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第68話 感癖美少女

 会話を続けていると、いつの間にか学校に到着していた。


「もう切るね」

『ええ、また肉体に戻ったら話ましょ』


 一旦、英さんとの会話を切り上げる。

 下駄箱で上履きに履き替えて教室へ向かうと、そこにはクラスメイト達と談笑する英さんの姿があった。

 特に変わった様子はなさそうだし、モモはうまくやっているようだ。


「ツクモ、はよー」

「越後さん、おはよう」


 机に鞄を置くと、髪を結っていない越後さんが声をかけてきた。

 朝練を終えたばかりなのか、越後さんの髪は湿っていた。さすがは未来の日本代表。今日も今日とてバスケ一筋のようだ。


「あのさ、ちょっといい?」


 小声になった越後さんが神妙な面持ちで僕を見る。


「どうしたの?」

「何かクユリが変なんだよ」


 変、という言葉を聞いて僕と隣にいた英さんに緊張が走る。


「変ってどう変なの?」

「なんて言うか、こう……クユリだけど、クユリじゃないみたいな」


 チラチラとクラスメイト達と談笑しているモモへ視線を向けながら越後さんは核心に迫る発言をした。

 やばい、越後さんの野生の勘をなめていた。

 越後さんは英さんとモモのズレを直感的に感じ取っていた。


『まずいわ。凛桜って思ったより鋭いのよね』


 英さんが僕の横で呟く。おい、口角上がってるぞ。

 まずいと言いつつも、友達が自分のことを理解してくれている嬉しさが勝っているみたいだった。


「いつもは隙が無い感じなんだけど、今日のクユリは人前なのにちょっと隙があるっていうか……人間味がある、みたいな?」

『に、人間味……』


 さりげなくショックを受けている霊体の英さんは置いておいて、越後さんの言葉には納得できるものがあった。

 普段の英さんは完璧美少女という言葉を体現したような存在だ。

 細かな変化は絶対に見逃さないし、相手の嫌なことは絶対にしないし言わない。

 減点する箇所が全くない普段の彼女を見れば、人間味が感じられないのも無理はないだろう。


 おそらく、モモはそこに〝隙を見せることによる親しみやすさ〟を加えたのだろう。

 十四年の時を経て、完璧美少女はさらなる進化を遂げていたというわけだ。


「あと、大人っぽいってか何かエロい」

『エッ……!?』


 まさかの発言に英さんは、僕の横で顔を真っ赤にしながら口をパクパクとさせていた。


「それは、アレ? 色気とかそういう感じのやつ?」

「そうそう、吐息とか表情とか!」


 越後さんの言葉を受け、視線をモモへと向けてみる。


「ああ、あれは学校でしちゃダメな顔だ」


 頬を少しだけ紅潮させ、どこか恥ずかし気に女子と話しているモモは越後さんの言う通り大人の色気が滲み出ていた。

 周囲の男子なんてごくりと生唾を飲み込んでいる始末である。


「英さん、おはよう。ちょっといいかな?」

「あっ、おはよう白君。うん、大丈夫だよ」


 モモに声をかけて教室の外へと連れ出す。密談をするなら……クロとよく話をしていた階段上の物置のような場所でいいだろう。

 一応周りに人はいないが、モモはスカートを履いている。

 クロの見様見真似になってしまうが、こういうときは僕が下からガードした方がいいだろう。


「ん?」


 そこである違和感に気がついた。


「ん!?」


 本来ならば、そこにあるべきものがない。

 段差のせいで少しだけ見えてしまった太ももの付け根。

 とにかく普段は隠されているはずの場所がフルオープンになっていたのだ。


 要するに、モモは《《はいてない》》状態だった。


 やっぱり英さんって肌綺麗だなぁ、と現実逃避しようにも無理があった。履いてないのはモモの意思だろうけど、肉体は英さんのもの。モモの桃というか、英さんの桃というべきか。

 まずい、思考が桃色に染まっていく……!


 僕の隣にいた英さんもそのことに気がついたのか、とんでもない形相になっていた。


『どういうつもりよ!』


 開口一番、英さんは般若のような表情でモモへと詰め寄る。


「どういうつもりって?」

『何でパンツ履いてないのよ!?』


 英さんの叫び声はもうほとんど悲鳴に近かった。

 無理もない、自分の体で下着を着けずに学校に登校されるなんて何の嫌がらせだ。


「癖ぇ☆」

「てへ、みたいに言うな」


 完璧美少女は十四年の時を経て、感癖美少女になっていた。


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