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第26話 余計なお世話をしに行くんだよ

 階段上の物置のような場所に着くと、僕はなりふり構わず叫んだ。


「クロ! いるんだろ、おい!」

『どうした。お前から俺を呼ぶなんて珍しいこともあるもんだな』


 昼休みは出てこなかったというのに、クロは僕から呼びかけたらあっさり現れた。

 僕は大きく深呼吸をし、クロに尋ねる。


「英さんの冤罪事件、たぶん今日なんだ!」

『ほー、そいつは大変だな』


 他人事のように言うクロに僕は苛立ちを覚えるが、今は情報を手に入れることが先決だ。


「……事件のこと、教えてくれないか」

『知ってどうするよ。どうせ事件は紅百合が一人でうまく解決するってのに』


 確かにそうなるかもしれない。英さんのことだ。うまく自分の無実を証明するだろう。

 だけど、それは果たして解決したと言えるのだろうか。


「濡れ衣を着せられたとき、英さんはクラスのみんなに疑われたのか?」

『一瞬な。アリバイとか状況証拠とかはあったから紅百合がカウンターパンチかますまではクラスメイトも疑ったって言ってたぞ』

「その話をしていたときの英さんって笑ってた?」

『あー、笑ってたぞ。酒の席のバカ話だしな』


 鼻の頭を掻きながら、クロは当時のことを思い出しながら答える。


「その笑顔ってさ。何かを諦めたような笑顔じゃなかった?」

『何が言いたい』


 僕の言葉の意味が分からないとばかりに、クロは首を傾げる。

 英さんは周囲の人間に合わせて自分のキャラを作っている。素の英さんは一見、周りに流されない強い意志を持っているように見えるが、実際は周囲に合わせることでしか自分を保てない弱い人間なのだ。


「英さんって本当は寂しがり屋なんじゃない?」


 彼女が今の状況に甘んじているのは、周囲に合わせなければ居場所を失ってしまうという強迫観念があるからだ。

 取り繕った自分じゃなければ愛されない。そういう認識が彼女の中にあるのだろう。


『ああ、ドが付くほどの寂しがり屋だよ。その癖、誰にも心を許さないから結局自分で独りぼっちになってるんだけどな』

「自分を嫌う人間は排除する。自分が被害者になるように立ち回るからとことん嫌われる」


 そして、嫌われることによって傷ついていくという悪循環。それが英紅百合という女の子の歪んでしまった生き方だった。


「どうして英さんがそんな性格になったかは知らない。でも、このまま黙って見てることはできないよ」


 このまま越後さんが英さんに濡れ衣を着せ、財布を盗まれたと騒ぎ立てれば、待っているのは誰も幸せにならない未来だ。

 英さんは普段から尽くしているクラスメイトに疑われることで傷つき、越後さんはクラスでの居場所を失う。

 そのうえ、英さんは大人になっても同じことを繰り返すことになる。

 周囲も自分も傷つけ続ける人生を歩むことになるのだ。


『それでお前はどうしたいんだ?』


 いつものように楽し気な笑みを浮かべるクロに、僕は拳を握りしめて力強く宣言する。


「決まってるだろ。余計なお世話をしに行くんだよ」


 僕の胸の中にはモヤッとしたものがずっと居座っている。それが何なのかは自分でもよくわからないけど、この気持ちをそのままにしたらきっと後悔する。

 だから、英さんにどう思われようと、僕は僕が後悔しないように行動させてもらう。


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