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第二章4-2

お金持ちが転校してきた――。

その日、学校中がざわついていたのを今でも覚えている。短髪で白い肌、白い歯を見せる笑顔。中性的な顔立ちで、誰が見てもモテそうだと、転校初日の寿を見て私は思った。


けれど、最初はそれだけで、特に気にも留めなかった。私はいつも通り桐島や榊原と話をしていた。……ただ、その頃の榊原には、ふと何処かに心を置いてきたような、そんな気配を感じていた。でも、私の勘違いだろうとやり過ごした。


寿家が不動産業を営んでいることは、すぐ後になって知った。

榊原家が開発した観光業に目をつけ、この街に引っ越してきたらしい。要は、寿家と榊原家の戦いになる――。そのときの私は単純に考えていた。代々この街を支えてきた名家・榊原家が勝つに決まっていると。


だが現実は逆だった。寿家はAIを駆使した新興不動産業で、榊原家のシェアをどんどん奪っていった。


そこから私達の関係は大きく変わった。特に悠真の立場は。

寿は学校で一気に人気者になり、悠真は「二番手」にされてしまった。それどころか「昔の金持ちの坊っちゃん」と陰口まで叩かれる。陰口どころか、本人に聞こえるように言う者までいた。SNSには悠真をネタにした投稿が出回り、私も桐島も居心地の悪さを覚えた。


それでも私は、友達であることに変わりはないと思っていた。


――ある日。榊原家は倒産した。

あまりにも突然で、あっけなかった。私は母から聞かされ、耳を疑った。


学校へ行くと、教室の壁にもたれて寿が取り巻き五人ほどを従え、ニヤニヤ笑っていた。

榊原はその日、机に突っ伏していた。私は一目散に榊原の元へ向かい、倒産のことには触れず、当たり障りのない話を大げさに振ってみせた。榊原は「そうだね」と優しく相槌を打つだけだった。その日、桐島は学校を休んでいた。


それ以来、榊原は昼休みになると教室を出て、一人で弁当を食べるようになった。居心地が悪いのだろう、と私は思った。


「また、ひとり飯か?」

ある昼休み。榊原がお弁当を持って教室を出ようとしたとき、寿がそう言った。


私は振り返り、その光景を見ているだけで、何もできなかった。


「桐島も何か言ってやれよ」

寿は椅子に腰掛け、弁当を広げながら桐島に話しかけた。だが、桐島は以前から私達と距離を置いていた。


沈黙のあと、桐島は短く言った。


「惨めだな。」


その一言を聞いた瞬間、私は胸の奥で何かが崩れ落ちるのを感じた。


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