彼女は気づく
彼女は眠る
彼女にとっての最後の食事が終わった後
「さーて、この後どうしようかねー」
彼女は、さっきの男でこの世界にいる人間がいなくなったことをなんとなく理解していた。
だからこそ、今後の行動にかんして考えていた。
「まあ、楽しいことなんていくらでもあるよね♪」
椿は歩きだした。気楽に考えるのは後先を考えない人だと言うこと。
そして、彼女は知ることになる。
5日後
その日は来た。
彼女は教会の椅子に座っている。ただ座っているのではなく、動く気力がないほど体力がないのだ。
人間以外にも食料はあるのだが、彼女は食べなかった。
あることに気づいたからだ。
「あーあ、私死んじゃうのか。ははっ、当然だよね。世界は一人で生きていける場所じゃないもん」
口にしてはいけない。してしまったら思いがこぼれ出てしまう。
「あの日からだーれも、一緒にいてくれないしさ。どうしてだろうね」
けれども、彼女はそれを止めることが出来ない。
溢れ出る思いが口にしてしまう。
「そう…だよね。私…い…ま…独り…なんだ」
今まで、絶対に口にしちゃいけないと、椿が忘れようとしていた言葉が、今、口にしてしまった。
「そうだよ…私、独りなんだよ。誰も…いない…んだ」
「ねぇ、誰かぁ…いないのぉ…私、やだよぅ…独りはやだよぅ…」
「………………………………………………………」
彼女はまだ、幼い。心が幼いのだ。あの事故から、誰一人、彼女を救ってくれる人はいなかった。故に、彼女なりの心の表現が自分の素直な行動、つまり人を喰う事だった。
自分でも、この行いは異常なことだと分かっている。
けど、どんな事でもいい、私を叱ってほしい。
自分を見てほしい。だから、救ってほしい。
彼女なりの、椿なりの、心の叫びだった。
それを誰も、聴いてくれなかったのだ。
それでも、彼女は叫んだ。けれど結果は誰一人いなくなってしまったのだ。
「そうだよ…ね、怪物は独りで…孤独に死ぬんだよね。…でも、独りで死ぬのはやだよぅ」
溢れ出る言葉を言いながら椿は、独り、泣いていた。
「…お願いです。神様。自分勝手で愚かな私の言葉を聞いてください」
今まで、神様のことなど信じていなかった椿が祈り始めた。まさに、藁にもすがる思いなのだろう。
「私は私を抑えきれなかった、いえ、抑えなかった。それはとてもとても楽しく、心地良かったからです。けれども、私は今、後悔しています。だからこそ、私の最後の言葉を聞いてください」
「もし、生まれ変われるならば、人を愛し、人を守ります。動物を愛し、動物を守ります。世界を愛し、世界を守ります。だから」
彼女の小さく、そして大きな願い
「私を一人にしないで……」
その想いを、口にした瞬間、椿は倒れた。
最後の力を全て、自分の願いに込めたからだ。
それを聞き入れるものなど、人がいなくなった世界でいないはずだった。
椿は薄れゆく意識の中、聞こえた。
『この世界の最後の神として、その願いを聞き入れます。幸せになってね。私を願い、そして産んでくれた。大事な母様。また、会いましょう』