正体?
『うーん、大体分かってきたかな』
僕達は、殆ど生き物がいない場所を、調べていた
大体だが…3キロ四方に広がっているらしい
植物などは生えていたが、意図的に侵入を阻害する様な何かが有りそうだ
この辺りに来てから、違和感の様なものはずっと感じていたのだが…
『そうですね、魔力と言うには極微弱ですので、結界かもしれません』
『僕もそう思う、結界系はまだ殆どスキルを取ってないから
僕が見つけにくいなら、その可能性が一番高いかなぁ』
『ここが、中心地になりそうかなぁ』
少し大きい石が有るぐらいで、他に何も無いただの森の様な場所
これは思ったよりも、時間の掛かる依頼なのかも知れないな
『うん、この石は記憶したから もう此処へは転移できるよ』
僕の転移は、脳内の地図にピンを打つとその場所へ転移出来る様になる
だから目的地には一度行く必要が有るが、それからはピンを指定するだけ
少し離れた場所へ移動して、試しに転移してみる、、、うん問題ない
『昼の間は動きが無いかも知れないね
きょうは、このまま野営出来そうな場所で監視を続けよう』
『えぇ、私もその方が良いと思います
ただこの辺りには獲物はいないので、狩りが出来ませんね…』
『少し移動して他の場所も一応確認しておこうか』
『はい、ご主人様』
僕達はざっと周囲を確認しながら、日が暮れるのを待った
野営は僕達には簡単だ、アイテムから出すだけだからね
椅子やテーブルなどの簡易的な物と魔道コンロを用意して、料理を温める
大鍋には幾つも料理が仕込んであるので、必要分だけ小鍋に移して仕上げを待っていた
それ以外には明かりの目的として、焚き火もしている
山の中でこの明かりが、かなり目立つのは分かってる
相手にアクションを起こして貰わないと、状況が動かない…
『さて、動くかな…』
『初日ですからね…反応が有ると良いのですが…』
獲物を狩るなら、夜の場合も多い
生き物であれば、何かを食べないと生きられないからなぁ
今回の場合、肉食であって欲しくは無いが…
食事を終えて、このまま眠るかについて相談しようとした時に
僕の魔力感知に引っかかった!
脳内の地図の隅の方に、赤い点が見えた
その赤い点は僕達の方向へと、ゆっくりと進み始める
『いるね…多分コイツだと思う
こっちへ来てくれる様だから、お迎えしないとな…
好戦的な相手で無ければ良いんだけど』
ミトも感知で捕らえたのか、僕に頷いていた
赤い点は一定の距離を保って、移動している、、警戒してる様だ
その距離は大体400メートルぐらい
何かあっても逃げられると思ってる距離なんだろう
『一定の距離で警戒してるね、、この分だと知能も高そうだ
魔物だったら、厄介かもしれないね…』
『魔法や弓などを使う可能性も有りますね
いつでも戦闘は出来る様にしておきます』
赤い点は暫くじっとしていたが、少しずつ距離を詰めてきた
ううーん、、これは獲物を狙う時の行動っぽいなぁ
戦闘は避けられないか…?
ある程度までの距離まで来たら、話しかけてみるか
ーーー
ーー
ー
『行ってしまいましたね…』
『あぁ、行ってしまったな、かなり警戒してたから
性格的には臆病なんだろうな、それだと厄介な相手だなぁ』
臆病なのは、自分の力を過信していない証拠だ
相手と自分との強さを、ある程度は測れるのかも知れない
自然界で臆病なのは大事な事だ、臆病だと頭も使う
好戦的で無いだけだったら良いのだが
明らかに興味は示していたので、多分また来るだろう…
『暫く野営する事になるかもね』
『仕掛けて来ないなら、待つしか有りません』
僕達は交代で見張りをしながら、夜を明かすつもりだった
僕の感知は寝ていても作動するので、目は覚めるのだが…
持久戦になりそうなので、出来れば体力は温存しておきたい
森の中は驚く程の静寂が続き…
焚き火が燃えるパチパチとした音だけが、やけに大きく聞こえていた
その日は結局、朝まで何も起こらなかった
翌朝、気配のあった場所を確認しに行く
足跡は例の者だった、、追跡したが途中で消えていた
かなり用心深い性格だなぁ
僕は足跡の有った地点に、幾つかの食糧を置いておいた
この後は昨日とは違う場所へ捜索に向かう…
その日も痕跡は見つけられず、また夜を迎える
『今日はどうだろうなぁ…昨日と同じ行動をしてみるかな』
昨日よりも、大目の食事を用意して二人でゆっくり食べる
鍋にはわざと少し料理を残しておいた
『匂いに釣られて出てきてくれると、良いけどなぁ』
『昨日の感じだと、時間が掛かる相手かもしれませんんね』
いきなり襲われるのも困るが、倒せるなら決着は早い
ずっと様子見をされると、結構厳しいなぁ
ここは地形も含めて相手に有利な場所だ、逃げられる可能性も高い
食後に紅茶を飲んでると、赤い点が見えた
暫くじっとしていたが、また一定の距離で移動し始める
昨日と同じくらいの距離まで詰めて来た
暫くじっとしていたが、また赤い点は去っていき翌朝まで何も無かった
翌朝も、確認のため足跡の場所へ向かう
新しく着いた足跡は同じ者だった
昨日置いた食料は消えていたので、持って行ったのだろう
今日も食料を置いておいた
『今夜で動きが無かったら、一旦引き上げて出直すかな?』
『そうですね、今日辺りは何らかの動きは有ると思います』
ミトも僕と同じ意見だった
僕達は野営地点に戻り、翌朝までに何も無かったら
周囲を捜索してから、一旦この場所を離れる事にした
そして夜を迎えた
昨日と同じ行動をする、毎日観察されてるんだから、出来るだけ刺激しない
赤い点が見えて無くても
偽装や感知されない方法が有るのかも知れない
今日も多めに食事を用意して、ゆっくりと食べる
鍋には昨日と同じ様に少し残しておいた
赤い点がいつも通り現れて、一定の距離を取って移動する
今日も少しずつ距離を詰めて来たが、、、
あれ?今日はかなりの距離まで来た、残り100メートル程だ!
夜の森の中…暗闇に紛れて相手の姿は見えていない
『話がしたいんだ! 言葉が通じると良いけど、敵意は無いから
お互いに話せる距離までは近づいて欲しい!』
僕は森に向かって叫んでみた
赤い点は、急にその場を離れて、移動して行く…失敗か…
もう赤い点は消えていた
『ダメだったかも…逃げてしまったね、一応…朝までは此処にいようか』
『そうですね、相手もこちらが認識出来てると知りました
襲うにしても、今は不用意には近づかないでしょう
朝になって、何も無ければ一旦引き上げても良いかもしれません』
僕達の意見は変わらず、一致していた
その夜半過ぎ…
赤い点が、また現れた!
ゆっくりでは有ったが、確実にこちらへ近づいて来る
今度は50メートル程まで近づいていた
『驚かせたなら、謝るよ! 話がしたいだけなんだ!
お腹が空いているなら、少しだけど食事もあるから!』
赤い点は…暫くじっとして、その場で少しウロウロしてから
やがて、こちらへ近づいて来た…
揺らめく焚き火に照らされた
その姿は…かなり大型の赤金色の熊だった




