複数の守護
「じゃあ、私が葵を治療するから、狼は護衛をお願い」
「了解した。全力で守る」
「鷹は、葵を撃った人間の目星を付けてくること」
「……(コクリ)」
「他の、鼠、蛇、狐、海豚は妖怪の殲滅をお願い」
「じゃあ、ここのいるの全部食べていいんだよね?お腹ペコペコなんだよ。早く食いたいよ」
「分かったわ。生き残しなんてさせないわ」
「了解よ~さくっと終わらせるわ」
「ん~面倒くさっ。けど仕方ないし、狐と同じくささっと、終わらせて寝てるわ」
様々な椿が、椿同士で会話している。
そんな光景に唖然としている逆泣と葵。視線を戻すと椿がいた場所には、黒い球体が浮かんでいた。
完全な黒ではないため、目を凝らしてみると椿の姿が見えた。
だがその姿は葵には見たことのない姿だった。
「姉様に尻尾がない?」
今の椿には尻尾や耳、腕に毛が生えてなく、普通の人間の姿をしていた。
その姿に逆泣は見たことがあるため、特に違和感を持たなかったが、疑問が残った。
「なんで今、人間の姿になっとるんや?」
逆泣が疑問に思ったのは、今、人間の姿にいること。
今この時に、人間の姿をしているのが疑問だったのだ。
そんな時、後ろから声をかけられた。
逆泣が後ろを向くと、いたのは、自分と同じ、猫の耳や尻尾が付いている椿だった。
「説明は後でします。まず、葵の治療を」
猫のような姿をした椿は、手を葵の翼に触れ、尻尾の先についている鈴を鳴らす。
すると、椿の手に淡い光があふれ始め、葵の翼を包む。
包まれると、葵の顔色が少しずつ良くなっていった。
「葵…」
「痛みが引いていく・・・・・・」
「これなら」
治る。
術式が解け、無事全快することができる。
逆泣はそう思った。
「安心するのは早いです」
猫耳の椿がそう言った。
椿:猫時の能力:癒す程度の能力
「私の能力では、完治はできません。私の能力は癒すことはできても治すことはできないのです」
「それは、どう違うんや?」
「あまり変わりません。でも完治はできないのです」
「なら、一歩手前まででも、治してくれればあとは自分で・・・」
葵の問いに首を振る椿。
「元の原因を取り除かないと意味がないのです」
まだ、葵の翼には退魔の術式が残っている。それをどうにかしなければ、葵は死んでしまうのだ。
「これがある限り完治は愚か、生きることなんてできません。私の能力も進行を止めるので精一杯です」
「じゃあどうすればいいんや!」
逆泣は焦る。自分の大事なものがいなくなるのは嫌だからだ。
「方法は、いくつかあります。けれど実行可能なのはひとつだけです」
「どんなものですか?」
「簡単です。翼ごと術式をそぎ落とすのです」
「いちびるな!」
逆泣は声を荒げる。
「事実です。他の手では現状不可能なのです」
「他の手とは一体・・・・・・」
「まず開発者、あるいは術者に解いてもらうこと。ですがそのどちらも、もうロケットに乗車しています。次に術式を長い時間をかけて自力で解くこと。これは術式自体が妖力を浄化するものなので、短時間でどうにかしないといけません。他の方法も似たような感じで無理なのです。よって、確実で実行可能なのが、翼をそぎ落とすことなのです」
翼をそぎ落とす。
それは葵に、天狗としての生き方をやめろと言っているのと同じだ。
逆泣は、それに怒り、それしかないことに、悔しんだ。
「その、方法しかないんですね」
「葵!」
「逆泣さん、いいんです。姉様は私が死ぬかもしれないと知ってああなってしまったのです。なら、私は生き残らなければいけないのです」
「でも!」
「大丈夫です。飛べなくなっても逆泣さんや姉様がいます。私は大丈夫です」
逆泣は、気づいていた。先程から葵の体が冷たく震えているのを。
術式が少しずつ進行し始めているのだろう。
時間がない。
「では、始めます。逆泣、体を抑えて」
「・・・・・・絶対に助けろよ」
いつもの口調を忘れるほど、逆泣は真剣だった。
椿は笑いながら、逆泣に言う。
「それは、あなたが分かるはずですよ。桜」
「お前!その名前を何処で!」
逆泣の言葉を無視し、椿は葵の翼を根元から、削りとった。
だんだんクライマックスになってきました。
逆泣の名前が出てきましたね。
なんで猫耳椿が知っているのかは、いつの日にかは解明しますよ。
あ、ちなみにHRが4にあがりました。
まだまだ上を目指していきますよ。




