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自己嫌悪

正直、最近アニメでやっている『ガヴリールドロップアウト』なるものを見て思いつきました。

パッと思いついただけなので二万文字くらいで完結すると思います。


当然ですが、ガヴリールドロップアウトの面影は全くありません。

あしからず。

「助けてええええぇええぇぇえ~」


 泣き叫びながら小さな男の子が必死に走っている。


「私が助けてあげます! だから待ってください~」


 その後ろを追いかけるのは一人の少女。悪魔の特徴であるコウモリのような羽と、先端がスペードのような形の尻尾が生えていた。


「うわああああぁぁ~~悪魔が! 悪魔が追いかけてくるぅ~!!」

「悪魔に追われているんですか!? 一体どこに!?」


 少女は周りを見渡しながら、尚も追いかける。


「こ、殺されるぅぅ~~~!」

「命を狙われているんですか!? 大変です! でも私が必ず守ってあげます!!」


 そう言って、ガッシリと少年の肩を掴んだ。


「つ~かま~えた~♪」

「ぴぎゃああああああああああああああっ」


 少年は恐怖のあまり絶叫する。

 そこに、少年の母親とおぼしき女性が駆けつけた。


「あなた! ウチの子に何をするのよ!!」

「あ、この子のお母様ですか? 実はこの子が誰かに狙われているみたいでしたので、私が守ってあげようかと思ったんです」


 エヘヘと、少女は笑って見せた。


「うわ~~~~ん! この悪魔のお姉ちゃんに殺されるぅぅぅ!!」

「そうそう、私に殺されそうだから、私が守ってあげようと……って、私か~~!!」


 少女はようやく、少年がなぜ逃げ回っていたのかを理解した。


「悪魔だ! 悪魔の子が少年を襲っているぞ!」

「なんて非道な! あんな小さな子の命を奪おうだなんて!!」


 周りの人間が騒ぎ出したことに、少女は戸惑う。


「ち、違います! 私はそんな酷いことなんかしません! ただ、この子を助けたかっただけで……」

「嘘を付け! 悪魔が人間を助けるなんて聞いたことないぞ!」


 周りの人間は一向に警戒を解かない。


「ほ、本当です! 私は何も悪いことなんてするつもりありません!」

「じゃあその頭の上の黒いオーラはなんだ! 人間の負の感情を回収していたんだろ!!」


 一人の人間が少女の頭の上を指差した。そこには禍々しい黒いモヤが漂っている。

 悪魔は人間の負の感情を食料に生きている。それがこの黒いモヤだ。


「あ~……この子が怯えちゃったから、勝手に集まったんですね……でも大した量じゃありません。ちょっとだけ怯えて、ちょっとだけ集まっただけですから。見ててください!」


 少女は黒いモヤを精算した。すると、黒いモヤが一枚の硬貨に変化する。


――『ユニは500カオスを手に入れた!』


 その硬貨を少女は手に取った。


「ほら、たった500カオスだけです……って、500カオス!? 500カオスあればラーメン一杯に変換できます! 思った以上の大金です!」


 想像以上の精算に取り乱す少女。そんな彼女を周りの人間はいぶかしげに見つめる。


「やっぱり元々狙って襲ったんだ! 見た目によらずなんて少女だ!」

「あぁ~、悪魔とはなんて恐ろしい存在なんだ! いなくなればいいのに!」


 人間たちが騒ぎ出したのにオロオロとしながら、少女は一点を指差した。


「あ~、あんなところに天使がいます!」


 別に嘘を言ったわけではない。そこには本当に通りすがりの天使が歩いていた。

 少年の母親や、周りの人間は一斉に天使に駆け寄った。


「あぁ天使様! 今そこで悪魔に襲われたんです! この子が呪いにかけられていないか見てください」


 天使は人間に囲まれて、あっという間に見えなくなった。だが、その頭上にははち切れんばかりの光が輝いている。

 悪魔とは逆に、天使は人間に信仰されることで、それを食料に生きている。

 その眩い光を羨ましそうに見つめながら、悪魔の少女は逃げていくのであった。

「はぁ~……私はなんで悪魔なんでしょう。天使か人間がよかったです……」


 ションボリと肩を落としてベンチに座る悪魔の少女。

 彼女の名前は「ユニ」。種族は悪魔。金髪のロングヘアーをサラリと下し、肩紐をかけたドレスのような服は下が短く、太ももが見えるほどだ。

 悪魔らしく大胆に露出した衣装で、はたから見れば美少女として周りから釘付けになりそうな彼女だが、その表情はドンヨリと曇っていた。


「500カオスという大金とはいえ、なんの罪もない少年を脅かして得たお金……こんなお金でご飯を食べるくらいなら、捨てた方がマシです!」


 そう言ってユニは一枚の硬貨を握りしめた右手を振りかぶる。だが――


――ググーギュルルルゥ……


 お腹の音が鳴るのと同時に動きが止まった。


「……最近ロクなものを食べてないからお腹が鳴ってしまいます……うぅ、背に腹は代えられぬと言いますし、今回だけ! 今回だけはご飯に変換します!」


 そう言って振りかぶった右手を下ろし、硬貨を見つめる。


「500カオスで変換できる食べ物ってラーメン以外でなんでしたっけ……できるだけ栄養のあるものと変えたいですね」


 そうして魔力でカタログを広げると、熱心ににらめっこを始めた。


「どんぶりものがいいですね。よし! かつ丼にしましょう!」


 手のひらの硬貨を変換するように魔力を操作すると、ポンッと熱々のかつ丼が現れた。

 天使や悪魔はこうしてお金を貯めて、食料に変える。ちなみに人間の食料は全く食べることはできない。


 そう、この世界は人間と、天使と、悪魔が入り混じった世界。

 悪魔は人間の負の感情を集めて食料とするために、人間が必要不可欠。

 天使も人間の信仰心を集めて食料とするために人間が必要。しかし、悪魔がいてこその信仰なので、悪魔も必要だとされている。

 人間にとって、悪魔は害悪でしかなく、天使の力は必要とされている。


 こんな、よくわからない微妙な関係で成り立っている世界、『ディスガルド』。

 そんな世界にユニは、人を傷付けることができない、優しい悪魔として生まれてしまった。

 必死にかつ丼をほおばる彼女が、明日生きていくための食料を調達することができるのか!?


 これは、そんな彼女が苦労しながらも必死に生きていく、苦労譚である!

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