#9
わたくしは自宅の部屋で宿題をやっていた。
今日の宿題は両親のどちらかから子供の頃はどのような子供だったのかを聞いてくることと、算数ドリル。
算数ドリルは今のわたくしからすると簡単すぎてしまって、すぐに終わってしまった。
さて、ここからが問題。
両親のどちらかに子供の頃の話を聞く宿題が残ってしまった。
何故かというと、それを元にして作文を書き、先生やクラスメイトの前で発表することになっているから。
お父様だったらすぐに「他をあたれ」と言われるのは目に見えているので、お母様に話を聞くことにした。
「おかあさま」
「セレス、どうしたの?」
「おかあさまは、こどものころ、どのようなこだったのですか?」
「あら、宿題?」
「はい。おとうさまか、おかあさまのこどものころのはなしをきいてきて、さくぶんをかいて、せんせいやクラスのみなさまのまえで、はっぴょうするのです」
「へぇー……面白い宿題ね。私が小さい頃は――」
お母様が子供の頃のことを話し始め、わたくしはその話を聞きながらしっかりとメモを取る。
しかし、幼いこともあり、あまりにも下手くそな字だ。
今のわたくしはまだ初等科一年生なのだから下手くそな字でも仕方がないのは分かっている。
これから少しずつ丁寧に書けるよう、精進しなければなりませんわ。
「――おかあさま、たのしいおはなし、ありがとうございました!」
「いいのよ、セレス。大切な学校の宿題だもの。またいつでも協力するからね!」
「ありがとうございます! おかあさま、だいすき!」
「あらあら。セレスったら……」
わたくしはお母様は抱きついた。
彼女はわたくしの頭をそっと撫でる。
お母様はいつもわたくしのことを守ってくださり、大切にしてくれているから――
それに対してお父様や使用人は全く話しかけてこないし、例え、わたくしから話しかけたとしても素っ気ない対応をされる。
まるで、わたくしのことを避けているかのように――
まあ、彼らの場合はわたくしから距離を取っていることが原因で近づけなくなっているのだろうと思われる。
しかし、実はわたくしにとってはそれで十分だった。
周囲の人間からはまだ早いと思われたり、言われたりするかもしれないけれど、もうそろそろお母様からの愛情も捨てようかしら。
わたくしは彼女に抱きついてしばらくしてからお母様に見えないよう、ニタリと口角を上げた。
今のわたくしにとって下衆な人間は誰もいりませんわ。
2026/01/20 本投稿




