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東方食道楽  作者: みかん
第一章【最初の軌跡】
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椿の力

流れ始める歴史

世界は創られた。


海から命が生まれ、大地から恵みが与えられ、空から夢を得た。


あるところに森があった。山があった。滝があった。


その中に一つの命が投げられた。


「…!?、ここは?」


気がついた椿は周りを見渡した。木に囲まれていたからだ。最後に見たものは空爆で崩れた廃墟にいたはずなのだからと、戸惑うのは当然だ。


「私は、死んだはずなのに…じゃあ、あの声は本当の事なの?」


椿は混乱していたが最後の出来事を思い出し、無理やり納得した。


「神様ねぇ~。てか私がお母さん?どういうこと?」


歩きながら考えていたがやめた。元々考えることが苦手な椿は、判らないなら判るまで放置、という結論が出た。


取りあえずと椿は歩き始めた。


「こんな森なんて、見たことないよ」


呟きながら歩きそして止める。あることを見つけたからだ。


「なんで…いるの?…」


全てを喰い尽くしたはずなのに人がいる。

それだけで椿は一筋の涙を流した。


「これが本当の事なら、私も護らなきゃね」


神様、ありがとう。


椿は声しか知らない神にお礼を述べた。




椿は軽くお祈りを捧げ、歩き始める。その位置から滝の音が聞こえてくるため、そこへ歩き始める。

その途中、椿の腹の音が響く。


「うぐぐ~。実感が湧かないけど、一様私餓死で死んだのよね。う~お腹減った~」


木の実や山菜の類がないか目移りしながら歩いた。

もちろん、椿には多少のサバイバルの知識や植物の知識はある。けれども似たようなものばかりで見たことのないものしかない。

自分がどんな状況に陥っているのかさえ定かではないため、少しでも知っているものを見たいと少し焦る。

また、少し歩くと滝が見えてきた。それは見事な滝だった。だからこそ椿は不安になる。


「また知らないもの…どこなのよここは…」


世界のすべてを喰ったということは、世界を回っているということ。

椿は世界を回ったからこそ知らないものがあるここに、興奮する自分がいれば不安がる自分がいる。

いったん落ち着くため何か食べよう。そう思い椿は滝の近くを拠点に周辺を探索し始めた。


まあ毒あっても大丈夫か。そんな単著な考えで行動し始めた。

そんな時草むらから音が聞こえた。


「ん?なに。なんかいる?」


感じたことのない気配に少し戸惑う椿。だがそれも一瞬。すぐさま警戒し姿が現れるのを待つ。


「狼かしら?それとも狐?どちらにしてもおいしいからいいけど、できれば知っている動物だと私は嬉しい」


動物を愛し守るといった者がさっそく破るのかと思うが、椿が建てた誓いは椿なりの解釈が含まれている。それは自分が定めたものが敵というもの。

自分を襲ってきた者、生きるために獲物になるもの、誰かを襲うもの、そのような解釈に含まれるものが椿の敵なのだ。


椿は睨む。そして相手は姿を表した。

出てきたのは、二匹の黒い毛並みと白い毛並みの狼のようなものだった。ような、なのは大きさが通常の二倍程で二本脚で現れたからだ。


「ワーオオカミダーニゲナキャネー」


棒読みの現実逃避を始めた椿。相手はほくそ笑みながら会話を始めた。


「ニンゲンダ、ニンゲンダ!」

「ニンゲン、クウ!」

「私を喰う?」


椿は相手が何なのか検討がついた。小さい頃に見た映画の中の化け物、狼男なんだと。

空想の中の化け物が平然といるこの世界に椿は、一瞬驚き、少し恐怖し、とても嬉しがった。

知らないものだらけのこの世界に知っているものが出てきた。それが化け物でも椿は嬉しかった。

それ以外にも自分を喰うと言ってくるだけで椿は笑った。


「?ニンゲン、ナゼ、ニゲナイ」

「逃げる必要なんてないよ。丁度私もお腹が減っているの、じゃあ」


いただきます


椿の行動は早かった。油断している化け物達に向かって走り、白い毛並みの方の喉に噛みついた。


「ナニ!」

「ガァ!ハナセ!ニンゲン!」


油断しているとはいえ人間に噛みつかれるとは思わなかった二匹。噛みつかれている白い毛並みの方は引き剥がそうと椿を掴もうとするが。


「ふふぉひおほふぉひぃよ(少し遅いよ)」


その瞬間、椿は喉を噛みちぎった。


「ガフッ!…グアァ……ファ…………!」


喉からドバドバと血があふれ出しているのにも関わらず、椿を掴みかかろうとするも途中で力尽き倒れてしまう。

椿が取った行動は、どんなに強い相手でも、例え相手が化け物でも生きているなら呼吸するはずだと考えて、喉を狙ったのだ。普通ならただの人間で化け物の喉など噛み切れるはずがないが椿の能力に理由があるのだ。それは


「ナ!オマエモヨウカイダッタノカ!!」


椿の頭には耳が生えているのだ。他にも尻尾が生えてたり銀色の毛に変わっていたりしているのだ。

椿は口元の血を舐めながら話す。


「妖怪ねぇ~。私は普通の人間のつもりだけどそれで生きてみるのも面白そうね」


椿は笑っている。その姿に恐れた黒い毛並みの方は逃げる。本能が勝てないと危険を感じているからだ。


「だから遅いのよ」


その瞬間、黒い毛並みの方は蹴飛ばされる。体長差があるのを気にしないごとく吹っ飛ぶ。


「これが妖怪の力…遠慮なく使わせてもらうよ!」



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