ドタバタ学園生活~夜のピクニック~
都心から少し外れた所にある俺たちの学校には、一風変わった行事があった。
夕方に都心に向かい、そこから夜道を歩いて学校まで帰って来る『夜のピクニック』と名付けられた行事だ。
ただ夜道を歩くだけの行事だが、この行事は生徒達からかなり人気のある行事だった。
普段見慣れた道も、夜には別の顔を見せる。
都心のライトアップされた街並みを抜け、徐々に明りは少なくなり、最後は星空の下を歩く道のりは、どことなく幻想的に思えてくる。
ある者は、一人星空を仰ぎ見ながら歩き。
ある者は、カップルで互いに手をつなぎながら嬉しそうに歩き。
ある者は、仲間と笑い話をしながら楽しそうに歩く。
その光景は傍から見るとサーカスの一団が列を作り歩くような不思議な光景。
生徒達はこの不思議な行事を心から楽しんでいた。
「しかし夜道を歩くってなんか楽しいな」
「あぁ、ただ歩くだけなのに心が躍るな」
俺は親友や、親友の彼女、委員長などと一緒に夜道を歩いていた。
いつもの放課後の様につまらない雑談を話しながらも、いつも以上に心は高揚し、笑い、喜び、楽しみただ歩く。
「本当に星空が綺麗ですね」
「なかなか落ち着いてこうやって星空を見る機会もないからな」
「でも俺こういう星空を見ると、あれ思い浮かべるんだよな」
「あれって?」
「アニメ化物語のED『君の知らない物語』あれのPVに似ているんだよな今の俺達」
「…確かに似てるな」
この間こいつとカラオケに行き、見たPVと今の状態は似ている。
「今ipod にその曲入ってますけど、良かったら流しましょうか?」
「おう、ちょっと流してよ」
彼女がそう言い、その曲を流してもらう。
あたりが静かだから、曲はあたりに響き全員その曲に耳を傾ける。
わずか5分弱の曲が終わると、またみんな楽しそうに笑っていた。
「まさかこの場でアニソンに感動するとはね」
「でもこんな場には合ってたんじゃない、委員長?」
そう言って、また俺達は雑談を続けながら歩き続ける。
後一時間足らずで終わる道のり、そこに一切哀しい予感は無かった。
ただ残された道のりを少しでも楽しもうと全員思っていた。
この行事は三月の終わり、クラス替えの前に行われる行事だ。
一年を振り返り、それぞれがそれぞれの思い出を語り合う。
一抹の寂しさは全員持っている、でもそれ以上に全員最後を笑顔で終わりたいと思っている。
最後を笑顔で締めくくれる行事だから、全員笑顔で星空の下を同じ時間を過ごす。
星が俺達を見守り、明日からまた新しい日が昇る。