第一章 3
地元に戻るのは二か月ぶりだった。大学進学、そして――あいつの死。
理由はどうあれ、とにかく地元から逃げたかった。そう頭の中でつぶやきながら、俺はスーツケースに荷物を詰め込む。
一息ついてスマホを取り出し、いつものようにSNSを開いた。
どうでもいいニュース、くだらないゴシップ。目に入るだけで粘膜に染み込むように不快感が広がる。
そんな中、画面上に「寿が配信を始めました」という通知が跳ねた。
背中にぞわりと寒気が走る。この感覚――嫌いじゃない。
画面の中で寿が笑顔を作っていた。
「ついに、今回噂されてる“心霊ホテル”に参加するメンバーが決まりました! なんと全員、俺の同級生!」
わざとらしく肩をすくめてから続ける。
「実はこのホテル、俺の同級生の父親が経営してたんですよ~。でもその父親は倒産して……その同級生は、自分で命を絶っちゃったんです。同じホテルから飛び降りてね」
寿は身震いして見せた。
俺の背筋にも同じ震えが走る。
「だからこそ、同級生を集めて行くほうが絶対に盛り上がると思ったんです! 撮影機材は親に頼んだらすぐ揃えてくれました! さすがパパ! しかもこのホテルの逸話も全部パパ情報なんですよ~」
流暢に、楽しそうに語る寿。
その姿を見て、思わず俺はクスッと笑ってしまった。
危険な同窓会になるのは分かっていた。正直、行きたくはなかった。
それでも――彼の死をきっかけに途絶えていた同級生たちに会える。
そう思うと、ほんの少し胸が高鳴った。
俺はスーツケースのジッパーを閉めた。
向かおう。――おぼろがおかホテルへ。




