表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/145

第108話 本当の未練

 口に手を当てて固まるモモを前に僕は慎重に言葉を選ぶ。


「どうして越後さんと筑間先輩の恋愛事情をどうにかする必要があるんだ」

『そりゃ親友の恋を応援したいからよ』


 親友として彼女の恋を応援したいという理由はわかる。


「嘘だね」


 だが、その理由で納得できるのは《《この時代の紅百合の場合》》だ。

 僕と恋愛できずに後悔しているような余裕のないモモがそんな殊勝なことを考えるだろうか。いや、考えるわけがない。


『そんな性格の悪い女に見える?』

「そんな性格の悪い女が僕は好きなわけだけど」


 モモがクロの残したノートを隠したのは何故か?

 モモが色仕掛けをしてでも僕と紅百合を高校生の内にくっつけようとしたのは何故か?

 モモが越後さんと筑間先輩を見ては悲しそうな表情を浮かべていたのは何故か?

 モモが越後さんと筑間先輩をくっつけたいと思っているのは何故か?


 覚悟を決めて、僕は尋ねた。


「越後さんって筑間先輩相手に失恋して僕に惚れるんじゃない?」

『未来が絡んでなけりゃとんでもない自惚れ発言よね』

「あり得ないとは思うけど、他の可能性を排除してった結果だよ」


 僕は誰かに好きになってもらえるような人間じゃないと思っていた。相も変わらずそんな自信はない。

 だけど、紅百合がそうだったように、越後さんもそうだったんじゃないかと考えてしまったのだ。


 越後さんの素を知っていて、バスケで切磋琢磨できる高校時代からの友人。

 僕が疎遠になった紅百合のことをどれだけ引きずっていたかわからないが、闇落ちせずに努力し続けている未来の僕と、家庭の事情にも負けずに夢に向かって努力し続けている越後さんはさぞや気が合ったことだろう。

 モモの行動や未来の情報をそこに加えてみれば、越後さんとそういう関係になっていることも考えられなくはない。


「少なくとも疎遠になった人気配信者とくっつく未来よりは現実的じゃない?」

『はぁ…………』


 モモは言葉を探すように視線を動かし、それから諦めたように口を開いた。


『白君は高校時代あたしに探偵やればって言ってたけど、その言葉そのまま返すわ』


 それは思ってたけど、まだ言ってなかったような気がする。


『わかった。全部話すわ』


 モモは諦めたようにため息をつくと、未来で起きた出来事の詳細を語りだした。


 僕が筑間先輩の事情をノートで知り、バスケ部に入って筑間先輩のバスケへの情熱を取り戻させようと必死になること。

 自分が配信者として人気が出始めた頃から距離を置かれ始めたということ。

 生徒会長がセクシー女優になったのは母親への復讐のためということ。

 筑間先輩と起業して僕が動画投稿者として人気者になるということ。

 越後さんの母親が廃人同然となった後、越後さんは父方の姓を名乗っているということ。


 そして、越後さんから紅百合が好きな人である僕を好きになってしまったと謝罪を受けたこと。


 そこから先は疎遠になってしまったからわからないとのことだった。


「じゃあ、モモの未練って……僕と付き合えなかったことじゃないのか」

『ふん、どんなにこっちのあたしが白君とイチャイチャしたところであたしは脳破壊されるだけよ。それに告白自体はこっちのあたしに憑依したあの日にしてるもの』


 確かに僕に告白できなかったことは未練の一つだった。

 でも、それに関してはモモの中で既に解決済みだったのだ。


『高校時代に白君とこっちのあたしが付き合えば、リラは友達を裏切ることに心を痛めなくて済んだのよ。だから無理矢理でも構わなかった。あたしはリラが苦しむ可能性を潰したかったのよ』


 母親からは出来損ないだと罵られ、姉とは確執があり、憧れの先輩には失恋する。

 それに加えてやっとできた親友の好きな人を好きになってしまった越後さんに対してモモは罪悪感を抱いていたのだ。


『あたしさえ、ちゃんとしていれば結果は変わった。結局、どうあがいてもあたしはリラを苦しませる存在だってわからされたわ』


 自嘲するように呟くと、これ以上話すことはないとばかりにモモはそのままその場から立ち去っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ