うれしはずかし能力測定ー乙女のはじらい「身体測定」
体育館は熱気に包まれている。
「さて、これから能力測定を行うザマス」
ジャージ姿のザマース教頭が宣言すると、一斉に拍手が沸き起こった。
「まずは、身体測定ザマス」
「身体測定!?」
夕莉は驚いた。いきなり何を言っているのか? と。
しかし、周りを見渡すと、他の生徒達は、なぜか喜んでいる様子である。特に男子たちだ。
「おい、おまえら、どうしたんだ!」
「いやーだって、楽しみじゃん。みんなのスリーサイズとか、胸のサイズとかさ!」
「いやいやいやいや! これは能力測定だよね! スリーサイズとか、そういうの、退魔士と関係ないんじゃないの?」
「あるザマス。身体測定は、乙女のはじらい。しっかりと測らせてもらうザマース」
「いいぞ! ザマス教頭!」
男女を別々に分けた区画で繰り広げられる身体測定。
まずは身長……
タヌキッ娘のタヌ、もふもふ妖狐の女の子、夕莉の僅差の争いで、一番のちびっ子はタヌキッ娘。
夕莉のドヤ顔に、ちびっ子タヌキは、涙目で悔しそう。
そして、柊木藍香の身長が大声で発表された。
「ちょちょ、なんで公表するのよ!」
柊木藍香の顔は真っ赤か!
「なぜって? それは、木陰ひな太との決着をつけるためザマス!」
教頭は、手に持つ評価表に何やら記入していく。
そして、仕切りの向こう側からの声が勝者を告げる。
「勝者、木陰ひな太!」
「オオオーーー!」
「やったな、ひな太ぁ!」
男子生徒たちの歓声!
「え? なに? どういうこと?」
柊木藍香の困惑をよそに身体測定は進んでいく。
体重測定。
タヌキッ娘、夕莉の順で測定が終了。
ここまで、タヌキッ娘が圧倒的。
強烈なドヤ顔で胸を張る。そこで強調される勝利の要因となった膨らみが二つ。
前例に従い、柊木藍香の体重が大声で発表された。
「だから、なんでなのよっ!」
そして、決まる、体重の勝者は、タヌキッ娘!
そして、ついに胸囲、バストサイズで、不破夕莉、タヌキッ娘、柊木藍香、木陰ひな太が争う。
「ちょっと待って! これも、わたしだけ、公表する気!」
柊木藍香も必死。なんなら、教頭と一戦を交える覚悟だって出来ている様子。
「当たり前ザマス。それがルールザマス」
教頭、引く気なし。
「でも、恥ずかしいし……」
採点表にペンを走らせ、教頭は眼鏡のレンズをキラーンとさせる。
「配慮はするザマス。ここは、四人全員の発表をするザマース!」
「ええええ!」
女子の抗議、これは「四人だけ」ということで教頭がおさめる。実際のところ、女生徒たちも木陰ひな太、そして、タヌキッ娘のバストサイズには興味をそそられる。
「オオオーーー!」
男子、ここにきて熱気が凄まじい!
一人目発表!
「タヌキッ娘、いぃー、Eサイズ!」
どよめく体育館。
「Fカップじゃないのぉ!」
「嘘だろ、タヌキッ娘のくせして!」
「あの、タヌキッ娘、ただ者じゃねえ!」
「この、ロリ巨乳めぇ!」
「次は誰なんだ!?」
「不破夕莉、えぇー、コホン、Aサイズです!」
「おお!」
「可愛いぞ! 不破ぁ!」
「そのサイズ、まさに完璧!」
「さすがは、不破さん!」
「素晴らしい! なんて、完璧な数値なんだ!」
「次は、柊木藍香!」
ゴクリ、生唾を飲む音。
教頭は、採点リストに何かを書き込む。
「ちょっと、やめなさいよっっっ!」
柊木藍香の叫び声!
そして……
「柊木藍香さん、びー、Bサイズでーす!」
「うおおお! さすがだぜ! 柊木!」
「やっぱり、スタイル抜群だよなぁ」
「もうっ、なんなのよ!」
最後に……
「木陰ひな太さん、ええ……、コホンコホン、トリプルAサイズ!」
「おおおーーー!」
男女の歓声が混じる。
そして……
「勝者、タヌキッ娘!」
「オオオーーー!」
「心配するな、大きさじゃないぞ!」
「不破ぁ! Aも最高だぞ!」
「柊木さんも!」
「もう、バッカじゃないの!!」
「何なんだよ……あいつら……」
不破夕莉のあきれ顔。
そして、タヌキッ娘は、どうだ! と言わんばかりに胸を張る。
「もうっ! あんたたち! 早く、上を着なさい!」
柊木藍香は、タヌキッ娘と夕莉の体操服を投げつけた。
こうして、身体測定は終わり、能力測定へと……
垂直跳び、反復横跳び、腹筋、背筋と続いていった。
そして、最後は障害物競走。
高校の外、空町全体が競技会場となる、退魔士育成高等学校、春の名物、能力測定障害物競走で、全てが決着する。
次話、うれしはずかし能力測定、ついに完結。物語は、狐に嫁入りへと動いていきます。