帰還
――3人称
分厚い雲の下で戦闘機同士の戦闘が展開していた。
邪魔にならないよう戦闘空域外に美貴とその地獄猫は飛んでいた。
曳光弾を散らばしながら美貴の"零式艦上戦闘機美貴型"を落とそうとするF4F。
エルロンロールで回避しオーバーシュートを狙いスロットルをダウンしブレーキを動作させ、急な低速に対応できないまま零戦を追い抜き、射程に入ったF4Fに美貴の零戦から7.7mm機銃と20mm機関砲の乾いた銃声と閃光が混じりながら放たれ、F4Fの主翼、補助翼へ金属音を鳴らし火花が飛び散る。
「ッ・・!」
F4Fを操るパイロットは歯を噛み締め、コックピットから零戦を睨む。
そしてF4Fの隣に張り付いた美貴の零戦。
両者睨み、美貴は、
「肌が日本人と一緒・・。日系米軍兵士?主翼、下げ翼、補助翼は動作不能にさせたから海軍の援護へ向かおう」
と肌が違うことに気づいた。言葉を捨て、零戦はF4Fから離れて戦闘を行っている航空隊へと消えて行く。
――視点 美貴
あれは日系人だったか・・。
最近でも米本土では"日本人狩り"が噂となっていたがまさか本当に戦地へ出すとは。
<<こちらは艦長だ。精鋭の二六○航空隊が来てくれたおかげでまさか短時間で全滅が出来た>>
まだこっちに来て5分も立ってないけど、まあいいか。
「了解。では二六○航空隊帰還する」
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夜のラバウル航空隊司令部に報告書を提出。
二六○航空隊は階級問わず腕で部隊長、小隊長と決まる。
薄暗いランプで照らされた格納庫に美貴型戦闘機があった。
たまたま翼の上で食事を取っていたユウコが、
「おー仕事ご苦労さん。悪いなここ座っちゃって」
とカンカンと翼を叩いた。
「私は操縦席で座るからいいです」
「ああそうか。これ食え」
投げ渡され、一瞬だけ"CHOCOLATE"と書かれた英語文字が。そして黒い紙に包まれ銀紙が。
そして右手で取りどこで取ったのか尋ねると、ユウコは「たまたま偵察機を落としたらたくさんの木箱がここに落ちて中身を見たところ菓子だった」と言う事・・。
狭い操縦席内の席に腰をかけて楽な姿勢。
丁寧に包まれた黒い紙を破り、また中の銀紙を破くと中から茶色くほんのり香ばしいか降りが。
これがチョコレート・・。
アメリカの食べ物なんて始めてだから、これは毒でも?
とりあえず一口・・。
「・・・うん。美味い。まだある?」
舌、口に残る甘い味は美味し。
「おお好きになったか?砂糖は多めだから食いすぎには注意。非常袋に沢山つめとくと良いぞ」
チョコレート10、20枚あるかのように強引に非常袋積め席の下に置いといた。
「で、地獄猫と会ったのか?」
「会いましたが行動不能程度にさせました」
「へぇ・・」
チョコレートを頬張りながら喋り続ける。
私は、
「相手は鬼畜です。私の戦力でどんなものでも狙い撃ちです」
「私はすべてにおいて重視するからな。人それぞれだな」




