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第70話 身体が覚えている

 ノーパン事件の日より、モモによる英さんの好意暴露や色仕掛けの日々が始まった。

 なまじっかモモが未来の英さん本人のせいで、僕の穏やかな日々は崩れつつあった。

 英さんの肉体で悪戯することはノーパン事件のとき以来なくなったが、本人が教室内で見えないのをいいことにスカートを捲り上げたり、英さんと並んだ状態で服を脱ぎだしたり、恥も外聞もない行動に出始めたのだ。


「マジで勘弁してくれ……」

「シロ君、大丈夫ー?」


 もう何も見ないようにと机に突っ伏していると、吉祥院さんが話しかけてきた。


「ああ、うん。ちょっとね」

「目の下のクマ凄いことになってるよ」

「最近寝れなくてさ」


 原因は言わずもがなモモである。

 目を閉じれば思い浮かぶのは英さんのあられもない姿ばかり。あの淫乱ピンクは僕の煩悩を刺激して英さんへの告白を催促しているようなのだが、それはむしろ逆効果と言っていいだろう。

 僕の気持ちは恋愛感情であり、性欲ではないのだ。

 その辺を曖昧にしたまま英さんへ告白することなんて絶対にできない。


「大変そだねー」

「ははは、まあね……」

「不眠症なら運動してみるのはどうかな?」


 そういえばクロが成仏して以来、あまり運動はしていなかった。

 せっかく、クロが寝ている間に身体を動かして鍛えてくれていたのだ。これからは自分で運動する習慣をつけていかなくてはいけないだろう。


 英さんはバイト、越後さんは部活。ちょうど、時間は空いている。

 そして、同じグループといえど、繋がりの希薄な吉祥院さんを誘うという選択肢は存在しない。


 結局、無難に近所のバスケットゴールのある公園でバスケをすることにした。

 この前の越後さんの試合の熱に当てられたというのもある。

 幸い、家にはちょうど使い古されたバスケットボールがあった。

 おそらく、僕が寝ている間にクロが使っていたものだろう。


「よっと」


 不思議な感覚だ。

 僕の意識ではあまりバスケをした記憶はないのだが、ドリブルをしていると自然と身体が動く。これが身体が覚えているという感覚なのだろうか。

 それから無我夢中でシュート練習を続けた。

 意外と無心で身体を動かすのは悪くない。溜まっていた邪念が振り払われていく気分だ。


「おっ、スリーポイント入った」


 試しにスリーポイントシュートを撃ってみたらボールは綺麗にゴールリングに吸い込まれていった。

 汗を拭って満足感に浸っていると、不意に拍手の音が聞こえた。


「やるじゃん、後輩君?」


 そこには学校の先輩らしき男子生徒が立っていた。ネクタイの色からして二年生だろうか。

 先輩は人差し指でボールを回転させながら問いかける。


「バスケ部じゃ見ねぇ顔だけど、うちの一年であってるよな?」


 どうやらバスケ部の人だったようだ。


「はい、一年生です。バスケは、何ていうか……趣味ですね」

「それにしちゃ、男バスの一年顔負けのうまさだけどな」

「あはは、恐縮です」


 お世辞でなく本心からそう感じてもらえたのだとすれば、それはクロのおかげだろうな。


「それより、先輩はどうしてここに? バスケ部ってまだ練習ありますよね」


 越後さんの所属している女バスほどじゃないにしても、男バスも遅くまで練習をしていた記憶がある。


「あー、今日はサボった」

「い、いいんですか?」

「いーの、いーの。男バスが不甲斐ない分は女バスが頑張ってくれるから」

「理由になってないと思いますけど」

「硬ぇこと言うなよ。真面目君か」


 僕の肩にポンと手を置いた先輩は快活に笑った。

 何だろう、この人とのやり取りにどこか既視感を覚える。


「それよりどうだ? 俺と1on1やろうぜ」

「いいですね。正直、今日はぶっ倒れるくらい身体動かしたい気分だったんです」

「そう来なくちゃな!」


 先輩との1on1は時間を忘れて夢中になるくらい楽しかった。

 久々に桃色の煩悩から解放され、青色の爽やかな時間を楽しめたおかげで、その日はぐっすり眠ることができた。


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