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第85話 ただの確認作業

 程なくしてアッサムのロイヤルミルクティーとキャンディーのストレートティーが運ばれてきた。


「うまっ……!」


 一口飲んでみると、濃厚な甘味が舌の上に広がり、満足感を与えてくれる。

 ここの喫茶店は要チェックだな。


「おー、ここの喫茶店は要チェックだねー」


 吉祥院さんが僕が考えていたこととまったく同じことを口にしていた。意外とこの人、怖いけど気が合うのかもしれない。


「それで、相談についてなんだけどさ」


 紅茶に舌鼓を打ちながら本題を切り出す。


「女子ってどんな告白されたら喜ぶと思う?」

「んー、別に告白自体にそこまでのパワーはないと思うよー」


 特に相談内容に驚いた様子もなく、吉祥院さんは淡々と答える。


「でも、ほら。やっぱり理想のシチュエーションとかあったりするもんじゃない?」


 告白に場所とタイミングは重要だ。

 オシャレなレストランで告白とか、夏なら花火大会とか、思いつくシチュエーションはいくらでもある。


「あのさ、シロ君。告白を一発逆転の一手とでか思ってなーい?」


 僕の言葉に、吉祥院さんはカップをソーサーにおいて深いため息をつく。


「告白ってのは、ただの確認作業。お互いに好きって気持ちがわかってるならとっととした方がいいよ」

「へ?」

「シロ君はくゆちゃんが好きだし、くゆちゃんがシロ君を好きなこともわかってる。それなのに立ち止まってる。そんなとこでしょ?」

「吉祥院さん、君は……」


 どこまで知っているんだ。そんな言葉を飲み込む。


 きっと彼女は知っていて踏み込まないようにしていてくれたのだ。周囲が囃し立てた結果、両想いだったのにうまくいかなかった恋愛の例は往々にして存在する。

 鋭い吉祥院さんのことだ。そう言ったことも加味して適切な距離から見守ってくれていたのだろう。


「ま、せっかくだから思い出に残る告白にしたいってのはわかるけどねー」


 吉祥院さんはどこか楽し気に笑っていた。


「ちなみに吉祥院さんはどんな告白された?」

「告白ならされたことあるけど、どれも私的にはなしかなー。あっ、でも」


 そこで言葉を区切ると、吉祥院さんは思い出したように告げる。


「パパとママの付き合ったときの話は好きだったなー」

「ご両親の?」

「うん、花火見ながら告白されたんだってさ。特等席で告白されたんだってママがよく言ってた」


 吉祥院さんって金持ちだし、特等席っていうと有料エリアか。大体ああいうのは権力者や金持ちが抑えてるイメージあるもんなぁ。


「あくまで参考程度にね。パパとママの時代の話だからさー」

「だね。でも、ありがとう」


 話を聞いてもらって気が楽になった。

 これで気負うことなく告白ができる。


「じゃ、告白頑張ってねー。紅茶のおかわりお願いしまーす」


 相談はこれで終わりだとばかりに吉祥院さんは近くにいた店員を呼ぶ。


「ただいま――あ」


 そこには見知った顔がいた。


「英、さん?」


 喫茶店の制服に身を包んだ英さんが顔を引き攣らせて伝票を握り潰していた。


 そういえば、英さん喫茶店でバイトしてるって言ってたなぁ……。


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お馬鹿な男やね(笑)
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