#2
いざ、優しさや愛情を捨てようとすると勇気がいる。
わたくしはそうすることを決意した。
後戻りはせずに、たとえどんなリスクを負ってでも強く生きなければ――。
「わたくしのこれからですもの。それくらいはしかたがありませんわ」
わたくしはふかふかのベッドの上で呟いた。
一度目の最期は牢獄からのギロチン処刑でしたから、今回はそれを回避しなければ!
突然、ドアを叩く音とともに「セレスお嬢様!」と呼びかける耳に入ってくる。
「セレスお嬢様、昼食をお届けにきました」
そう思っていたやさき、メイドが昼食を持ってわたくしの部屋に駆けつけた。
意識が戻って嬉しいのか、動揺してしまったのか、わたくしのことを心配してパンとスープといった簡易なものを持ち込まれている。
しかし、こぼれたスープがロールパンを吸っていて、使いきりのジャムやマーガリンも一緒に置いてあるが、それによって濡れていて、皿やおぼんはもちろん、とてつもなく見た目が悪い。
「…………このみためのよろしくないしょくじをわたくしにたべろということ?」
「ひぃっ!」
「はやくつくりなおしてきなさい! おとうさまやおかあさまとおなじものをね!」
バシャっと音を立て、メイドの顔にスープを撒く。
「お嬢様!?」
「まだわかりませんの? はやくわたくしのごはんをつくりなおしてきなさい。できなかったらくびをきらせていただきますわ」
「ク、クビ!? そ、それだけは!」
「それをさけたいのならば、はやくよういしなさい」
髪や顔を濡らしたメイドにロールパンとおぼん、食器類を投げつけた。
現在のわたくしは見た目は子供、頭脳は前世のままなので、今回使われている食器類の素材くらいは分かる。
それらの食器は小さい子供に危険が及ばぬよう、陶器製の食器ではなく、プラスチック製のものを使っているのだ。
今のわたくしに恐怖感を覚えたメイドは「は、はい! い、今すぐに! し、失礼いたしました!」と部屋の中に散った食器や食べ物などをすべて回収し、汚れたところを掃除してから退室された。
前世のわたくしは出された食事はどんなに見た目が悪くても我慢して食べていたが、これからは食べない、手をつけない。
周囲の意見に左右されずによく考え、わたくしに相応しい答えを導き出すことができるように――
メイドや使用人にも優しさを捨て、遠慮容赦なく言葉の刃を入れることにした。
ゆくゆくは誰もわたくしに近づけないように少しずつ冷酷さを手に入れ、この屋敷にいる者すべてに復讐しよう。
2022/09/11 本投稿