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第63話 最期の発情期

 英さんの肉体から飛び出してきたモモを見て僕は言葉を失っていた。


「やっぱりいかがわしい配信を……」

『違う、これは趣味!』

「もっとダメでしょ」


 高校時代の制服に身を包む三十歳配信者。言葉だけでもかなりのキツさである。


「えっと、白君? 三十歳のあたしってどんな感じなの」


 やはりモモが見えていない英さんは怪訝な表情を浮かべながら尋ねてくる。世の中、知らない方が幸せなこともあるだろうけど、ここは素直に伝えておこう。


「高校時代の制服を着てる」

「ん?」


 固まった笑顔のまま英さんがこちらに顔を向ける。


「ん!?」


 そして、見事に綺麗な二度見をした。よっぽど僕の発言が信じられなかったらしい。


「あと、だいぶパツパツの状態だよ」

「知りたくなかった……」

「ちなみに趣味らしい」

「死体蹴りやめてくれる!?」


 英さんは頭を抱えて悶えていた。


「えっと、クロが見せてきた未来のときよりはマシ、かもしれないよ?」

「フォローするなら最後まで頑張ってよ……」


 コンカフェ嬢の英さんはコスプレだったからキツかったが、モモに関しては高校時代の自分のものだから――いや、尚更キツイな。


「いや、就職しないで稼いでるって点は希望があるわ。うん、きっと未来は明るいはず!」

「明るかったらこの時代に来てないんじゃ」

「黙らっしゃい」


 キッと僕を睨みつけると、英さんはモモがいるであろう虚空に視線を向ける。

 見えていないはずなのに、僕の視線から場所を特定したのだろう。ドンピシャで位置を当てている。相変わらずバケモノクラスの観察力だ。


「どうしてあたしは三十歳で亡くなったの」


 それは僕が無意識の内に避けていた質問。

 未来でまた英さんが亡くなってしまった原因。英さんとしても、気になるところではあるのだろう。

 クロのときは英さんが自殺を図ったことによるショックで、ふらふらと外を歩いてトラックに跳ねられたことが死因だった。

 一体、英さんはどんな死因で亡くなってしまったのだろうか。


『えー、あー……うーん』


 英さんの質問に対して、モモは言いづらそうに口をもごもごと動かしていた。


「もしかして、覚えてないとか?」

『いや、ちゃんと覚えてるわ。覚えてるから問題というか』


 どう言ったものか、と思案しているようなモモの態度に緊張が走る。よっぽど凄惨な死に方をしたのだろうか。

 しばしの沈黙の後、意を決したようにモモが口を開く。


『高校のときの制服着て、その一人で……するのにハマっちゃってね。イッた後にボーッとしてたせいで、床に転がってたビールの缶踏んずけて転んじゃってさー……』


 嘘だろ、おい。嘘だと言ってくれ。お願いだから……嘘だと言ってくれ!


「ち、ちなみに、するって何を?」

『何をって、ナニよ』

「はあぁぁぁぁぁ…………」


 あまりにも、しょーもな死が過ぎる。

 いや、亡くなった本人の前でこんなことを言うべきではないのだろうけど。


「よくもまあ、それを僕に言えたよね?」


 好きな相手に死因は〝|最期の発情期《ファイナルファンタ自慰》〟だなんて普通言うか? 配信者のメンタルどうなってんだ。


『い、いやぁ、もういっそ包み隠さない方がいいかと思ってさ』


 完璧美少女がどう暗黒進化したらこんな残念なことになってしまうのだろうか。


「白君、あたしの死因なんだって?」


 そして、真実を知らない英さんはのんきなものである。


「ダメだ。この事実を伝えるのは残酷過ぎる」

「どんな凄惨な死に方したの!?」

「凄惨というか、性散というか……」


 結局、いつまでも誤魔化す訳にもいかず、正直に真実を伝えたら英さんは文字通り口から魂を吐き出して気絶した。


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