10 ルール
懐かしの我が家へ、到着。
お出迎えしてくれたみんなと、ハグ。
マユリたちは、ユイとの結婚のことを驚かなかった。
どうやら、先日のお風呂の時点でご承知だった模様。
アルセリア王家の女性を愛称で呼んで良いのは伴侶のみ、
淑女が命懸けで守るべき重要なしきたり、だそうだ。
あの時、ユイの言葉を拒絶していたらどうなっていたかは、考えたくもない。
ひとつ言えることは、マユリやリリシアに負けないくらいに、
ユイも強い女性だということ。
でもね、そういう重要ルールを後出しで聞かされた俺の身にもなって欲しいよ。
我が家のルールは、いろいろ他とは違うかもだけど、
ユイが楽しそうに暮らしてくれるならヨシ、かな。
『誠実なプレイボーイ』に関する看病の件や、
夫婦間にまつわるもろもろのこと。
確かにユイは妻ではあるのだが、
成人するまでは無理せずこのままでいようと決めた。
『無自覚モンスター』ではあるが、無節操では無いつもり、です。
ま、ルールなんて、気持ちと感情と状況次第で変わるかも、だけど。
ひとつだけ、とても重大な問題が。
我が家の最古のルール。
お姫さま抱っこ・おんぶ問題。
マユリもリリシアも気にしてないなんて言ってるけど、
俺がどうするかを気に掛けているのはバレバレ。
緊急事態じゃなきゃ発動しない問題ではあるけれど、
早めに決着をつけた方が良さそう、かな。
もちろん本物のお姫さまだったユイを、
お姫さま抱っこしたい気持ちはまんまんではありますけどね。
そういえば、モノカさんから聞かれたっけ。
お互いが顔を向かい合わせて胸を合わせる抱っこの正式名称。
今度、ユイで実践してみようかな。
「ユイちゃん、町で大人気だから、目を離しちゃダメだよ」
分かってますよ、マユリ。
なんか、夫というより保護者な気分。
「なぜだろう、以前よりもアランからの圧が減ったような気がする」
それはちょっと違うよ、リリシア。
圧というのが俺からの愛情のことなら、減ったのでは無くて変わったからじゃないのかな。
なんていうのかな、夫からお父さんになって気持ちが安定した感じ。
美味しいものにガツガツ飛び付くんじゃなくて、しっかり味わう余裕といいますか。
それとどっちかっていうと、圧をかけられていたのは俺の方だからね。
あれほど頻繁に顔を出してくれていた仲間たちが、最近とんとご無沙汰なんだよな。
もちろん、みんなには結婚のことをすぐに連絡したんだけど。
遠慮してるのかな。
ユイのこと、ちゃんとみんなにお披露目したいんだけどな。
「ごめんくださーい、『黒猫嵐の魔導急便』でーす」