本土防空戦
Bパートとして実際に起きた事を物語にしています
――1945年
時は過ぎていつの間にか18歳・・。
いつしか自分の裸を鏡の前で見たりする。
弾に掠れた被弾跡は薄ら残っていた。
後ろに束ねた髪を解くと、首まで伸びていた。
本土決戦を備えるため私は本土帰国を命令された。
サイパン陥落、硫黄島陥落。東南アジア圏はすべて陥落。
沖縄戦へと突入した。
レイテ沖海戦以来から特攻隊出撃の数も多くなってきている。
大本営は東京、横浜、大阪、名古屋・・。
この4つの都市にはB29と言う大型爆撃機の来襲が予想されていて、二六○海軍航空隊基地も主力防空基地となった。
むしろ、爆撃が日に日に多くなっているだけで・・。
寒い・・。
3月中旬なのに、肌が痛いのか冷たいのか。
私の美貴型改には魂が篭っている。
簡単に撃墜なんてされない。
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――本土上空 高度3000m
哨戒任務として本土を飛び回る。
陸軍のユウコが乗る、四式戦闘機丙型。
<<敵機来襲。高度およそ7000m、硫黄島方面からこちらに接近>>
来たか・・!
<<B29編隊機およそ10機、護衛機マスタング4機>>
高度が高い・・。
いけるか?
目に入った銀翼の輝き。
あれが敵機だ。
引いた操縦桿。
心と1つに。
私の機体は様々な戦いを潜り抜けた戦闘機。
東亜の国民の魂、満州の魂。
ここの内地に敵機を入れるものか。
光学照準器を敵機、B29に定め13mm機銃発射機を引く。
白く細い射線が放たれ空の要塞機は白煙を少しばかり噴く程度の傷を負っただけだ。
<<よーし1機撃墜。囮になる、マスタングを落してくれ>>
<<陸軍機戦闘機がそちらに向かっている>>
これで少し戦力は上がると思う。
ユウコの機体を探す。
ちょうど翼下に位置していて、華麗な動きで敵弾を回避している。
横へ倒し、ラダーを蹴る。
360度回る水平器にその3機のマスタング後方へ機体を持って行き20mm機関砲発射機に力を込めた。
炸裂する機関砲。
狙われたマスタングは機体を不安定にしながら急降下。
コクピットを撃ち抜いたんだろうか。
2機まとめて撃とうと、全武装の発射機を引くと思った以上に火力が衰えたせいなのか2機は爆砕もせず
エンジン停止で墜落。撃ちぬきでやられた程度だった。
無理も無い。
中学生や小学生が部品を作っているから質も悪くなる。
弾も本土決戦に備えた程しか無い。
高度を上げつつ機首を空へ。
5000、6000・・・7000・・。
B29と同じ高度。
機体が大きく、撃墜も難しそう。
真っ直ぐな射線が無数に私の機体スレスレに来る。
銃座から機銃が発射されていることに気づいた私は撃墜が難しくなると予想する。
高度が高くても速度は一定に保たれ機銃の弾を回避しつつB29に近づき、発動機に20mm機関砲を発射させた。
<<援護する>>
ユウコの四式戦闘機、そして陸軍機の三式戦闘機が急降下の銃撃でようやくB29の発動機から火が吹いた。
残り9機。
甲高い金属音がした。
翼を見ると、濃緑に被弾跡が10個近く。
それに穴が大きい。長く飛べない・・。
これに気づきユウコは手信号で、
"離脱セヨ"の合図を。
それに返答する。
"武運祈ル"と。
帰還も止む無し。
小さくなるB29とその戦闘機。
私は胸に残る悔しさに負けそうになったが舌を噛み反省として基地へ戻ろうとしていた。




