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第二章2-1

ガチャガチャ。ガチャガチャ。

もう何十回も聞いた音だ。


桜井が出て行こうとしてノブを握り、必死に回すたびに、その音がホテルのロビーに響き渡る。

まるで「誰かに完全に閉じ込められた」ことを告げる合図のようだった。


「さ、さ、桜井さん。もう……開かないよ」

柏が申し訳なさそうに、小声で問いかける。


寿は白い肌をさらに蒼白にさせ、この現状に怯んでいるようだった。


やがて桜井はガチャガチャをやめ、無言のまま俺たちの方へ戻ってきた。

俺は何を言えばいいか分からず、一瞬ニコッと微笑むだけで誤魔化した。


「状況を整理すると――このホテルから出るには榊原を殺した犯人を特定しなきゃならない。そして、俺たち以外の誰かがこのホテルにいる。そういうことだな?」

できるだけ冷静に、特に桜井に落ち着いてもらうよう優しい声で言った。


「誰が閉じ込めたんだろ? なあ、最初に玄関を開けたのは寿だよな? 鍵とか持ってないの?」柏が尋ねる。


「持ってない。許可取りのときに“当日は玄関は開けてある”って聞かされてたから」

寿は、ただの少年に戻ったみたいにか細い声で答えた。


桜井は細い体を投げ出すように椅子へ腰を下ろす。

それを横目で見ながら俺は言った。

「その許可取りしたスタッフとは……連絡取れないのか?」


寿は少し間を置いて、「やってみる」と、聞こえるか聞こえないかの声で言った。

そして配信用のスマホではなく、ポケットから別のスマホを取り出す。


「……いや、なんだこれ」

寿は画面を見つめながらそう呟いた。


「どうした?」

俺が問うと、寿はスマホをこちらに見せた。


「圏外だ」


その一言に、全員が慌てて自分のスマホを取り出す。

俺のも、桜井のも、画面には同じように“圏外”の文字。


「どういうこと……?」桜井も不安そうに呟く。


「なのに、どうして配信はできてるんだ?」

机に置かれた寿の配信用スマホを見やると、コメント欄は相変わらず忙しなく流れていた。


寿はもうそれどころではなさそうだった。

この逃げられない状況。榊原の死。不可解な手紙。

いつもの腹立たしい寿の姿は消え去り、そこにいるのはただ怯えた少年だった。


――これが寿の本当の姿だ。

俺は心の中で薄く笑った。

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