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東方食道楽  作者: みかん
第二章【神の標】
34/42

死にかけの因幡

勇義と幽香がちょっとした憂さ晴らしをしているところ。

椿は今日の獲物を、山菜等は懐に、猪は手頃な大きさの木の棒に突き刺して運んでいた。

ちなみに今の椿は耳と尻尾を引っ込めて人間の状態だ。


「ふー、こんなもんでいいかしらね。それにしてもこの猪、デカいわね。何を食ったらこんなになるのかしら」


椿は知らないがこの猪は立派な妖怪だ。

妖怪の中でも数が多い部類の妖怪。

妖獣だ。

しかし、椿はただ大きいぐらいにしか思ってない。

微量ながらも妖力が流れている妖怪なのだが、椿はSearc&Deathをしているので気づかなかったのだ。


椿は猪を担ぎながら、見当違いのことを思いながら二人のもとに戻ろうとしていた。

その時、椿は狼の力を発現しながら、あることに気づいた。


「これは・・・・・・血の匂いか・・・・・・」


血の匂いを感じ取り、鼻が利く狼の力を発現したのだ。

椿はその匂いが気になりその方向に向かった。

森を進んでいくと血の匂いはだんだんと近くになってきた。

森を抜けるとそこには、水が流れていた。


「この水は、確か川下に向かえば二人と合流できるはず。とその前に」


血の匂いの元を探す。

すると川辺近くに血だまりとその真ん中に倒れている兎を発見した。

頭の白い毛は血によって赤くなっているだけだが、体の方はもっと酷かった。

毛がないなら未だましだ。

この兎の体には皮がないのだ。

肉が表面に出ており、見るだけで痛々しい姿をしている。

だが、そんなことお構いなしで椿は兎に近寄り、持っていこうと手を伸ばしたその時。


「おろ?こんなところになんのご用だい、人間」

「あら、生きているのね。そんな体なのに無駄にタフなこと」


なんとこの兎、皮がないのに生きているのだ。

死にかけの体に見えるのだが、実に流暢に喋っており、顔には出さないが椿は驚いた。

どちらにしても弱った体なのに顔をこちらに向けてうさぎは喋りだす。


「健康なことが取り柄だからね。てか、私が喋っていることに驚かないのかい?」

「驚いているさ、ほんのちょっとだけね。それより、あんたはただの兎じゃないでしょう」

「やっぱり気づくわね。そうさ、ただの兎じゃないわさ」


あっさり白状する兎。

椿はちょっとだけ興味を出す。


「じゃあ妖怪兎さん。お名前聞いてもいいかしら」

「死にかけの兎の名前を聞いても良い事ないのに変な奴だわね。私は因幡てゐ。まあ、死にかけの白兎だよ」

「てゐ、ね。覚えたわ。とりあえずあんた、生きたい?」

「またまた変なこと言う人間だねぇ。確かに死にたいとは思わないけど、ただの人間が何をするんだい?」


てゐは不思議に思っていた。

現在の状態になったのは人間を騙して遊んでいたところ、報復を受けてこうなっているのだ。

だからこそ、同じ人間の椿が助けたがるのが不思議に思えたのだ。


「なに、ただ『癒す』だけよ」

「は?」


すると、椿の頭からまた獣の耳が生えてきた。

しかし、狼の物とは違い、黒い毛の毛並みの良い整えられた物だった。

腰辺りからは、二本の細長い尻尾が生えてきた。

二本の尻尾の先端には、片方には赤い布が、もう片方には青い布が結び付けられており、その布に鈴が付けられていた。

椿は猫の力を発現したのだ。

てゐはその光景に唖然とし、口が空いてしまった。

そんなてゐを見ながら、椿は小さく苦笑してしまう。


「この姿は可笑しいかしら?」

「い、いや、そんなことはないが・・・・・・驚いた。あんたも妖怪だったとは」

「気づかないほどの小さな妖力とかじゃなくて、さっきまでの私には本当に妖力の持たない体だったわ」

「なんだ?妖怪じゃないのか?」


てゐは椿が妖怪だと思った。

しかし、先程までの椿は近くで見ても妖力が感じず、ただの人間にしか思えなかった。

だが、蓋を開けてみればどうだろう、妖力を纏った立派な妖怪にしか見えなかった。


「人間よ。妖怪の力を使おうが人間よ」

「そうか。で、私を助けるにはどうする気だ?」


すると椿はてゐに近づき、尻尾を揺らし尻尾についた鈴を鳴らした。

その鈴は、とても小さい鈴とは思えないほど大きな音を響かした。

椿に撫でられながら聴いていたてゐは、心地の良い鈴の音に心が癒された。

てゐが意識すると体の痛みが消えていることに気づいた。

これは椿の仕業と分かっていたが、鈴の音をもっと聴きたいと思ったてゐはそのまま静かに目を閉じた。


ちょっとだけ情景描写にチャレンジしてみました。

やっぱり、難しいですね。

もっといい文章を書けるように日々精進していきます。

では次回は来週13日頃ですね。では

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