#8
その時にふと気がついたことがある。
わたくしは初等科の六年間だけは穏便に過ごすことにしているが、「ここはどうしても前世と変えたいところ!」と思った場面でうまくいかないことが多い。
なぜならば、過去の会話なんてその場しのぎだから、ほとんど覚えていない――
「ううっ……なかなかうまくいきませんわね……」
「セレスちゃん、どうしたの?」
「アリスさん!? いつのまに!?」
彼女の名はアリス・リーフレスト。
確か……わたくしが婚約者から婚約破棄を宣言され、ショックを受けていたやさき、わたくしがギロチンで処刑される前日に晴れて彼と婚約内定を勝ち取った裏切り者!
幼い頃の彼女はくりくりした大きな瞳、金髪の縦ロールで碧眼をもつ、とても愛嬌がある女であったことを今でも覚えていますわ。
「なにがうまくいかないの?」
「あ、あなたにはかんけいのないことですわ!」
「こまったらいつでもはなしかけてね。わたしにできることがあったら、なんでもきょうりょくするから!」
「ありがとうございます。そのときはえんりょなく、はなしかけさせていただきますね。おなじクラスにしょぞくしているのだから、クラスメイトくらいはたいせつにしなくてはなりませんわ」
「さすが、セレスちゃんだね。せんせいたちからもしんらいされているから、すごいとおもうよ」
アリスは満面の笑みを浮かべていた。
その頃の彼女は前世で最期に見た時より数万倍以上、素直で可愛げがある。
どのような道順を辿ったらあんなに意地が悪くなるのかしらね?
わたくしには全くもって分かりませんわ。
アリスを見ているとだんだん苛々してきたが、ここで関係を変えてしまうとこれからずっと壊れた関係のまま。
わたくしは現時点でそのようなことはしたくない。
「そうですわね。わたくしはみなさまのおてほんにならないとなりませんね」
「うんうん。セレスちゃん、わかっているじゃない?」
「まあ、あなたにはいわれたくはないですけど……」
「おなじく」
わたくしとアリスは前世も同じようなやり取りをしてライバル関係になったような気がする……
残念ながら記憶というものは朧気なものですから仕方がないことですわね。
しかし、ゆくゆくはわたくしが優位になるよう、動かなければならないのは事実。
アリスはもちろん、この学園に通うすべての学生を敵に回す覚悟はもうすでにできていた。
それを実行するのはまだまだ先ですけどね。
2026/01/06 本投稿




