夏日怪異譚
澄んだ川、木々の擦れる音、土の匂い、汗でひっつく服、
私はいま夏休みを使って祖父の家に遊に来ていた
「10年…いや11年ぶりかぁ」
小さいときはよく遊びに来ていたそうだが正直あまり記憶がない、覚えている記憶といえば…いやないな…、心の中で昔の記憶を掘り起こそうとし、諦める
それにしても祖父の家に来たからと言って特にやることもない、夏休みの宿題もやる気になれない私は散歩に出ていた。川、川、木、川、友人といれば話は別なのだろうが一人で歩くにはあまりに代わり映えのない景色に正直もう飽きていた、
「帰るか…」
そうぼそっとつぶやいた矢先に鼻先にぬるい雨粒が一滴こぼれた、夕立かな…まぁすぐに止むでしょ、、、甘かった! 最初は小雨に感じられた水滴は一瞬にして雷雨に変わる、
「ヤバイヤバイやばい!」
大急ぎで普段使わない足の筋肉を酷使する、
私は隣から接近してくる人間の叡智の結晶、鉄の塊に気が付かなかった、気付いたときにはもう遅い、間に合わない、あぁやっば…、、、死ぬ覚悟なんて決められない、それでももうだめだと、諦めるしかなかった、
ボァッ!───────
あまりの爆音に耳は音を聞くのをやめた
次に聞く音は無いと悟ったその耳に飛び込んできたのは嗄れた、でも心地のいい声だった
「73年ガぁ…ずいぶん待たせてくれたじゃァないノ」
きつく結んだまぶたを開けると飛び込んできたのは暗い緑のウロコ、甲羅、皿、
「か……河童……??」
まさしく河童と呼ぶにふさわしい物がトラックを止めていた、
私は信じられない光景に気を失った…