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スピリッツ! ~おちこぼれ勇者の大冒険~  作者: 時雨瑠奈
成長していく勇者
7/33

第六話 ~精霊の姫は戦う~

「きゃああっ!!」

 悲鳴がその場の木々を震わせる。

銀色の剣から、アンジェ様!!と

声が上がった。

 結界は役には立たずすぐに破られた。

精霊達がパアッと一斉に散る。

 剣から解放されたのだ。

「アンジェ!! 大丈夫か!!」

「今、癒すからね」

 ルークとビショップが慌てて駆け

寄った。

 キッとアンジェが睨みつける。

宝石のような銀の瞳の、あまりの

意思の強さに二人はびくっと

なって動きを止めた。

「来ないで、来ては駄目!!」

「ほう。まだ奴らをかばう余裕がある

のか」

 アンジェは今度は男の方を睨んだ。

しかし、男は楽しげに笑うだけだ。

 黒衣の男が何を考えているのか、

ビショップにもルークにもよくは

分からなかった。

 いや、アンジュにも完全には理解

しているとは言い難いだろう。

「勇者と巫女の血縁には手を出させ

ません」

「それはお前次第だな」

「やああああっ!!」

 気合一閃、アンジェが銀色の剣を振り

おろした。

 精霊の力が宿っていなくても、普通の

武器より威力はあるのだろう。

 が、フッと笑うと、男はそれを余裕で

かわしてしまった。

 アンジェの額から一筋の汗が流れ、

長い銀の髪に滴り落ちる。

「アンジェ、よけてよ!!」

 ビショップが見ている事に耐え兼ね、

銀色の弓を構えた。

 狙いを男に定め、打つ。

「駄目ッ!!」

 アンジェが叫んだが、もう遅かった。

矢はすでに放たれている。

 男が手を挙げてそれを止めた。

空中に矢が静止する。

 ビショップが息を飲み、青ざめた。

ルークが彼をかばおうと前に飛び出す。

「やめて!!」

 アンジェの制止は届かない。

男はそれを解放した。

「「わあああああああっ!!」」

 二人は返された矢に服の袖を貫かれ、木の

幹に体を縫いつけられた。

 魔力も込められていたらしく、動く事が出来

なくなる。

「ルーク!! ビショップ!!」

「人のことより、自分の心配をするんだな

アンジェ。暗黒閃光ノワール・クラルテ!!」

 アンジェの胸に黒き光が吸い込まれていった。

彼女の体がびくり、と跳ねる。

 たとえようのない痛みが体の中を駆け抜けて

行った。

「うあ、うあああああああっ!!」

 絶叫の声を上げ、彼女はかくり、と気絶した。

男が今度は二人の方にやってくる。

 キッとルークは男を睨み、ビショップは泣き

そうな顔になっていた。

「来ないで、来ないでよ!!」

「ちくしょう!! ちくしょう!! ちくしょ

……う」

 ビショップは泣きながら、ルークは悪態をつき

ながら、攻撃をされて意識を手放した――。


「チッ。余計な事をしてくれたものだな、あの

者は!」

 男は悪態をつきながら剣を振るっていた。

しかし、ルーク達を殺すことができない。

 彼らは、それぞれの武器に守られていた。

正しく言えば、精霊達に。

 精霊達は一部は渋々と、一部は嬉々として

ルーク達を守っていた。

(ルーク、ビショップ、ベリエ守る……!)

(まあ仕方ないから守ってあげるよ!)

(手のかかる小僧達じゃのう……)

(あいつらが死んだらアンジェ様が悲しむから

仕方ねえな~けけけ!)

(全く~役に立たない勇者なんだから~)

(勇者もそうだが、巫女の血縁も情けない

ものだな)

(勇者も、巫女の血縁も私が守ります!)

(面倒だけど守るしかないか……)

(アンジェ様が倒れた今俺達が頑張るしか

ないぜ~)

(なんでこんな奴らを守らなきゃいけない

のよ!)

(ルーク達は傷つけさせないから!)

(まああたしはどっちもが傷ついたって構わ

ないんだけど、アンジェ様に怒られそうだし

なあ)

(仕方がありませんわね)

 ベリエ、トロー、バランス、リオン、ポワソン、

カンセール、ジェモー(姉)、ジェモー(妹)、

カプリコルヌ、ヴィエルジュ、サジテール、スコル

ピオン、ヴェルソーの精霊連合軍に、男はチッと

舌打ちすると姿を消した――。



 ルーク=ウレイアが目覚めた時、精霊の姫

アンジェは、うずくまったままぴくりとも

動かなかった。まるで死んでいるかのように。

 ひっ、とルークは恐怖で青ざめた。

仲間を失ってしまうかもしれない、という想いが

彼の伸ばした手を震えさせる。

「アンジェ!! アンジェ!! 大丈夫か!?」

 ルークが揺り動かすと、彼女はううっ、と苦

しげに呻いた。

 胸に手をあて、かきむしるような動作をして

いる。目覚める気配はなかった。

 とりあえずルークは彼女を、大きな木の下に

寝かせた。アンジェが倒れた後、彼女がどこ

からか出したものたちは、あとかたもなく

消えていたのだ。

 ビショップ=ルクウィッドも倒れていたが、

こちらは安らかな寝息が聞こえたので、

放っておく。

 ビショップの姉、エレナがさらわれた際に

落とした、百花白蓮フルール・ブランの髪飾りを取り

出してながめ、ルークは歩き出した。

 彼がいつものように素振りをしていると、

ビショップが走り寄ってきた。

 一旦手を止め、振り向く。

「ルーク!!」

「ああ、ビショップ。起きたのか?」

「アンジェ、どうしたの? 苦しそうで、全然起き

ないよ」

 ビショップの淡い緑の目に涙がたまっていた。

しゃくりあげ、彼はルークに抱きつく。

 ルークは仕方なく、剣を地面に置いて彼を抱き

しめた。

「アンジェが死んだら、いなくなっちゃったらどう

しよう……。僕、やだよ、そんなの……」

「大丈夫だよ。アンジェがそんな簡単に死ぬ訳ない。

あいつは、精霊の姫さんだぜ? そんなやわじゃ

ないよ」

「う……でも……」

「アンジェを信じろ!! アンジェは、アンジェの力は

あんな奴になんて負けない!! そうだろ?」

 こくり、とビショップは頷いた。ごしごしと目をこすり、

彼の目を覗き込む。その目は決意に満ちていた。

「僕、ルークと一緒に訓練するよ!!  自分では強い

つもりだった……だけど、あの男には全然歯が絶た

なかった」

「うん、一緒にがんばろうぜ!! でも、その前に……」

 ぐうううううっ、と二人のお腹からけたたましい音が

聞こえた。

 彼らはどちらからともなく、照れて笑いながら言った。

「腹ごしらえ、だね」

「そういうことだ」

 きらきらと彼の目が輝きだしていた。楽しそうだ。

ルークがこんなに明るい表情を見せるのは、久しぶり

かもしれないとビショップは思った。

「さあっ、食料探索に出かけるぜ!! アンジェが起き

たら、おいしいもの食わせてやりたいからさ」

「る、ルーク、何でそんなに楽しそうなのさ~!!」

 ビショップのひるんだような声をしり目に、ルークは

張り切って森の中に飛び込んで行った――。



 アンジェが激闘の末、男に倒されてしまいました。

気絶するルークとビショップを守る精霊達に業を煮や

した彼は姿を消します。一体彼の目的はなんなのか!?

 次回は誘拐されたエレナのお話になります。

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