『第6回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品集
結婚にまったく興味がないのに卒業したら五人の中から結婚相手を選ばなくてはならないのですが
明日は王立魔法学院の卒業パーティだ。
私はこの国の第三王女、卒業と同時に結婚相手を決めなくてはならない。
本音を言えば結婚などしたくはないのだが、魔法の研究を続けるための条件なのだから仕方がない。
そもそも国のため勝手に嫁ぎ先を決められても文句は言えない立場なのだから選べるだけマシというもの。
用意されたお相手候補は五人。
名門伯爵家の嫡男で次期騎士団長有力とされるロイ
平民出身だが魔法の才能を見出され史上最年少で宮廷魔導士が内定しているカイ
侯爵家の嫡男で宰相の息子、学院一の秀才リオネル
異世界から召喚され魔王を倒した勇者ハヤト
そして――――幼馴染で公爵家の嫡男ラインハルト
五人全員同じ学院に通う同級生。当然面識はあるしある程度性格も把握はしている。
私はまったくこだわりは無いのだが、五人とも目鼻立ちは整っていて世間一般的にはいわゆるイケメンということになるだろう。秀でた能力もあって甲斐性もある。
そして――――物好きなことに私を妻にしたいと想ってくれている。
こんな魔法にしか興味が無い女のどこが良いのか理解に苦しむが、私が偉そうに言える立場ではないので深く追求するつもりは無い。
条件は申し分なく性格も良い。
互いにライバルと知りながら、誹謗中傷や足の引っ張り合いとは無縁の気高さも好ましい。
誰を選んでも幸せになれる可能性が高い。
私が誰を選ぶのか? 学院中で噂になっている。
明日の卒業パーティーは間違いなく注目の的になるだろう。
「私と結婚してくださるかしらラインハルト?」
会場が騒めく、選ばれなかったライバルたちは絶望しつつも惜しみない拍手を贈る。
学友たちからは祝福の言葉が雨のように降り注がれる。
しかし――――当の本人は選ばれたことに驚く風でもなく、ただ複雑そうな表情で苦笑いを浮かべるだけだった。
「まあ……こうなると思っていたからな」
さすが幼馴染だけある。私のやることなど想定内なのだろう。
「それで――――他の四人はどうだったんだ?」
「そうね……私には合わなかったかしら」
「だろうな……お前みたいな骨の髄まで研究者の変人と付き合えるのは俺くらいだと思うぞ」
「ふふ、でも本当に私で良いの? わりと酷いことしている自覚はあるのだけれど」
「はは、今更な質問だな、そんなお前に惚れちまったんだから仕方ない」
馬鹿な人……ね。
そんな貴方だから幸せになって欲しい。
そのために時を戻す魔法を使って四回も結婚を経験したのだから。
なろラジ参加作品第三弾です(*´▽`*)
ううーん、伝わるかな? 王女さまなりの不器用な誠実さが。文字数足りないから読者様の想像力に丸投げ(≧▽≦)