表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/47

プロローグ

第3章開幕です。

プロローグなので短いお話です。

 ここから見ていても、彼女の顔が青ざめ、引きつったのが解った。


 その彼女の正面に、縦ロールの見事な巻き髪を持った背の低い金髪の少女が立ちはだかった。


「まだ、何かする気ですか? もう十分じゃないですか? 一体、彼女が何をしたと言うの!」


 そう指さすのは彼女の後ろに立つ、まっすぐストレートな黒髪を持つ色白の美しい少女だ。いかにも薄倖そうな雰囲気は、護ってやりたいと男心をくすぐる。


「何とかいったらどうです! あなたのせいで学院は滅茶苦茶なのよ!」

「そうだ、そうだ!」


 そして、3人を囲むように、学生達の輪が拡がっていた。100人以上は集まっているんじゃ無いか。


「確かに、男爵令嬢と、公国の公女たる貴女とは身分が違うわ。でも、ここでは同じ学生という身分のはず。そうは思いませんか? 皆さん!」


 そう言って、金髪の少女は周囲を見回す。


「男爵令嬢が可哀想だ!」

「一体、何の権利があって、彼女の心を踏みにじむんだ!」


 100人の人だかりが一斉に彼女を非難し始める。これじゃ、つるし上げだ。

 そして、その群衆の中から、一粒の小石が飛んできた。


「っ!」


 それは、彼女の額を掠めて、地面に落ちた。

 直撃ではなかったものの、尖った部分が当たったのか、彼女の額に少しだけ血が滲む。


 その様子に周囲の群衆は少したじろいだが、


「出て行け!」 


 そういう声がどこからともなく上がると、それはやがて大きな声となり、


「出て行け! 出て行け! 出て行け」


 大きなうねりとなって彼女を襲った。


 それでも −−


 彼女は、静かに男爵令嬢を見つめていた。

 

 唇を噛みしめ、青ざめた表情を浮かべながらも、目は静かに男爵令嬢だけを見つめていた。

 しゃがみ込んでしまえば、逃げ出してしまえば……この場を凌げたかもしれない。だが、彼女のプライドが、意地が、矜持が、家格が、国が、教育が、彼女をそこに縛り付けていた。


 その様子に、わずかに男爵令嬢の口元が上がった。


 その瞬間、


 僕はスンを抱え、様子をみていた屋上から飛び降り、男爵令嬢の正面に降り立つ。


「ひっ」


 男爵令嬢の顔が恐怖に引きつるが、それは無視して、


「刀」

「ん」


 これだけの言葉にスンは刀に変化した。僕は地面に落ちようとする、その(スン)を掴むと、そのまま鞘から抜き、ためらいもせず、男爵令嬢を斬り伏せた −−



次話より、ビッチェの街へ出発したあたりまで、時計はさかのぼります。

感想お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ