表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/35

七歳の誕生日



『明日で七歳…なんだよなぁ』


僕はベッドに入って明日の誕生日について考えていた

ザイオンが七歳の誕生日に、才能の一部を解放すると言っていたからね

次に目が覚めた時には一体どうなっているのか…

不安や期待が入り混じって、なかなか寝つけそうになかったが

身体はまだ子供の様で、そのうちに眠りについてしまった…




『おはよう、テレジア姉様』

いつも僕を起こしに来る姉様に、普段通りの挨拶をしたのだが…


『う、うん、、おはようニーノ、今日も本当に可愛いわ』

そう言って、僕の着替えを手伝っていたのだが

何かいつもと違って様子がおかしい


部屋で控えているメイド達も妙にソワソワしている…


何より、姉様や僕担当のメイド達の色が…濃い桃色になっている!!

イヤ、正確には色の濃淡は個人差があるのだが…

テレジア姉様や妹のクラリスは元々他に比べて強めの桃色だったが

ここまで凄く濃い桃色では無かった筈だ?!


もう既に才能が解放されているんだろうか???


何かイヤな感じがしないでも無いが、、いつも通り朝食へと向かう

その間も姉様はずっと僕にベッタリだった

あれ? なんか過保護具合が酷い事になってるぞ…


その後の朝食では妹のクラリスまでもが、僕に甘えてベッタリで

殆ど味がしなかったなぁ…


朝食後は其々の勉強や訓練などがあるので、本来はバラバラになるのだが

今日はテレジア姉様も妹のクラリスもかなり抵抗している


『今日はニーノと一緒に訓練でも良いでしょ?父様』

『今日は兄様と一緒に勉強がしたいです、母様』


二人は両親に其々お願いをして、今も困らせている


『今日はお披露目会の事もあって、ニーノは別行動なんだよ…

 テレジア、クラリス、分かってくれるよね?』

可愛い娘の押しには弱い父が頑張っている、、


『お披露目会の事でニーノには、話さないといけない事もあるの

 今後の進路や将来についても、考えて欲しい事もあるし…』

母はそう言って、二人を宥めながら父と目線を交わしていた


(今後の進路や、将来についてか…貴族だとそうなるよね)


七歳のお披露目会では、王国の貴族が一堂に集まる数少ない日だ

自分の子供が出席しなくても、参加する貴族が殆どだった


お互いの情報交換や、仲の良い派閥等の結束のためでもあるようだが…

一番の目的はこの先の時代を担う、その子供達のお披露目が主な目的だ


七歳とは言え、既に子供達の優劣はつき始めている

今後の自分達の派閥や、他派閥の子供達を見極める意味合いも大きい


(まぁ、貴族なんてしがらみや足の引っ張り合い何だろうなぁ…)


僕はこの先に控えている将来に、少し気が重くなったけど

僕がしっかりしないと、父や領地、領民が舐められるのは頂けない

同年代で仲良く出来そうな子供でもいれば良いなぁ


そんな事を考えていたら、二人は家庭教師に連れて行かれるところだった


『ニーノ!夜は絶対に一緒だからね!』

『兄様!クラリスも一緒がいいです、姉様ばかりダメですよ』そんな事を言いながら…


ーーー

ーー


『さて、ニーノ、サーシャ 執務室へ行こうか』

両親は既に一仕事を終えたかの様に疲れていたが…

僕の才能のせいだとしたら、申し訳ないなぁ


父は立派な執務室の机の書類を幾つか取って、側のテーブルの上に置いた

僕と母も同じテーブルに着いた

その様子を見ていたメイドが、さりげなく僕達にお茶を出す


『ニーノには、テレジアやクラリスと違う話を今からする』

改めて座り直した父は、普段の優し気な表情とは一変し

領主としての威厳ある顔で話し始めた


『ニーノももう気付いてるとは思うが

 今回のお披露目会は、例年のお披露目会とは大きく異なる

 今年のお披露目会には王族の方が全員出席する

 それはダニエル公爵様の次女、アイシア様が参加されるからだ』


僕は父の目を見て、黙って頷いた


『フォスター王とダニエル公爵は、兄弟になる訳だが…

 先の国王と代替わりする際に、政敵を全て排除した事でこう呼ばれている

 紅の王と紅の公爵と…

 流した血がかなり多かったためでもあるのだがな

 二人の結束は非常に堅く、またその王族派の結束も非常に強い

 私も王族派に属しているし、フォスター王とは学院時代からの親友でもある』


以前に父からは、それとなく王族の方々の話は聞いていた

特にダニエル公爵の娘、アイシアが同年代にいる事も…


『ここからなんだが、、、

 ダニエル公爵様からお前に、アイシア様との婚約の話が出ている

 その他にも婚約の話は幾つも来ているのだが…

 今回のお披露目会の後で、数名の婚約者候補とも面会を行う事になっている

 流石にお披露目会では、人数が多すぎて個別に話をするのは厳しい

 事前にお茶会を開く事になったので、ある程度は皆と話せるとは思うが…

 まぁ、今後の将来の婚約者候補として、色々と話をして考えてみてくれ』


『分かりました、父上』


貴族は自分の意思だけで結婚を決められない

テレジア姉様も妹のクラリスも、父の選んだ相手と基本的には結婚する

姉様にも既に婚約の話が来ているそうなのだが、、、


『父上の意向では、僕の相手はどの方になるのでしょう?

 少なくともこの領地は守らねばなりませんが

 僕は今以上に、ここを発展させたいと思っています

 ですが、、それだけで相手の方を選ぶのは、僕には難しいかもしれません』


何れ辺境伯を継ぐのだとしても、愛のある家庭ではあって欲しい

もう僕にとってもラストチャンスなのだから…


『ニーノ、お前は俺の自慢の息子だ

 この話をしたのは強制するつもりでは無いよ

 確かに公爵様との婚姻関係は、お前の地盤を強固にするだろう

 でもそれはこれまでと同じ古い考え方だ

 自分で考えて、時期が来たら相談して欲しい

 まだ気軽に…とまでは言えないが、、思い詰める年齢では無いよ』


そう告げた父の顔は、いつもと同じ優しい眼差しをしていた


『俺はサーシャと結婚したが、サーシャをもちろん愛している

 サーシャはたまたまホワード侯爵の三女だったから、上手くいったのだが…

 サーシャとは大恋愛の上で婚約して、結婚を申し込んだ

 だからお前も、自分で相手を決めて良いからね

 事前のお茶会は王都にある、ホワード侯爵の屋敷で行う事になっている

 侯爵はお前にかなり会いたがっていたよ』


辺境伯の領地はその名の通り辺境にある、王都からはかなり遠い

以前に聞いた話では馬車で七日は掛かるらしい…

それもあって王都に行く時は、一度に用事を済ませたいよね


(ホワードお爺様かぁ…久しぶりだなぁ お婆様も元気にしているかな)


ホワード侯爵家は娘婿の父には、少し厳しい面もあるのだが

両家の関係は至って順調で、単に娘に会えないのが寂しいようなのだ

僕達、兄弟には特にダダ甘なんだよねぇ(笑)

今は隠居しているが、その影響力は全く衰えていないと聞いている


『父上や特に母上は、ニーノを可愛がっていますからね

 今回のお茶会の話は大賛成していました

 ニーノが気に入る相手に出会うまで、これから何度でもお茶会を開くと…

 公爵様や婚約者候補の方々にも豪語したらしいです、、

 本当にうちの両親は…』


サーシャは頭を押さえながら、溜息をついていた

公爵は侯爵よりも立場が上になる

本来なら豪語するなど不敬に当たりそうなのだが、、

両家の関係は良好なので、特に問題は無いらしい、、無いよね?


『アイシア様はかなり聡明で、容姿端麗だとの噂だ

 実際に会ってみれば分かるだろう

 流石に今は全員と会うのは無理だが

 お茶会では評判の高い方や、年齢の近い方を選抜している

 今後の事を考えるにしても、色々な人と話しておくのは良いと思うよ』


王都に向かうスケジュールや、相手の方の交友関係

それまでに覚えておく内容や、作法なども聞いて話は終わった

王都でお披露目用の衣装を仕立てるそうで、早めに出発する予定となった



この日は夕食会寸前まで、両親にレクチャーを受けて疲れていたが

誕生日を祝う夕食会以降も、姉や妹にベッタリ構われて更に疲れた…


貴族なんて疲れる事の連続なんだろうなぁ

これから更に疲れる事が、待っていると分かっているので

僕は早々に眠りについた


才能については、これから検証していけば良いよね…



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ