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開幕の合図


最前線の本部に着いたのは、日も暮れてかなり時間が経った頃だった

ルエル子爵に挨拶を済ませ、明日の早朝に全体会議を行う事となった


前線基地は大勢の人でごった返していた

基本的に二十四時間の交代制で、任務に当たっている様だ

数百のテントが立てられ、交代で睡眠や食事をしていた


僕は重傷者のテントをミトやジャック、ルッソと一緒に回っていた

二人は辺りを常に警戒し、ミトは僕から絶対に離れなかった


『はい、これでもう大丈夫ですよ

 但し、まだ無理はしないで下さいね』


僕は、重傷者を一人一人、急いで治していった

全快にする事も出来たが、前線でそんな奇跡を起こしたら

多分、後々面倒な事になるだろう…そう思ってギリギリの治療に留めていた

死にかけても全快になるなら、危険をかえりみなくなる…

それは余りにも無謀過ぎる

僕がいなくても大丈夫な状況を作らないと、、今後もあるのだから…


重傷者の大半を治せた事で、皆には物凄く感謝された

皆が口々に 神の子 …と祈られた


『待って下さい、神様はちゃんとおられますから

 僕は唯の人族です、祈りは信じておられる神様に捧げて下さいね』



人の死を間近で感じたのは、この世界に来て初めてだった


流石に死者は戻せない…僕は神では無い

瀕死の兵士をリカバリーで治しもしたが、それだけだ

僕の出来る事など、見えている範囲でしか無い

全てを救いたくても、それが出来ない事も知っている…


僕は出来うる限りの負傷者を治してから、皆とテントへ戻った


『ニーノ様、大丈夫ですか? 流石にこの人数は多すぎます…

 お身体が心配です…早く休まれて下さい』


僕に元気が無いのを心配して、ミトが声を掛けてくれる


『ありがとう、ミト 実は魔力は全然大丈夫なんだ

 それよりも、亡くなった方の多さと

 目の前の人しか治せない、自分自身への不甲斐なさ

 また全てを救いたいと思う、僕自身の傲慢さに少し参っただけ

 僕は本当に傲慢だなぁ…

 全てを救うだなんて、人の身では無理だと分かっているのに、ね』

 

『ニーノ様なら、いずれ何かしらの方法を見つける筈です

 ニーノ様の欲は自分で無く、常に他人のためにある欲です

 今も亡くなった方を思い、胸を痛めておられるのでしょう?

 ニーノ様が今出来ることを、今すれば良いのです

 それだけで、十分救われている方々は多いと…私は思います』


『ありがとう、ミト 少し気持ちが楽になったよ

 僕は僕の出来る事をこれからも続けていくね』


『さぁ、今夜は休みましょう

 奥様には先に休んで頂いています』


そう言って、案内されたテントで僕は眠った

夜中にふと目が覚めたが、ミトが頭を撫でてくれていたので

その心地よさに…また眠りについた


ーーーーーーーーーーーーーーー


【ミト】


昼間の戦闘は凄まじかった、広範囲の魔獣を一瞬で焼き尽くす…

主人様の力は私を超えていた

盾になると誓ったが、その必要は無いのかも知れない、はぁ…


最前線の基地に着いてからは、更に凄まじかった…

数十人程度の治療では無いだろう…とは思っていたが

まさか、三百人以上の兵士の治療を一人で行うだなんて…

皆が神の子と祈っていたが、私もそれには大賛成だ!!!


流石にこの人数だと魔力は枯渇寸前で疲れたのだろう…

主人様に元気が無い、お身体が心配だ、大丈夫だろうか…

聞けば魔力は余裕があるとの事…え?一体どれ程の魔力量なのだろう??


元気が無い理由は、自分の到着が間に合わず、亡くなった兵士のためだった

無理だと分かっていても、それでも救いたかったと胸を痛めている

何と何とお優しい…、、、主人様は神だ!!


主人様を強く抱きしめたい衝動に駆られるが、グッと堪える

主人様のために何かして差し上げたい、何度も躊躇ったが、、

どうしても我慢出来ずに、今も頭を撫でている

主人様は気付かれた様だが、また安心して眠って下さった

こんな私でも、出来る事がある事が嬉しかった!


私はもっと強くなる、主人様の心も守れる盾となる、新たにそう誓った



ーーーーーーーーーーーーーーー


【ジャック、ルッソ】


『ジャックさん、報告で聞いてた時は、眉唾だと思ってましたけど…

 実際はその数十倍は、強そうですよ…自信無くすなぁ』


『俺もちょっとな、引退を考えた、、まだ七歳だろう…

 ミトが奴隷に志願した時は、おかしくなったのかと思ったが

 アイツは知ってたのかもしれねぇなぁ』


『ミトのヤツ、ニーノ様を見る目が怖く無いですか?』

『…… あぁ、それ、俺も思った

 後、ニーノ様以外を見る目も怖いよな、別の意味で』


お互いに目線だけを合わせ

それ以上は何も言わず…普通に警護に戻った


ーーーーーーーーーーーーーーー


翌日は早朝から、集合が掛かり現状の確認が行われていた

母様や騎士団長と、ルエル子爵達との会議が続く

子爵には昨夜の件で驚かれ、丁寧な挨拶を頂いた

その場にいた皆からも感謝された、、、

ただ、全員に拍手で迎えられた時は何事か?!と焦ったのは内緒だ


『では、ニーノ様は後方支援という事で宜しいでしょうか?』

『今日は現状の確認と、殲滅もしておきたいので前線へ出ます』


『え!? 流石に神の子 ニーノ様であっても…』

『大丈夫です、ルエル子爵 私も同行しますので

 連日の戦闘で皆様もお疲れでしょう、今のうちに兵を少し休ませて下さい』


ルエル子爵の一団と入れ替わる形で僕たちが最前線へ出る事となった

母様、魔法師団、騎士団長以下の精鋭と僕たちのグループだ

ここに来るまでに、何とか連携出来る形は見えて来ていた

僕は単独の方がやりやすいので、護衛のメンバーと遊撃する事で確認を終えた


『ニーノ様の護衛は任せて下さい!』

ミトが物凄く嬉しそうに母様へ言っていた、その勢いに引き気味だったが…


囲まれる危険もあるが、少数の方が転戦出来て身軽で良い

今日だけで、何処まで減らせるかも試しておきたい

魔獣の討伐は、これまで実戦をしてこなかった僕に、大きなメリットがあった


訓練ばかりしてきたので、能力値はそこそこ高かったが、最近は殆ど上がっていなかった

魔力量だけは今も上昇し続けているが、それ以外の能力はもう余り上がっていない

しかも、訓練のみだったので、僕自身のレベルが殆ど上がっていなかった

個人的にかなりバランスの悪い状態だと、ずっと僕は感じていた


魔獣を討伐する様になって、やっとレベルが上がり始めた

レベルが上がると、全能力値も上昇するので、非常に効率が良い

苦労して個別に能力値を上げていたので、かなり嬉しい状況だった


『負傷者は即時撤退し、順次スケジュール通り交代しながら対応を!

 単独で挑まず、連携して当たれ! 重傷者は出すなよ!

 では、、皆の者、行くぞ!!』


騎士団長が皆へ声をかけていた

騎士団や魔法師団は十数名を一つのチームとして対応に当たる

今日は約二百グループが交代で殲滅を行う事となった

母様は騎士団長と同じ精鋭のチームで殲滅と指揮も兼ねている様だった


『ニーノ、貴方のチームはなるべく後方から攻撃を

 殲滅し切れない時は、移動して次のグループを叩きなさい

 ニーノに着くチームは斥候と殲滅が漏れた時の対応に専念しなさい

 私も行きます、昼に一度状況確認で会いましょう、気をつけてね』


『はい、予定通り交代直後に特級魔法で一度大きく殲滅します

 その後は、順次対応に当たります、母様もご武運を』


そう言って僕たちも出発した

開幕は僕の特級魔法が合図となる、皆が配置についたら戦闘開始だ

全体が見渡せる位置まで急いで移動する



僕の魔法の中で最も効率が良いのはファイヤーストームだろう

昨日までの比較的開けた場所で有れば良かったが…

今日の戦場は森林地帯が広がっている、別の魔法で行く


配置についた合図が各所で上がる、いよいよだ

これまで、一度試して…それ以降封印していた魔法…

今では能力値も上がって、どれ程の威力になるのか自分でも怖い

ただ、眼下に広がる森林には数千以上の魔獣が確認されている

一呼吸し、精神を集中する…


『 メテオ 』


空から岩が数千と落ちて来る、その光景を全員が見ていた

岩が雨の様に降り、見渡す限りの地面に落下して、物凄い轟音と土煙が舞う

岩が落下した衝撃で、大地は大きく震えて…立っていられない程だった

僕の中の魔力がゴッソリと、半分以上は持っていかれた、、、


『土煙が引いた場所から、順次対応に当たる様に伝令をお願いします』


僕はそばに居た兵士に騎士団長への伝令を頼んだ

僕のその言葉が聞こえない程、目の前の光景に動揺している

僕の護衛の皆も、動揺しているから仕方ないか…


轟音や地響き、土煙が少し収まり始めた頃に、各地で大きな歓声が上がっていた

僕の頭の中ではレベルアップしたあの時の感覚が、今もずっと続いている…

さて、やり過ぎてしまったかもしれないな…心の中で苦笑いした


皆が今もまだ大きな動揺を隠せない、そんな状況の中

ただ一人、ミトだけが物凄く嬉しそうに、熱い視線で僕を見つめている

その色は最早…黒に近い程の桃色となって、激しく明滅していた


『えーっと、これは騎士団長と一度合流した方が良さそうかな…』


僕は皆にその事を伝え、騎士団長の元へと向かった




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