プロローグ
――1942年
桜が踊り、花びら散る帝都の皇居前公園。
風の中に混じる梅の香りが鼻腔を擽る。
私は大日本帝国軍海軍航空隊の"2600航空隊"または"二六○航空隊"に所属している。
「美貴軍曹。必要品はすべてラバウルへ到着した。後は横須賀まで移動してラバウルに向かうだけだな。私と一緒に」
エンジンの唸りを上げ私の前に停車するのは"くろがね"そして運転手はツヤツヤと長い髪の"忍ユウコ"戦国から今でもとあるどこかの山で生活している忍者一家の四女。私の先輩である。
大変似合っている陸軍の制服。
私は助手席に乗り"くろがね"は桜の下、ゆっくりと走り出す。
「美貴はいつも皇居前公園の桜木の下にいるなぁ。まあ皇居前公園の隣は孤児や捨て子を育てる施設で育ったんだっけな?」
ユウコ少尉が運転中に私をからかう様な口調で言うがそれに反するのは違反だから適当に答えていく。
「はい。学校と同じですから」
私は1927年生まれで年齢は"15歳"でまだまだ年齢は未熟だが、言葉や航空技術は人一倍の者だ。
施設所長が私に"美貴"と言う名前をくれた。
美しい桜の木で美貴と。
戦争始まって以来体に変化を感じるようになっていたが私は気にせず夢である"海軍航空隊"に志願。
勿論、女は決まって採用は厳しいが何とか入り日ごろの訓練を重ねようやくここまで来た。
これまで戦闘機ばかり落とした結果、連合軍側からは"海鷲"と呼ばれるように。
「んでラバウルに行く理由は戦力上昇のためだな。私も行くけど」
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――ラバウル海軍航空隊基地
結構な時間だったけど、ラバウル海軍航空隊は想像以上に酷い・・。
私の妄想ではかなり充実した施設化と思ったら粗末な司令部や兵舎だった。
だが、贅沢は言えない。
「君達が日本から来た、小娘達か」
感じの悪いおっさん1人が司令部へと案内され、「お腹空いたろうからバナナ食え。栄養豊富でうんまいぞ」と良いながらやや黒い点が付いたバナナ1本を私がもらいその場、歩いたまま皮を向き実が出たところで一かじり。
バナナ片手に木材で造られ、ジャングルに溶け込むようにか屋根だけ雑草や草を乗せてある司令部の中へ。
中は薄暗く、ランプ1個のみで光が照らされて坊主頭の司令官が旭日の旗を背に椅子に座りテーブルで書類とにらめっこ。
「・・・美貴軍曹で忍ユウコ少尉か。しかし美貴軍曹は所々、中佐並の腕が秘められてると聞いたが。まあ実戦で期待してるよ」
「んー・・美貴軍曹は二六○航空隊に所属しているんだな。まあ当分はラバウル航空隊内で生活するだろうし。教官として出来るかな?」
「お言葉ですがそれは無理です」
とキッパリ断っておいた。