ザイオン再び
『久しぶりー、どう? 今の生活は?』
七歳の誕生日を間近に控えて、お披露目会の準備に追われていた僕の頭の中に
ある日突然懐かしい声が聞こえて来た、、ザイオンだ!
『お久しぶりです、ザイオン様 毎日楽しく過ごしています』
僕はコッソリ入って本を読んでいた、母の書斎から急いで自分の部屋へと移動した
『あはは、相変わらず勉強熱心だね君は 毎日努力ばかりしてるぞ
たまには気晴らしもするんだよ 折角のチャンスなんだからさー』
そう言っていた声は、かなり満足気に聞こえた
『ありがとうございます、折角頂いたラストチャンスですから
少しも無駄には出来ません、今は能力を出来るだけ…上げておきたいんですよね』
僕の見ているステータス画面には、まだまだ押せるボタンが沢山ある
しかもボタンを押すと、新たにボタンが増えたりしてるので
結局はボタンは増殖し続けていた
能力や年齢と共に記憶が少し鮮明になって、転生の部屋の会話も思い出せている
『んー、君は今の時点でも既にかなり能力の数値が高いからね
何となく気付いてるんじゃ無いかなぁ? その才能とかも』
『ええ、まだまだ活動範囲も限られてるので、実感は湧きませんが…
才能については思う事は有ります』
『ふふふ、まだその才能は殆どと言って良いほど、発揮されて無いからね
才能の一部が少し漏れている程度だと思って良いよー
うん、君はきちんと能力も上げてるしそのまま成長してね
思ってたよりも能力の上昇速度が速いからさ
七歳の誕生日になったら、才能の一部を解放してあげるからね』
『ありがとうございます、ザイオン様 凄く助かります
あ、今日はどう言った要件だったのでしょう?』
突然のザイオンとの会話に、少しだけ疑問を感じていた
『頑張りに対する応援だね、本当は十ニ歳ぐらいに少し解放予定だったけど
君の能力値が既に解放出来るまで成長してるからさ
誕生日の後で、お披露目会でしょ? その時に間に合う様にと思ってさ』
『ありがとうございます、お披露目会は紹介程度だと思いますが
もし、僕の考えてる才能と一致するなら、答えは出るかもですね』
『あはは、君は鋭いなぁ、、まぁ少しの解放だけだけど
その才能の一端は感じられると思うよ、あくまで一端だね
そうそう! 君は結構注目されてるんだよ? 11回目の転生者だからさ
神界の検索ランキングでは、君の話題は常に上位に入ってるよー
これからも応援してる、たまには管理者のボタンを押していいからね〜』
そう言って、極上の笑顔で去って行く、ザイオンの姿が想像できたが…
『ザイオン様! 神界の検索ランキングって何ですか!?
もしかして、僕、神様達にめっちゃ見られてます??』
僕の叫びも虚しく、返事は無かった
まぁ、神様だからね…見ようと思えば見れるんだろうなぁ…
少し遠い目をして僕は天井を見上げた
才能については、僕の中で思う事があった
年齢と共に其れは確信に近づいている気がする
僕の周りの女性は種族を問わず、基本的には僕に好意的だ
もちろん思いの強さは其々だと思うけど
家族や異性としての愛情だったり、主従としての親愛だったり、、
僕は皆に同じ様に接しているつもりなんだけどなぁ…
ただ、その思いは男性に比べて女性の方が、はっきりと強く感じてる
あの日に感じた思いも、僕の才能を更に確信に近づけた気がするなぁ…
父の領地はその名の通り、辺境にある
国境を守る役目が主だが、開拓地としての意味合いも大きい
農作物の育成や、家畜の世話を見る機会も多々あった
父の方針で自前の領地はどうなっているのか、日々勉強もしているからね
狩りもするけど、鶏や馬、牛などの生き物も知っておきたい
領地が豊かで無いと、領民は苦しむ事になるから…
そう思って、父に頼んでたまに家畜の世話も手伝ったりしていた
また自分達の食事の糧となる、生き物達に感謝を忘れないためでもあるかな
そんな日々を過ごしていた、ある日の事だった
『坊ちゃんが世話をする様になってから、家畜が元気で助かりますよ
卵も子供も良く産まれて、成長も早い気がしますねー』
日焼けして逞しい笑顔で、嬉しそうに僕にそう言ってくれたのだけど…
その時の僕は背筋に冷たいものが流れる感じがしていた
【女】
獣人、亜人、魔人、エルフなど、、
この世界には多種族が生息している、動物や植物も然りだ
しかもそれぞれの生き物は、基本的に女しか子供を残せない
そう…女にしか子孫を残せ無いのだ
僕のこの才能は生き物の半分に作用するのかも知れない…
そう思うとこの才能の凄さに、少しだけ恐怖も感じていた