菊水作戦 神風の美貴
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30機編隊の敵機と正面すれ違うと、地獄猫も混じっていた。
機首に赤猫印。
私は邪魔な敵機を落すため一旦操縦桿を倒しグラマンの後方へ行く。
12.7mm、13mm機銃をぶっ放すと私に狙われたグラマンはプロペラをピタリと止め、花が舞う様に青い洋上へと落ちて行く。
背後に敵機が10機か・・。
宙返りを見せしめにやろうと今度は桿を引っ張り、機首を空へと向ける。
そのまま失速しながら機体は横滑り、左にガクンと機体は捻るとすぐに失速から戻り10機の背後からすべての機銃を発射した。
特別な炸薬弾が入っている20mm弾は着弾と同時に小さな爆発を起こす。
それに被弾した敵機は空中で爆砕。
巻き込まれる敵機を後に地獄猫を探す。
何故か私は突っ込む事を忘れて地獄猫を探していた。
「こんなのに構っているんじゃ無い・・。体当たりが先だ」
私は言葉を呟き敵艦の方向へ機首を戻す。
後部から来る機銃の雨を交わし、炸裂する対空砲火も回避。
操縦桿を横へ倒し、水平器が360度休む事無く回り続け後ろ見上げ一気に攻撃を仕掛ける地獄猫に援護機の機銃弾が降り注ぐが
そんな事は簡単な回避。
掠りもせず外したようだ。
速度の出しすぎたグラマンには容赦ない機銃を放ったところで砕け散る。
今回の敵は熟練が多い・・!
私の技術不足かもしれないがそんな事を思っている暇も無い。
前衛の駆逐艦の対空砲射程内に入ると機体が揺れるくらいの爆発と轟音が身体を通じて感じてくる。
せいぜい2隻。その後衛には目標の空母が居るんだ。
と思い気や対空砲が一気に静まった。
爆音を唸らすプロペラの音に背後の敵機のプロペラ。
攻撃がない。
<<・・・!・・・・!>>
<<すぐに戻れ!美貴大尉!>>
「なぜです!?」
ユウコの声だ。
<<大東亜戦争に負けたんだ・・!日本はアメリカに降伏した!>>
「嘘言わないでください!私は信じません!内地に敵を入れるものか!」
嘘に決まってる・・!
強く握った操縦桿でこの"美貴型改"を操り・・!
遠くなっていく駆逐艦。
近くなっていく空母。
邪魔をするように攻撃を仕掛けるグラマンに対して容赦ない攻撃をさせると、空母から対空攻撃が。
背後に張り付く地獄猫。
機銃を休む事無く撃ち続け、風防を撃ちぬき、私の身も撃ち抜いた。
体全身に激痛が走る。
足や額に血が流れ視界が真っ赤になる。
歯を食いしばり艦首手前目がけて操縦桿を思いきって倒した!
風を切って疾風のごとく進む"美貴型改"は一瞬な機体の不安定が生じると爆発と共に
耳障りな轟音の音。
そして冷たい水に包まれ、視界は青と赤が混じる不思議な世界へ。
青空の上の雲が浮んでいる。
そしてそれを遮る様に黒煙が邪魔をする。
視界は暗くなり私は痛みや匂いも感じず暗闇世界に閉じ込められた。
周りを見渡しても闇、闇。
1歩、ゆっくり歩きながら出口を探すと薄ら光が差し込む世界へ入ると、
「ハッ!」
夢・・?
「ん?大丈夫か?」
軍医が私の顔を覗く。
「大尉、少し疲れてません?日の浴びすぎで日射病を起こしてましたよ」
同じように3番機の連れの顔が目に入る。
「8月14日だから特攻は明日だ。どっちにしろ若鷲が散るより、老けた軍人鷲が散ったほうがいいんだけどな・・」
白衣の軍医はそう呟く。
上半身を起こし、周りを見る。
鹿児島の医療室だけど軍医と3番機の連れが居なくなっていた。
なぜ・・?
日付は8月15日で太陽は真上から顔を差していた。
「あっ・・!」
お腹と足に痛みが走る。
下着には血が染みて、小さな短パンにも。
「幻覚?幻聴?」
私は頭が狂ったのだろうか・・。




