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第一章 4

ドン!ゴン!と車体が跳ねるたびに、狭い山道の不安定さが身に響く。舗装もされていない道を抜けると、闇の向こうに巨大な影が立ち上がった。

おぼろがおかホテル。

かつては一流の宿泊施設だったはずの建物は、今や廃墟として、心霊ホテルの名を欲しいままにしている。


タクシーの運転手は、目的地を告げたときから訝しげな目をしていた。

「……もうすぐ着きますよ」

低くつぶやいた声に促され、窓の外を見ると、闇に沈む山肌から縦長の洋館がじわじわと姿を現す。

息をのんだ瞬間、タクシーは止まった。


「着いたか……」

心の中でそうつぶやき、料金を支払い、重い足取りで車を降りる。


「おーい! イケメン!」

左手から軽薄な声が飛んできた。寿だった。

白い歯を輝かせ、長い自撮り棒の先のスマホをこちらに向けている。

「見ろよみんな!久々の同級生、桐島だ!な?イケメンだろ?」

カメラの向こうのリスナーに得意げに紹介しているらしい。


「ひ、ひさしぶり……桐島くん」

後ろから声がして振り返ると、柏がいた。丸みを帯びた体格に、怯えたような笑みを浮かべている。


「ちょっと。久しぶりじゃない、桐島くん」

落ち着いた声に振り向くと、そこには桜井が立っていた。凛とした瞳が、不安を隠すように揺れている。

「止めようって言ったの。寿に何度も。でも聞く耳持たなくて」


「聞こえてるぞ~桜井さーん」

寿が間に割り込み、紙をひらひらと掲げて見せる。取材証明書だった。

「安心しろって。ちゃんと自治体から許可も取ってるんだよ~」


「自治体? 普通は管理人じゃないのか……?」

柏がつぶやいた瞬間、寿の目がスマホ画面に釘付けになる。

「おいおい、マジかよ……今、二階の窓に人影が映ったって?」


「人影?」

桜井が息をのむ。だが、その声音は驚愕というより、半信半疑の苛立ちに近かった。


寿は引きつった笑顔で声を張り上げた。

「ま、まあ……とにかく許可は取ってるし! 入るぞ!」

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