛けは、書類の精査を済ませてからでございますよ」

釘をす言葉に、少年は 軽く舌打ちをした。

とてもではないが、公爵の地位に就いた者がる態度ではない。

しかし、これについて この執事が諌めの言葉を発する事はない。

間違いなく耳に届いていただろうに、である。

「ユークリッド様に於かれましては、公爵としての勤めも果たしていただかなくてはなりませんので」

睨む様に振りかえったが、苦言とも取れる言葉を投げ掛ける執事は うやうやしく頭を下げるだけだ。

つい 4時間前にもにした光景だ。

帰国し よごれを落とし着替えたスピネルのもとにやって来た執事は、軽食を喰べている間 ずっと小言を繰り返していた。

この執事は、主人あるじであるスピネルに対し うやうやしい態度をるものの、その実 主人あるじとして扱ってはいないフシがある。

所謂いわゆる慇懃無礼いんぎんぶれいと云うヤツだ。


《 だったら、普通に叱ればいいのに。》


何度も そう言うが、この執事は 態度を改めない。

それにならってか、城の誰もが 少年スピネルに対する態度を改めない。

雇っているのは スピネルであると云うのに、実質的な支配者・・・は、間違いなく この執事なのだ。

その彼が、毎回 この態度ではらちが開かない。

或るしゅいやがらせなのだろう、と(おも)う事で 早急な改善は諦めているが、微妙にはらが立つのは 致し方ない事実だ。

「お判りでしょうが、この街の統治は ユークリッド様の責務でございます」

壮年の執事は、前を歩く少年を そうんだ。

10代前半にしか見えない この少年の名前は、ユークリッド=スピネル=サルヴァドル。

この城の建つ湖の周辺を、公爵と云う身分になると同時に 領土として与えられていた。

したがって、リンデンベルク王国の公爵の 1人にして〔湖の街〕をおさめる者……と云う事になっている。

実質的には、国を離れる事の多い彼は 自治権を町長に一任し、町長から 報告だけを受け取る形にしている。

当然、すべてが事後報告・・・・だ。

それでも、サルヴァドル公爵として やらなければならない事はすくなくない。


《 だから 要らないって言ったんだ。》


領地の付与も 権限も、公爵と云う地位や 城・使用人達も、これっぽっちものぞんでいなかった。

今も 要らないと(おも)っている。

どれもこれも、スピネルを この国へ縛り付ける為、強引に与えられたにぎない。

それだけに『領主の責務だ、公爵の領分だ』と云われても、気がらないのだ。

「執務室へ すべて揃えてございます。精査して頂くまでは、決して お出掛けになられません様」

執事は、慇懃いんぎんに そう告げた。

それは、どんな手段を用いてでも 外出を阻止してみせる、と云う意味に聴こえた。

穏やかな微笑をかべている執事が それを実行する男だと判っているだけに、拒絶の言葉も出ない。


《 俺、しいたげられていないか? 》


そう(おも)うも、確かめる言葉は出なかった。

Yesと答えられても Noと言われても、何某なにがしかのダメージを受ける気がしてならなかったからだ。


《 此処、一応 俺の家なのになぁ。》


スピネルは、頭の中で ぼんやりと そう(おも)った。

みずから『一応』などと付けている時点で、この執事にてないと認めている様なモノだった。

スピネルは、り重くなったあし取りで執務室へむかいながら 長大息をくのだった。

コメディーって、どう書くんだろう(泣)

コメディーにしたかったのに、何故か ならない……。

スピネルを主人公に コメディー……。

ワタシのレベルが足りなさすぎる。

コメディー読むの大好きなのになぁ……。

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