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第91話 本当にそれはそう

 注文した品が運ばれてきたことで、仕切り直すように生徒会長が昔の話を語り始めた。


「お母さんは昔から厳しい人でね。私は昔から厳しくしつけられていたわ」


 そう前置きすると、生徒会長は昔話を始める。


「欠点のない自慢の娘でいなければ怒られる。だから私は必死に頑張った。勉強もやりたくない習い事も、常にお母さんの望む結果を出してきた」


 一瞬、目を伏せると生徒会長は続ける。


「でもね、凜桜ちゃんはそうはいかなかった」

「リラは不器用ですもんね」

「ええ、望む結果を出せない凜桜ちゃんはずっとお母さんに怒られてばかり……だから、一度テストを白紙で出して、習い事をサボったときがあったの」


 妹の心を守るため、自分という高いハードルを下げるための行動。

 それは生徒会長にとって最初の親への反抗だったのだろう。


「その結果、怒られたのは私じゃなくて凜桜ちゃんだった」

「どうして?」


 行動したのは生徒会長だ。越後さんに頼まれたわけでもないのに、どうして越後さんが怒られなければいけないのだろうか。


「凜桜ちゃんの出来が悪いから私に悪影響が出た。お母さんはそう考えたみたいね」

「それは……」


 怒られた当時の越後さんは何を思ったのだろうか。

 謂われのないことで怒られることほど腹立たしいものはない。それが幼い頃の出来事なら尚更のことだろう。


「だからね。もう私は詰んでるの。少しでも私がボロを出せば凜桜ちゃんが酷い目に遭う。たとえ、自分が完璧な振る舞いをすることで凜桜ちゃんを苦しめるとしてもね」


 それじゃあ、まるで人質を取られているようなものだ。

 生徒会長は越後さんを大切に思って行動しているのに、嫌われることしかできないなんてあんまりだ。


「でも、リラもお姉さんが自分を助けてくれていることはどこかで理解していると思いますよ」

「え?」

「じゃなきゃ昔もらったヘアバンドを使い続けたりしないですから」


 英さんは確信めいたように告げる。


「口ではいろいろ言ってますけど、きっと感情の部分で納得ができていないから嫌うことしかできないんだと思います」


 その言葉には実感が籠もっていた。

 もしかして、お父さんである雄一さんのことを思い浮かべているのだろうか。


「ありがとう。あなたみたいな子が小学校のときに凜桜ちゃんの傍にいれば何か変わってたのかもしれなわ」

「それはないです。リラとはいろいろあって本音を曝け出せたから親友になれただけですから」


 苦笑すると、英さんは僕に視線を向ける。


「きっと、あたしだって白君がいなかったらリラをいじめてた連中と大して変わってなかったと思います」

「そんなこと……」

「あるんです」


 それは未来の一端を知っているからこその言葉だった。

 未だに越後さんとの出来事は英さんの心を蝕んでいるようだ。


「そ、そういえば、妹さんって背が高いですけどあのタッパでいじめられるってなかなかないですよね!」


 変な空気になりそうだったため、慌てて話題を逸らす。


「名前のことね。あれはお母さんが離婚したことがきっかけだったの」

「えっ」


 越後さんのご両親って離婚してたのか。全然知らなかった。


「だって普通に考えてみて。そのまま読むと〝えちごりら〟ってなる名前を娘に付けると思う?」


「「いや、本当にそれはそう」」


 僕と英さんは口を揃えて同意せざるを得なかった。


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