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第107話 失言

 どうしても確認したいことができた。

 ずっと頭の隅に引っかかっていたけど、ついぞ尋ねるまで行かなかったこと。


「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」


 それを確かめるため、僕は携帯をパカパカ開きながらトイレに向かう。

 僕の仕草だけで察したのか、紅百合は黙って頷いた。


『ラッシャイシティのときもこうしてクロと話してたの?』


 そして、トイレの前に来るとそこにはモモが待っていた。


「まあね」

『それで、白君が聞きたいことは何?』

「未来の話をするとき、やけに吉祥院さんの話題が出なかった」


 それは些細なこと。けれども、とても大切なことだった。


「未来で僕がバスケ部に入ったことがきっかけで筑間先輩と仲良くなったのはわかる。越後さんともより仲良くなったのだってわかる。配信者になった紅百合と疎遠になっちゃったのもわかる」


 物事には原因と結果がある。

 だからこそ、モモは自分にとって不都合な原因を取り除いていたはずだ。


「モモは吉祥院さんのこと、どれくらい覚えているんだ」


 吉祥院さんとだって疎遠になっていたはず。

 だというのに、モモはそれに対し一切のアクションを行っていなかった。

 紅百合の親友は確かに越後さんだ。そして、仲の良い友達は誰かと聞かれれば吉祥院さんだ。

 寂しがりの紅百合が吉祥院さんほどの子を切り捨てるとは考えられなかった。


『吉祥院さんと遊んだのは高校一年生のときだけよ。だから、今のあたしはあの子に対して仲の良い友達って感覚すら残ってないわ』

「なっ」


 疎遠になっていたとは思っていたが、たったの一年しか一緒にいなかったなんて……。


『……あたしだって本当は仲良くしたかったわよ』


 驚きに言葉を失っていると、モモはそんな僕から視線を外して語りだした。


『でも、あの子は急に学校に来なくなったの。何度もリラと一緒に家に行ったけど会いたくないって門前払い。保健室登校で学校に来てるときに一回見かけたけど、まるで別人みたいだったわ』

「どうして、そんなことに」

『あたしが聞きたいくらいよ。あたしと違ってリラが必死に話しかけてたけど、まるで知らない人と話してるみたいだったもの』


 モモは目を伏せると、陰りのある笑みを浮かべる。


『だから、あたしはあの子との未来は諦めたの。白君やリラと違って未来からでも原因がわからない以上、どうしようもないでしょ』

「それなら僕に初めから相談してくれれば良かったのに」


 それが何であるかまではわからないけど、吉祥院さんは何か大きな問題を抱えているに違いない。


『バカね。そんなことしたらこっちのあたしと恋愛に発展なんてしようもないでしょ。だたでさえ、リラとのごたごたがあるってのに』


 紅百合は効率よく優先順位をつけて物事を処理するきらいがある。

 それは彼女のいいところでもあり、悪いところでもあった。

 大人になったモモはそれがより顕著に出ていると思う。


『大切なのはまずこっちのあたしと白君が恋人になること。次にリラの恋愛事情をどうにかすること。その時点でもうキャパオーバーよ』


 モモは自嘲するように鼻を鳴らす。


「恋愛事情? 家庭の事情じゃなくて?」

「あっ」


 しまった、とばかりにモモは口に手を当てて固まった。


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