零式艦上戦闘機美貴型改
落下傘の紐を短刀で切り落とし、肩の負担が解放され短刀を納め、そのまま月の反射で輝くラバウルの黒潮にダイブ。
そしてまたザバーンと水しぶきを上げ、太ももまでつかったまま砂浜まで歩き十四年拳銃を抜く。
ただ相手を射殺して白黒付けるのは武士道精神として卑怯。
砂浜に上陸した地獄猫はこちらに銃口を向けて来た。
私は右手で握っていた十四年式拳銃を手放し、足元へ落とし腰に挟んだ短刀を抜き取り、刃渡り30cmの銀の刃を地獄猫に向け、
「拳銃で私を殺すのか?」
日本語が通じたのか拳銃を手放しナイフを手にとって、
「敵が居たぞ!」
密林から警備兵の声がすると地獄猫は舌打ちをして海の方へ飛び込み泳いでどこかに行ってしまった。
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救助隊に助けられ、上官に説教されながらもいつも通りに真夜中の午前の格納庫に行くが無残な姿で戻ってきた私の美貴型があった。
尾翼、主翼はバラバラでエンジンは部品があちらこちら外れていて機銃がむき出し。
当分飛べそうも無い。
何故か整備士数十人が、私の美貴型を取り囲み何かを調べている。
忠が私に近づき、「明日まで私が直します。試作品の零式艦上戦闘機五二丙型が1機、生産が完了していますので美貴さんの腕になるような美貴専用機を造ってみせます」と言った。
「よし!全員、五二丙型をここに持って来い!」
「「「りょうかーい!」」」
壊れた美貴型の隣にユウコの四式戦闘機の主翼に座り飛行服を機首に投げ捨てTシャツ一枚にして仰向けになる。
眩しいランプの下、瞼を閉じ私は睡眠に入る。
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「・・・さん」
誰かが揺らしている・・。
「美貴さん!」
瞼を開くと、顔が真っ黒の忠の顔が目の前に。
「零式艦上戦闘機五二丙型の改造が完了しました」
「あ、どうも・・」
どうしよう忠さんと一緒に居ると胸の心拍数が無駄に上がる…。
とりあえず体を起こし、お隣の壊れた美貴型の形は無く、いつもの濃青色の塗装をした試作の五二丙型があった。
翼から飛び降り試作型に近づく。
「おー・・」
一晩で仕上げるとは・・。
「零式艦上戦闘機五二丙型を改造した零式艦上戦闘機美貴型改です」
零式艦上戦闘機美貴型改・・。
「武装は機首に7.7mm機銃が2挺、20mm機関砲が2挺・・。13.2mm機銃2挺と旧美貴型より火力を倍増」
「自重は五二丙型の場合1,970kgですが、美貴型改の場合1,760kgです」
「正規全備重量は五二丙型は2,555kgに比べて美貴型改は2,421kg。正規全備重量は零戦二一型同様です」
「エンジンは栄五二丙型改で2,200hp。馬力は上昇」
結構、旧美貴型とは変わったね・・。
対F6Fに対抗するならまだ良いかも知れない。
「プロペラはハミルトン定速3翅 直径3.05m。あまり変わりません」
「最高速は844.5km/hで最高度は7000m」
「航続距離は2,700kmで貯蔵タンク装備では3,200kmまで可能」
「60kg爆弾2個、250g爆弾1個搭載可能。30kgロケット4弾搭載可能、以上です」
「上手く慣れると良いんだけど・・」
コックピットに入りながら言葉を吐き、ベルトを閉めエンジン出力を最大に。
「対F6Fと対P51Dを想定した設計です。では試験飛行を開始します」
遅れながらも