第1話:死んだ俺に与えられたスキルは「整理整頓」だった
「神崎さん、この仕様書、またお客様から修正依頼が来てます」
「え? 前回『これで確定』って……」
「お客様が『やっぱりこの機能も入れよう』って…… すみません。」
まただ。
要望の変更。期限はそのまま。
でも、やらなきゃいけない作業だけが、どんどん増えていく。
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俺の名前は神崎悠真、31歳。
IT企業でプロジェクトマネージャーをしている。
プロジェクトマネージャー。いわば、“仕事の調整役”だ。
チームの作業が遅れたらスケジュールを直し、
お客様から無茶な要求が来たら、間に入ってなんとか説得する。
それが俺の仕事だった。
でも──そんなの、毎日うまくいくわけがない。
どこかで誰かが怒り、どこかで誰かが疲れていく。
最後に全部を背負うのが、俺だった。
今日もオフィスには、俺と新人だけが残っていた。
「お客様第一」「現場に寄り添え」「納期は絶対」
その3つを全部守れ──と、誰もが当然のように言ってくる。
でも、それってつまり。
“誰かの無理を、全部ひとりで受け止めろ”ってことだろ?
そんな理不尽を背負い続けて、俺のメンタルは、きしんでいた。
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午前3時。
新人を帰宅させてオフィスでひとり、モニターを見つめていた。
目の焦点が合わない。心臓が激しく脈を打つ。
背中から嫌な汗が流れ、耳鳴りが止まらない。
「時間が足りない……もうやめてくれ…… これ以上、俺を追い詰めないでくれ……」
かすれた声が口から漏れる。
その瞬間、視界が暗くなり、俺は椅子から床に転げ落ちた。
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目が覚めたのは、真っ白な空間だった。
音も風もない、ただの「無」の世界。
「ふむ。目覚めたか、人間よ」
金色の瞳をした少女が宙に浮いている。
少女の姿をしているが、その存在感は明らかに人間ではない。
「よくぞここまで耐えた。その魂に報いるため、我はそなたに第二の人生を与えよう」
異世界転生、という言葉が頭をよぎる。
「そなたには、そなたの本質に応じたスキルを授けよう」
俺の本質……?
真面目に働き、人間関係を整え、壊れかけたプロジェクトを回してきた。
最後は使い潰されただけだが。
「授与:整理整頓(レベル1)」
【効果】物の配置を“わかりやすく”整えることができる
……は?
戦えない。治せない。役立たず。
最弱の整理整頓スキル。
「……マジかよ」
だが、このスキルが後に世界を変革することを——
このときの俺は、まだ知らなかった。
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