第七話 ~精霊の巫女と新たな出会い~
その頃、エレナは――。
やはり眠れぬ夜を過ごしていた。
ルークに会いたい。声を聞きたい。
話したい。その思いが、悪夢となって
現れていた。
ルークが別の女性と楽しく話している
夢だった。
しかも、自分には決して向けないような
笑顔で。
「ルーク……」
エレナが顔を手で覆った、その時だった。
「エレナちゃん、どうしたの?」
扉が開き、ここの住人、ステラ=ワイズが
やってきた。
白くて可憐な花を抱えている。それは、百花白蓮だった。
本物を見るのは、生まれて初めてだ。
「ステラ、さん……」
涙でにじんだエメラルドグリーンの瞳をこすり、
エレナは無理に笑った。
この人とは、少し話しにくい。何故なら、嫌な
思いをさせてしまったからだった。
「昨日は、ごめんなさい……」
「いいのよ。もう終わったことだから。今日は、もう
一人連れて来ているのよ、エレナちゃんに紹介する
わね」
ステラの後ろから、幼い少女が顔をのぞかせていた。
くりくりとしたチョコレート色の目と髪。
可愛らしいが、青白い肌の子だった。
「ぼくはジゼット=ブラック。ここの庭番をやってる。
あんたも、精霊の巫女なんだって?」
睨むように見られ、エレナは怯んだ。
強い眼光が彼女を貫く。
怒られているような感じがしてエレナはどうしたら
いいか分からなくなった。
しかし、ジゼットはどうやら友好的なようだ。
「これ、ぼくの好きな花。仲良くしよう」
「え……?」
「ヤなの? ぼくのことキライ?」
「ジゼット!! あんたの目は誤解を招きやすいのよ。
……ごめんね、エレナちゃん。この子、これでも歓迎
してるのよ」
「これでもってなんだ、ステラ!! ぼくはちゃんと
歓迎してるぞ!!」
エレナは小さく笑い、ステラ達から花を受け取った。
ジゼットが上目づかいで見てくる。
「眠れないんだろ? この花の匂いかぐと、良く
眠れるよ」
幸せな気持ちになりながら、エレナはルークはどう
しているんだろう、と考えるのだった――。
次の日も、エレナは軟禁生活を満喫していた。
友人のステラと、ジゼットが部屋に来ている。
誘拐したあの男は、まだ顔を見せてもいなかった。
ステラ達に聞いても、聞かされてないから、とか、言う
事が許されてない、とか言われて容量を得ない。
少し太ったかもしれない、と思う今日この頃のエレナ
なのだった。
あまりにも出される料理が美味しすぎるため、ついつい
食べ過ぎてしまうのである。
しかも、部屋から出してもらえないため運動もしにくい。
料理の腕を見習いたいと考えたエレナは、ステラと
ジゼットに聞いてみる事にした。
すると、ステラがあっさりと教えてくれる。
「誰が作っているか、ですって? 元精霊の巫女の一人の、
ミルカ=ライニオって子よ。会ってみる?」
「はい! ぜひ!」
ちょっと待っててと言い置いてステラはエレナの部屋を
出て行った。
あの男に命じれているのか、鍵だけはかけていったので
エレナはちょっとがっかりしたけれど仕方なかった――。
「ミルカ=ライニオよ。エレナ=ウクウィッドって言っ
たっけ? あなた」
料理版だという少女、ミルカはふっくらとした体形の
少女だった。
決して太っている訳ではなく、健康的な雰囲気を醸し
出している。
ふわふわとした栗色の二つ結びの髪と、大きな同色の
瞳が愛らしかった。
真っ赤なエプロンつきのワンピースと同色の髪を結ぶ
リボンがよく似合っている。
「エレナです、ミルカ、さん? よろしくお願い
しますね」
「ミルカでいいわよ、さんづけとか慣れてないし」
お近づきの印だと言うと、ミルカは小さなポケット
から焼き立てクッキーの入った袋を手渡してくれた。
薄いピンク色のリボンが結ばれた小袋だ。
中身も動物を模した可愛いデザインではあるけれど、
このままだと以前よりふとってしまうという危機感の
あるエレナは若干苦い顔になってしまった。
「私、お茶入れるわねエレナちゃん」
「あ、じゃあ皆で食べましょうよ! その方が楽しい
ですし!!」
「やったぁ! 僕もミルカのクッキー食べ
たかったんだ!」
「じゃあ、そうしましょうか。エレナがそう言う
なら」
昨日の最悪な気分などすっかり忘れながら、エレナは
ミルカ、ステラ、ジゼットの三人と一緒にかしましく
ティーパーティーとしゃれ込んだそうな――。
今回のエレナは結構ほのぼのしてましたね。
でも、この中の誰かが次回エレナを裏切って
しまいます。突然裏切られたエレナはどう
なってしまうのか!?
次回もよかったら見てやってください。




