未知との遭遇
『あぁ、必要以上に警戒はしなくて良いよ
さっきも言ったけど、君が何もしないなら、僕達は危害を加えない
少し話がしたいだけなんだけど、喋れるのかな?』
『 ……… 』
『話せなくても、理解が出来るならそれでも大丈夫だよ
僕の言ってる事が、理解出来るなら頷いてくれるかな
違ってたら 首は横に振ってくれると分かりやすいね』
…コクコク
『良かった!!
僕はニーノ、こっちはミトって言うんだ、よろしくね
僕達はこの山へ調査で来たんだ
大型の生き物の正体…多分キミの事を調べに、だね
此処は薬草採取の人が多くてね、危害を加える魔物や生き物がいると
採取に来れなくなるからね… ここまでは、分かるかな?』
… コクコク
『ありがとう、キミは誰も襲って無いから、大丈夫だと思うんだけど
キミに迷惑を掛けたり、討伐しようとしたり…そんな人はいたかな?』
… コクコク
『ごめんね、、人は弱い生き物だから、、
キミの様に強そうな相手には、恐怖を感じてしまうんだ
迷惑を掛けてしまって、本当にごめん』
僕は熊に頭を下げた
ミトは少し驚いていたが、一緒に頭を下げていた
『ここからは、僕のお願いになるんだけど…
可能なら、キミと共存したいと思ってるんだ
だから…キミに迷惑を掛けない人には、危害を加えないで欲しいんだ
逆にキミに危害を加えそうなら、反撃しても良い
殺されそうなのに、我慢する必要は無いと僕は思ってる
それで、…どうかな?』
『 ……… 』
『キミが姿を現さない時点で、既に迷惑を掛けてる事は
僕も分かってるんだ、、、
だから、キミが生きるのに必要な場所、テリトリーを教えて欲しいんだ
そこまでは人が入っても大丈夫な、国境みたいなものだね
そこを超えたら、キミの生活する場所だから
危害を加えられても、人は文句を言えない…
そんな線引きが出来ればと、僕は考えてるんだけど…どうかな?』
『 ……… 』
『直ぐに信用してくれるとは、思って無いから返事は今度でも良いよ
一応、後で大体の境界線だけ引いておくから、、、
僕は心優しいキミが討伐されたり、生きにくい世界は望んで無いんだ
結界を張ったり、姿を現さなかったり、威嚇しなかったり
キミは争いを望んで無いと思うから…
世界は多種多様な生き物で成り立っている、キミも僕も…ね
だから人の都合だけで、自由にして良いなんて僕は思えないんだ』
僕はずっと一方的に話しかけていた
熊はちゃんと僕を見て、考えたり頷いたりしてくれている
だから、僕もちゃんとした話をしたい
ただ、気になるのは、色が見えている事だけ…
今まで、人以外で色が見えた事は無いけど、、
人のいる街でしか生活して無かったからなぁ
暫く、熊は考えてくれたみたいで
それから、ゆっくりと頷いてくれた
熊の色は薄い桃色になっていた
…… コクコク
『ありがとう、あ!お腹空いてない?
食事がまだなら…もう少し渡せると思うんだけど…』
そう言い終わらないうちに
コクコクコクコクコクコク!!!!
熊はめちゃめちゃ頷いていた!!! 今日一番の反応だ!!
僕はアイテムから幾つかの食料を出して、熊に渡した
熊は受け取ると、ゆっくりと去って行こうとした
『二日後の夜にもう一度ココへ来るよ! また食料は持って来るからね!』
去って行く熊に、そう声を掛けた
熊は途中で足を止め、振り返って頷いた
さっきよりも、更に少し濃い桃色になっていた
ーーー
ーー
ー
『うん、これで取り敢えずはギルドに報告かな
後で中腹の手前に境界線を引いておこう
岩を並べておけば、分かりやすいと思うから、それで良いよね?』
『流石、ご主人様! 人にも動物にも変わらぬ優しさ…
普通なら、脅威は取り除こうとするものですが、、』
『彼らも僕らも、自然の中で生きている
一方的に悪だと思うのは心が弱いからだと思うんだ
本当に必要なら争う事も有るけれど、無闇に争う必要は無いよ
特に心優しい生き物ほど、どの世界も生きにくいから…』
そう言って僕は空を見上げた
いつだって力のある者が、力の無い者を迫害する
生きるためなら、食べるためなら…しょうがない部分はある
でも必要以上に迫害する事なんて、無駄に争いを生むだけだ
本能で無く、知能がある者ほど…そう言う傾向が強い…傲慢だな
僕達は自然の中で生かされている
それは今後も忘れない…そう誓った
山を囲む様に境界線を引く…結界があった場所よりも、かなり麓寄りにしてある
大型の生き物なら、行動範囲も広い筈だ
そうやって僕は明け方まで、土魔法で規則的に岩を並べ境界線を引いていた




