最後の食事
物語は始まり、世界は終わり
「はぁ、はぁ、はぁ」
男は走っていた。ビル群が建ち並ぶ、街中を。
だが、それだけに奇妙なのだ。男の足音以外、何一つ物音がしない。つまり、静か過ぎるのだ。
「はぁ、糞っ!何なんだよアイツは!」
男は逃げているのだ。この何もない、静かな街中で。
男が一息つくため建物の中に入った。
ようやく落ち着き、逃げるため外に出ると。
「見~つけた」
「ひぃ!!」
その存在に見つかってしまったのだ。
「た、た助けてくれ」
「どうして貴方を助けないといけないの?貴方は私のご飯何だから、大人しく食べられてよね」
見た目はただの少女にしか見えないこの存在は、見た目道理、ただの少女なのだ。可愛らしくニッコリと笑いながら、男に近づいていく少女。
だが、男は怯えるだけだった。
「近づくな!来るな!来るな!!」
「フフっ、怯えちゃってね。でも、もう待てないの」
「止めろ!」
「フフフ♪」
いただきます
骨が折れる音、肉を引きちぎる音、血をすする音。
少女は今、食事をしている。
人が人を喰う。それは異常な光景だ。
だが、それを咎める人は誰一人もいない。この世界に人などもう彼女しかいないのだ。
「ふぁあ、おいしかった♪」
彼女の名は、近衛椿。
人を喰う事に快楽を覚えてしまった少女。
その理由は、ある事故が関わってくる。
彼女が乗っていた飛行機が山の中に墜落したのだ。
救助に時間がかかり、その間にも乗客達は餓えに苦しんでいた。
そこで乗客達は事故で死んだ死体を食べ始めたのだ。
当然、その中に椿もいた。彼女も飢えていたのだ。彼女は隣の席に座っていた女性の死体を食べ始めた。
すると、彼女は驚いた。人はこんなにも美味しいのか、と
彼女は夢中に食べた。
他の乗客達は人を食べることに抵抗をしながら食べているのに彼女だけはとても美味しそうに食べていた。
その日から何日かすると、ようやく救助が来た。
だが、救助隊の人は驚いた。
少し前の確認の時は、数十人は生き残っていたはずなのに、今は一人しかいなかった。
椿も最初は死体だけを食べていたが、生きている人にもその口は動いた。
死んでいてこの味なら、生きている人はどんな味がするだろうと。
救助隊が到着するまで彼女は死んでいている人も生きている人も食べ尽くしてしまったのだ。
その後彼女救助隊に保護され、刑務所に監禁されたが、すぐに脱獄した。
その際に刑務所にいた受刑者、職員、その日偶々いた受刑者の家族、知人など全員食べた。
脱獄し、世界を周りながら、椿は人も動物もあらゆる肉を食べ尽くした。
そして今日、最後の食事が終わったのだ。
早めに出来たらいいな