横須賀
――横須賀 二六○航空隊基地 5月1日
潮の香りが風に乗り風で波が踊る、久しぶりの日本の横須賀へ。
階級2進級と言う事で少尉に上った。
横須賀軍港のすぐそばに二六○航空隊の滑走路と兵舎、格納庫があり、食堂は無いが街の専門店や食堂で朝昼晩食べることが多い。
ちらほら白い服全身の水兵士が時々見せの中に入ったりそこら辺の子供と一緒に遊んだりは日常茶飯事でこれも士気上昇に役立てるためとか。
昼でも賑やかな軍港、街を歩いて横切り二六○航空隊基地前まで来て番兵に身分証明書を見せ司令室まで案内される。
木造兵舎だから香りも良い。
司令室に入り、襟首には銀の星2つに赤い線が3つ。中佐を表す。
薄暗い司令室に太陽の光が注ぎこみ渡し背を向け太平洋を眺める司令官。
私は右手で敬礼し「美貴少尉、こちらに再編入いたします」と伝え司令官は「ご苦労」の一言で終わった。
まだ用件はある。
「司令官殿、状況報告しますが米軍側に地獄猫と新型機、グラマンF6FとマスタングP51Dの開発が進められており艦載機では手が出し難い状況です。開発中の艦上戦闘機"烈風"と陸軍局地戦闘機"陣風"の開発と生産を一刻も早めないとなりません」
「うむ。話は聞いている。烈風の試験が完了して生産を急速に行っている。零式艦上戦闘機五二甲型も実戦配備を完了している。P51Dと言う戦闘機は極めて万能だ。明後日、大日本帝国海軍連合艦隊は戦艦武蔵、大和を含んだ歓待を米国本土に向けて出発する」
「了解です。ですがもし失敗した場合はかなりの損害と損失となるのでは?」
「だから君達を呼んだのだよ。あらかじめ本土防衛に守備の航空部隊を数万とし地上部隊は数百万と残す」
相当早く終わらせる姿勢でいる様だけど問題は工業力と資源だ。
工業と資源は独立させた東南アジアから輸入、現地生産を行っているが東南圏を失われると本土にも影響する。
只、独立解放の東南アジア人系日本兵は志願が増えるばかりであると言う話は聞いた事がある。
私は敬礼をし、司令室から出た。
「!」
とっさに何かを感じた私はその場でしゃがむと後にガシャーンと司令室の室内ガラスの破片が足元に落ち、「うわ!」「やーいお前始末書どころかじゃないぜ」とふざけて遊んでいた航空隊員の仲間達がその場から離れて1人ポツンと廊下に残されていた訓練兵?の航空隊員が土下座っぽい姿勢をしていた。
恐る恐る近づき、
「だ、大丈夫?何投げたの?」
「水を濡らした雑巾です・・。あいつら美貴さんの事が気に食わないから俺を使って濡れたボロ雑巾投げろって言われて・・」
少年航空隊員かな?
私も少年航空隊員と同じ歳だから嫉妬やこういう事態は時々ある。
こいつら相手にする暇も無い。