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第41話 ちゃんと見ていない

 英さんの帰宅後、早速僕は要望に応えるべく東京にある有名な遊園地や映画館など、色んな施設をネットで調べてみた。


『おー、おー、しっかりデートの下調べとは感心だな』


 横から画面を覗き込んでいたクロがニヤついた表情で言う。


「デートって……そんな大層なものじゃないでしょ」


 英さんはデートと行っていたが、あれは方便のようなもので実際はただどこかへ遊びに出掛けたいだけだろう。


『バッカお前、男女で一緒に遊びに出かけることは世間一般的にデートっつうんだよ』


 そう言われて見ると、これは歴としたデートになるのかもしれない。

 その事実に気がついた途端、僕の背中に冷や汗が流れ始める。


「待って、あの英さんとのデートって相当ハードル高いんじゃ……」


 そもそも、英さんほどの美人と一緒に出歩くというだけでかなりの注目が集まることになる。それはつまり、僕が彼女に釣り合っていないことが周りから見ても分かるということでもある。


 そして、英さんはデートをご所望だ。気を抜いていていい僕の部屋にいるときとはわけが違う。彼女の望むデートが出来なければ、英さんの息抜きにもならないだろう。

 だからこそ、今回のデートで失敗するようなことは絶対に出来ない。

 頭を悩ませている僕を見かねたのか、クロが知ったような口調で言った。


『よーし、ここは俺に任せろ。俺は何度も紅百合とデートしてきたんだ』


 得意気な顔で語るクロに苛立ちを覚える。なんだろう、英さんとはただの肉体関係だったという癖に、こいつはやたらと英さんのことを熟知しているかのような口ぶりだった。

 僕には女性経験がないし、実際に二人がどのような関係だったかはわからない。


 それでも僕には、クロが英さんをちゃんと見ていないように思えてしょうがなかった。

 クロは現在の英さんを通して、未来の英さんを見ているだけ。そんな気がしたのだ。

 そんな僕の心境を知ってか知らずか、クロは鼻歌交じりに話を続ける。


『安心しろ、あいつの好みも全部把握済みだ』

「未来の、英さんの好みだろ」


 つい口を衝いてそんな言葉が飛び出してきた。

 しまった。これじゃあ僕がクロに嫉妬しているみたいじゃないか。

 揶揄われるのを覚悟して身構えていたが、いつまで経っても憎たらしい声が飛んでくる様子はなかった。


「クロ?」


 不審に思って見てみると、そこには唖然としながら硬直するクロの姿があった。いつものへらへらした態度からは想像できないその姿に、僕も驚いて固まってしまった。


『……そうだな。だが、好みの傾向は高校生の頃から大して変わってねぇだろ』


 僕の呼びかけで再起動したらしいクロは誤魔化すように告げると、そのまま壁の向こうへと消えていった。


『ま、せっかくの初デートなんだ。自分で考えて悩むのも乙ってもんだぞ』


 壁の向こうから聞こえてきたアドバイス。クロがどんな気持ちでそれを言っていたのかは窺い知ることができなかった。


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