夜空が開けた時
「な、なんだこれは……」
「うわっ、こりゃあすごいねぇ」
空から神奈子はそれを見ていた。
遠目からでも見ることができる赤い道。
その鉄臭い匂いが、その赤は血で出来ていると誰でもわかるだろう。
「これが神奈子が任せたっていう奴の仕業かね」
「妖怪を引き連れた、ただの人間だと思っていたんだけどねぇ」
「妖怪を引き連れた人間?」
ため息を付きながら神奈子は傍らにいる少女を連れ、自身の社に向かった。
「やっほー神奈子。元気にしてた?」
「まあ、それなりに。それより外のアレはなんだ!」
「ああ、アレのこと。昨日の出来事だから片付けが終わってないんだよね」
これは本当のことなのだ。
神奈子達は空からの遠目なので気付かなかったが、その血はまだ完全に乾いておらず、木々に隠れていた血だまりのいくつかを二人は目視できていなかったのだ。
「それについてはどうにかするよ。それで、結果はどうだった?」
「ふん、見ればわかるだろう。私が勝った!」
「そだよ、私の鉄の輪が効かないなんてね。びっくりだよ」
「よかったね神奈子。んでそちらさんが諏訪神かい?」
「んま、流れでわかるよね。知っていると思うけど私は洩矢諏訪子だよ」
少女のような姿をしているが立派な神である諏訪子。
椿はその高さが、娘である姫と同じくらいと感じ、信仰とは関係なく背の低い神もいることを分かった。
椿は背の低さで相手を見下さず、対等に話すことに決めた。
「私は近衛椿。神奈子の社を任された者さ。よろしく諏訪子」
「早速、敬語なしか。馬鹿なのか、肝が据わっているのか」
「馬鹿なんだろう。私だって最初からタメ口だったぞ」
敬語など使う気に成れない椿は二人に言われ放題だった。
「とにかく、これで依頼は完了だね」
「一応、あの惨状を片づけをしてから去ってくれよ」
「それは分かってるよ」
「そうか、ならこれをやる」
神奈子は椿に札を渡した。
妖怪を連れている椿は怪訝な顔をして、受け取ろうする。
そんな様子をみた神奈子は苦笑し、椿に言う。
「安心しろ。これには退魔の力など込めていない。人間であるお前用のお守りさ」
「ならもう少し分かりやすい形にすればよかったじゃん」
「諏訪子の言うとおりだよ。私の事情知っているくせに何言ってんだって思ったぞ」
「仕方ないだろう、今手元にはこんな形のしか用意できなかったんだよ」
なら時間かけてでもわかりやすいものを作ればいいものを。
だが、椿は直ぐにでも出発するので、滞在する時間などない。
神奈子の好意を受け取りながら、椿は頭を下げた。
「今回の事、ありがとうございました」
「いきなり何だ、頭を下げて」
「姫のことですよ。そのためにここまできたんだから」
「姫?」
「私の娘であり、諏訪子と同じくらいの背の神様だよ」
「ん?娘?」
「ああ、そこは気にしない方がいい」
数十分程経つと、椿は神奈子と諏訪子との会談を終え、そのまま帰郷するという。
元々姫の存在を、他の神に認めてもらうという目的で此処に来たのだから、用事が済んだら帰るのは当然だろう。
だが、それをよしとしない者達がいた。
「まだ帰らないでくだされ!」
「そうです!まだあなた方にお礼をしていないのですから」
「そこの嬢ちゃん達もなんとか言ってくれ」
「……これはなんだ?」
「……さぁ?」
集落にいた村人達が総出で、椿たちを止めていた。
その騒ぎを聞きつけて神奈子達が駆けつけてきたという訳だ。
「儂らの恩人をこのまま返すなんて、神奈子様の顔に泥を塗るようなもの。せめてものお礼をしたく存じます。いかがでしょうか」
「と言っているぞ。短い間でこんなに関係を築けるとはな」
「いいじゃん。このくらいもらっておけよ。減るもんじゃないし」
神奈子と諏訪子はお礼は貰っておけと、椿に言う。
だが、椿は首を横に振る。
「それは受け取れないよ」
「ど、どうしてだい」
「私は何もしていない。やったのはこの三人だからさ」
椿は後ろに居た三人、幽香、勇義、てゐの三人を指さした。
「社おろかこの集落に一匹たりとも妖怪を入れなかった。それは三人のお陰。私は何もしていない。だから私にはその資格が無いんだよ」
「……律儀なやつだね……あ」
「どしたのって……あ」
椿が自分は何もしていないことを伝えると、神奈子と諏訪子は椿を見つめ始めた。
「どうしたのさ。私にはその毛は一応ないよ」
「一応って……それよりお前」
神奈子はひと呼吸を開け言う。
「神の気配がするぞ」
ちょい来週の投稿が出来るか不透明になりました。
頑張りますがその事を覚えていてください。
生存報告はしますので。
では来週に?




