第三話 ~精霊の姫は語る~
ルーク=ウレイアは、エレナの弟のビショップと共に、
精霊の姫・アンジェの説明を受けていた。
「いいですか、ルーク。その剣は、精霊の剣。精霊達の
力がなくては、意味がありません。まずは、柄の部分を
見てみてくれますか?」
ルークは銀色の剣の柄に注目した。十二個の小さなくぼみの
ような物がある。
そのうち、二つだけに、小さなキラキラした宝石がはめて
あった。金色と緑色のやつだ。
「これは精霊に認められた証です。この場合は、サジテールと
ベリエですね。全員を認めさせないと、あの男は倒せません」
「アンジェ、ジェモーの場合はどうするんだ? あいつら
双子だろう?」
「良い質問ですね。ジェモーは両方に認められないと、
この宝石――〝プリュネル〝は、つきません」
「わかった」
それから、アンジェは小さな弓を出し、ビショップに
渡した。
「あなたにはこれを渡しておきますよ。精霊の弓です。
剣よりは威力は弱いですが、ルークの補助くらいは
できますよ」
「わあ、ありがとうございます!!」
澄み切った緑色の瞳が輝いた。銀色の弓を手に取った彼は、
はしゃいでひっくり返したり、構えてみたりし始めた。
ビショップの弓にも十二個のくぼみがある。
彼はひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、と
〝プリュネル〝の数を数えている。
彼の弓には、ベリエ、サジテール、ポワソン、ジェモー、
ヴェルソー、カンセールに認められた証があった。
緑色、金色、水色、黄色、青色、緋色の宝石が一斉に
きらめく。
「うわっ!! 俺のより、ビショップの数の方が多い!!」
「彼は精霊の巫女の血縁ですからね。エレナならば、一度で
全員の物を取れたと思いますよ」
ルークは落ち込み、半泣きになっていた。
「俺、才能ないのかなあ」
「ルーク、そんなことはありませんよ。その剣は、あなたを
選んだのです。あなたに才能がなかったのならば、その剣は
抜けなかったでしょう」
ビショップがじろりとルークを睨んだ。
「お姉ちゃんに、卑屈になるのは駄目だっていわれたでしょ」
「う……。ごめん……」
前途多難な勇者は、小さくため息をつくのだった――。
ルークはビショップと共に、初の戦いに挑む事にした。
敵は、一番弱いといわれているハルピュイア。
鳥の羽根を持つ女の顔をした魔物だった。
ビショップは難なく弓で倒しているが、ルークは飛び回る
敵に翻弄されていた。
この敵は弱いのだが、ひどく素早いのだ。
「め、目がまわるうううう」
周囲をぐるぐるとまわられ、ルークはその場に倒れこんだ。
アンジェが目を手で覆い、見守っていた十二精霊が呆れた
ような顔になっていた(約三名を除く)。
「けけけっ。愚かだなあ、この勇者」
リオンがおかしそうに笑った。他の一部の精霊達も
くすくす笑っている。
アンジュがいさめたが、笑い声は止まらないようだ。
「ルーク、がんばって!!」
敵を倒しながらビショップが言う。ハルピュイアにも笑われ、
腹を立てたルークは、ぎゅっと剣を握った。
「調子に乗るなよ、こいつ!!」
ルークが振り回した剣が、バカにして下の方にいたハル
ピュイアの羽根にあたった。
ぎゃあっと絶叫が響く。一体が消滅した。
「あ、初めて倒しましたわ」
ヴェルソーの目が大きく見開かれた。一瞬だけ、チカッと
青色の石が光ったが、すぐに消えてしまった。
少しだけ、ヴェルソーは感心したらしい。
最後の敵をビショップが倒し、戦闘が終わった。
「やりましたね、ルーク!!」
「初めてにしては、筋がいいと思うよ!!」
アンジェとビショップに褒められ、ルークは赤く
なった――。
休憩しましょうか、とアンジェが言い、何もない空間に
手を入れた。
何かを探すような動作の後、彼女は風変わりな物を
取り出す。
白い粉のような、雪の様な小さな結晶だ。
「マナという、食べ物です。甘いですよ」
恐る恐る二人は食べてみた。すごく甘い。
幸せな気分を感じさせた。
ルークは自然と顔を綻ばせ、ビショップは飛び跳ねて
喜んでいる。
「なあ、アンジェ」
マナを食べながらルークが聞いた。アンジェが小首を傾げながら
ルークへと視線を向ける。
「なんですか?」
「精霊の巫女って、なんなんだ? あいつは、エレナに何を
させようとしているんだろう?」
「精霊の巫女は、世界の理を知る者です。……それ以上は、
今は言えません。精霊界での理屈はそうですが、人間は違った
ようなのです」
「違うってなにが?」
「人間は、愚かなことをしたのです。恐ろしい、恐ろしいことを、
独自の偏見でしたのです……」
青ざめた顔で、アンジェは語り始めた。今はもう行われていないが、
精霊の巫女の儀式は精霊王に許しを得るための生贄の――人身御供の
儀式だった事。それで何人もの少女達が死んだ事、を。
「人身御供だってえ!?」
アンジェの言葉を聞き終わるなり、ルークはギョッとなって
喚いた。
ビショップは青ざめて震えている。もし、本当に今の通りの
事が、村で行われていたなら、エレナは死んでいたのだ。
「昔のことです。今は廃止されているでしょう。……
エレナが攫われた城には、心に傷を残した者が大勢います。
もうすぐ死ぬところを、彼に救われた者もいるのです」
「じゃあ、いい奴なんじゃん」
「違います!! あの男は、自分の事しか考えていないのです。
自分の利益のために彼は、女達を攫ったのです!!」
それ以上は、アンジェはいくら聞いても教えてくれなかった。
あの男の目的も、エレナが攫われた訳も、あの男の正体さえも――。
今回はルークサイドのお話です。
ルークが初めて実戦を行いました。
苦戦してますが、なんとか一勝
出来ました。小さな一歩ですが
しだいに成長していますルーク。




