code・1
「ミライ行こうぜ!」
「早くいこ!ミライ!」
「ま、待ってよレクス、ハナちゃん!!」
これは今から1300年も前の話、今考えるととても不思議だけど人類は地上に住んでいたらしい。
その日、突如として現れた化け物、蟲獣に地上は支配された、その時代、人類は無力だった地中に潜ることでしか生きることができず人類は衰退し続けた。
その500年後、ついに人類はグローリアを発明した、グローリアとは蟲獣に対抗するために作られ、人が直接操作し奴らを倒す巨大兵器だ。
人よりはるかに大きいあの機体に乗ることは僕たち操縦士にとって憧れだ。
だって僕たちは、
そのために作られたのだから。
なあ見ろよミライ、ハナ!
あれがグローリア!!
すごい、あんな大っきいの...
すごくなんかないさ!だって俺達もいつか乗るんだからな!!
そうだね私達もいつかあれに乗って戦うんだから!!
僕も、僕たちもっ!!
そうだ!!俺たちで分隊を組もうぜ!!
え、私たちで?
ああ、俺とハナ、そしてミライで一緒に、戦おう!!
わぁぁ!うん、約束だよ!!
あの時は、希望に満ちていた...いや昨日まで、か。
「コード097適正なし」
「......え?」
その事実は、僕の夢を見事に打ち砕いた。
「何かの間違いです!!ミライ、097が適正なしなんてそんな訳ありません!!」
「そうです!あいつは昔からずっと頑張って来たんです!!」
僕がガーデンに来てからずっと一緒にいる幼馴染のレクスとハナちゃんが研究員のケンさんと話している。
「結果は変わらん、これが事実だ」
「で、でも」
「前期の模擬戦だってあいつがぶっちぎりで1位だったんですよ!!あいつは!!」
「レクスいいよ」
「ミライ!」
「...コード098、君が優秀なバーリアというのは聞いている、しかしこれが全てだ...残念だが君はグローリアを動かすことはできない」
「...」
「ケンさん!!」
「本当に何とかならないんですか!!」
「...無理だ」
「そん、な」
「う、そ」
「...」
適正なし、なんの適正と言うとグローリアの適正だ。
グローリアを動かすには人体の中のシェルド値が必要だ、それが多ければ多いほど強力なグローリアに乗れる、僕にはシェルド値が確認することが出来なかった。
僕はグローリアには、乗れない。
あれからどれだけたっただろう、レクスとハナはグローリアの適正が高かった、そのため2人とも最年少で専用機が渡されるって聞いた。
ふたりとは違って俺は何も変わっていなかった、せいぜいガーデンの施設の掃除を任されること程度か。
なんでここにいるのか、僕はここにいていいのか、2人はこんな自分をなんで見てくれるのか、つくづく分からない。
「あ、いたいた!ミライ、ちょっと付き合え!!」
「...分かった」
時々レクスは僕を連れて模擬戦を申し込んでくる。
僕はグローリアに乗れないのに。
「だぁクソやっぱ勝てねえなんでだ!?」
「レクスも強いよ...僕なんか...」
「あ、なんかなんて言うなって言ったろ俺!!」
「でも...」
「いつまでも俺たちは待ってんだよ、ずっとな」
「...」
「...そういやハナに呼ばれてなかったか?」
「...あ!そうだった!!」
ハナから演習が終わったらタオル持ってきてって言われてたんだった。
「ごめん!ハナ!!遅れちゃった」
「遅いよ!もうクロにもって来てもらっちゃったよ!」
「ごめん、本当にごめん!!」
「ん〜!!じゃあ明日私と一緒にグローリアに乗ろ!」
「え?グローリアに?それに明日って」
「うん!私たちの専用機が持ち込まれるんだって!!その専用機でプラント中走り回ろ!!」
「で、でも」
「拒否権な〜し、明日絶対ね!!」
「わ、分かったよハナ」
「うん!よろしくね!!」
「コード087、診察の時間だ」
「あ、はーい、それじゃあミライ!またね!!」
「あ、うん...またね」
ハナとそんな約束をしたあと、自室に向かう途中、いつも僕に突っかかってくる3人がいた。
「来たぞ、役に立たずの無能が」
「ほんと恥ずかしくないのかな!あいつのせいでトップスコアの二人がチームに入ってくれないのにさ!!」
「いっそここから居なくなればいいのにな!!」
「...」
「おい!どうなんだよ!!」
「いっ!?」
「お前のせいでレクスもハナもスクワッドに入れないんだよ!!」
「おい!何やってんだよ!!」
「...レクス、なぁもう俺たちのスクワッドに入ろうぜ」
「死んでも嫌だね...俺は、俺たちでスクワッドを組むって決めたんだ」
「スクワッドは最低3人いないと作れないんだぜ」
「俺とハナとミライで3人だ」
「グローリアに乗れないやつを数えるなよ!!」
「...」
「...グローリアに乗ってるかは重要じゃない」
「なに!?」
「グローリアに乗れなくてもできることはある、オペレーターや整備士とか、ミライには俺たちを援護する形で」
「そんなのバーリアとして育てられた俺たちにできるわけねぇだろ!!」
「こいつならできる!俺はそう信じてる」
「レクス...」
「...ちっ!!行こうぜ」
3人が部屋に戻ると同時に俺達も部屋に戻る、僕とレクスは昔から同じ部屋で色々言う事、聞く事がある。
「あ〜あ、せっかく今日はいい気分だった、てのにあいつらのせいで嫌な気分になっちまった」
「...」
「あいつらの言うこと聞くなよ」
「...でも」
「俺たちはお前の才能を信じてる、だから気にすんな」
「...ありがとう」
違うんだ、レクス。
僕は、僕は......。
翌日、レクスとハナの専用機授与が行われた。
「レクス、ハナ...」
会場にはレクスとハナそして僕たちと同じバーリアの候補生、レクスもハナもいつもより着飾っていて、なんだか恥ずかしそうだ。
「コード087」
「は、はい!!」
「コード107」
「はい!」
「君たちは優秀な成績を残しこの2体のグローリアを贈る、087には射撃特化型グローリア、スペルチィア、107には近接特化型グローリア、ブラストバイパー、この2機で人類の役に立つことを期待する」
スペルチィアは足や手そしてバックパックにも射撃兵装があり、射撃特化と言うにふさわしいグローリアだった。
ブラストバイパーはあまり特徴はなく、唯一バックパックには大きい大剣を二丁持っていた。
「すごいな2人とも...僕は...」
「そして2人にはガーデンから13プラントのバーリアに任命する」
「プラントのバーリア!?」「ガーデンから出るってこと?」「あの二人って13歳だよね!?」「普通は15歳じゃなきゃ行けないのに...」
「...そん、な」
プラントのバーリアになること、それは永久にそのプラントで戦うということだ、もしそうなってしまったら。
「もう、2人には会えない?」
「...誠に身勝手ですが、どうかもう1人13プラントに連れて行く事はできませんか」
「レクス...」
「連れていきたいものとはコード097の事か?」
「はい」
「...残念だが、彼には」
その時だった、突如プラント内大音声とともにが赤くなった。
「何が起きた!?」
「プラント内に蟲獣が侵入したそうです!!」
「え、蟲獣が?」「このプラントに!?」
「コード087並びに107、そして今ここにいる候補生も直ちにグローリアに乗り蟲獣を殲滅せよ!」
「「「は!!」」」
「お、おい!あれ!!」
「え?」
そこに居たのは化け物と呼ぶにはふさわしく、外見は細長く平で節がいくつもあるしっぽを持ち、そのしっぽの先端にはハサミのような物がある。
そんなのが数を生してこちらに襲ってくる、量は...多すぎる。
「くるっ!?」「く、来るな!!化け物!!」「いやぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
『させない!!』
蟲獣が生身の候補生を襲おうとした時、ハナとそのグローリアが庇う。
「ハナ!?」
『はぁぁぁ!!』
スペルチィアが二丁の銃を抜いて蟲獣に対して射撃する、蟲獣は一瞬で破壊した。
「すごい...」
『ミライ!!逃げて!!』
「え?」
あ
『ミライ!!』
...何が、起きたんだ!?
「う...あぁ」
頭が...痛い
「...ここは?」
暗くて...よく見えない、何だ?これ...大きい。
...誰かいる?
「その傷でよく動けるな」
「...だ、れ?」
「ワシは博士と呼ばれている」
「博士って!?」
確か博士って、あの!?
「は、博士ってグローリアの開発してる人?」
「そうだ」
「なんでここに?」
「こいつが、必要になると感じたからだ」
「これって!?」
暗いとこに慣れたのか暗闇のなかのそれを見て驚く。
「グローリア!?」
「そうだ、しかし訳ありでな...気になることが出来たからここに持ってきた」
「...」
「お前はコード098で合っているな」
「え?あ、はい」
「乗れ」
「...え?」
「乗れ」
「いや、でも」
「いいから乗れ」
「い、いや僕は....」
正直乗りたい...でも僕は動かせない。
今までずっとやってきた、何度も検査をした、勝手に人のグローリアに乗った、それでもダメだった。
「僕は....」
「乗らねば、人が死ぬぞ」
「!?」
爆音とともに人の叫び声が聞こえた、外に耳を向けると激しい戦闘音も聞こえる。
人が死ぬ...当たり前だ蟲獣との戦いはそんな簡単に倒せるものじゃない、大勢のグローリアで戦ってやっと倒せる、僕たちはまだ候補生だ、実戦なんかやったことない...そうだ、だから僕は。
「行きます」
「どこにだ」
「戦いに!!」
博士の顔が笑った気がした。
ハナ視点
『ハナ!!援護を!!』
「分かった!すぐ行く!!」
どうしよう、数が全然減らない。
さっきからずっと戦ってるのに...全然楽にならない!
「はぁ、はぁ」
『ハナ!大丈夫か!?』
「大丈夫、大丈夫だから...それよりみんなは?ミライは?」
『ミライはさっきC棟に向かってたのは見た、でも...』
「...」
さっき、蟲獣がミライに目掛けて飛んだ、その蟲獣は私が倒した、でも、ミライは...お願い、生きてて。
『えっとこれでどうしたら...』
「...え?」
『ミライ?なんで...』
通信から聞こえた声、それは間違いなくミライの声だった。
生きてたことにほっとしながら少し考える。
どうして通信ができるのか...C棟のオペレーター室にいるの?
『ミライ!無事か?』
『こう、か?いや、でもこれじゃ』
『ミライ?』
「もしかして聞こえてない?」
『なんだ?...!?ハナあれ!』
「え?」
レクスが示した方向を見ると、さっきまでの蟲獣とは違う、別の蟲獣がいた。
「な、何あれ」
『分からない、まるでおとぎ話に出てくる獅子みたいだ』
「私に任せて!」
スペルチィアの出力を上げ、あの蟲獣に追いつこうとする、でもどうやっても差が埋まらない。
「あの蟲獣、足が速い!?」
スペルチィアじゃ追いつかない!
「一体どこに行ってるの?」
『ハナ!あそこは!!』
「C棟?なんで!?」
おそらくC棟にはミライが居る、ダメだ、それだけは!!
「止まれぇぇぇぇぇぇ!!」
命懸けの全弾発射、無慈悲にも致命傷となる一撃は無かった。
「あ.......」
『C棟が...』
私たちは崩れてくC棟を見ることしか出来なかった、そんな時、確かに聞こえた。
『行こう、〈零式〉』
崩れたC棟の奥、ふたつの光が見えた。
次の瞬間C棟は完全に崩れた、でもあの蟲獣のせいじゃない。
『な、何だあれ』
「グローリア?」
そのグローリアは、純白でとても綺麗だった。