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スピリッツ! ~おちこぼれ勇者の大冒険~  作者: 時雨瑠奈
話し合う巫女
30/33

第二十九話 ~精霊の巫女は城の屋上で~

 エレナ=ルクウィッドは黙って

精霊王について行っていた。

 彼もエレナもまた口を利かない。

静寂の中、響くのはかつんかつんと

いう靴の音だけだ。

 エレナは黙ってついていくしか

なかった。

 正直怖い。だけれど、ルークが

来てくれるという安心感も半分は

あった。

 震えそうになるのを必死でこらえ、

彼女はエメラルドグリーンの瞳で

精霊王を睨みつける。

 しかし、精霊王はエレナの方を

見もしなかった。

(ルーク、助けて……!!)

 エレナは心中で助けを求めながら

歩いていた。

 彼が止まらないようにと必死に

祈った。

 仲間を犠牲にはしたくなかった。

だけど、犠牲になるのは怖かった。

 それを彼には知られたくないため、

エレナは感情を消した無表情で歩いて

いた。

 ずっと着かなければいいのに。

そう思ったエレナをあざ笑うように、

すぐに目的地についてしまった。

 そこにはカトレイアがいて、何事か

叫んでいた。

 今にも泣きそうな目は、決して喜んでは

いない。

 彼女の声はエレナや精霊王には聞こえない

みたいだった。

 何を叫んでいるんだろう、とエレナは思う。

エメラルドに似たウェーブがかった長い髪を

揺らし、同色の目を潤ませ彼女は必死に何事か

言おうとしていた。

「ねえ、何か言ってるわよ」

「お前には関係ない事だ。口を利くな」

 エレナはムッとなって口を開きかけたが、精霊

王が「仲間達を酷い目に遭わせていいのか」と睨ん

だのでそれ以上口を利く事が出来なくて口を

つぐんだ。

 歪んだ笑みを浮かべる彼とは対照的に、

カトレイアは嘆き悲しんでいるよう

だった。

 エレナには彼女の気持ちが分かる気がした。

一度死んでいるのにこれ以上他人の命を使って

まで生きたくない。

 声は聞こえないけれど、エレナはそんな感じの

事を精霊王に彼女は訴えているような気がした。

 カトレイアはエレナと目が合うと、彼に伝えてと

身ぶり手ぶりで話しかけてきたけれど、黙れと

命じられたエレナはただ首を振る事しか出来

なかった。

 カトレイアは、それでも諦めたくないのか

身ぶり手ぶりで何度もエレナに話しかけて

来た。

 エレナは彼女の必死な想いに応えたいと思う

ものの、ステラ達のためにもそれを彼に言う訳

にはいかない。

 それに、言ったとしても死にたくないから言い

逃れをしたのだろうと彼は判断しただろう。

 彼はエレナの言葉に耳を貸さないのだから。

「カトレイア、もうすぐだ。もうすぐ君を……」

 狂ったようにぶつぶつと言いながら笑う彼に、

カトレイアは静かに真珠のような涙を流した。

 エレナは彼女を窺いながら彼についていく。

やがて、そこには円陣のような物が描かれて

いた。

 円陣からは温かい光が発されていて、何故か

エレナは自分の身が危ういというのにそれに

見とれてしまった。

 あまりにもそれは綺麗だったのだ。

しかし、エレナはそれを長くは見ていられ

なかった。

 精霊王はエレナにその円陣に入る事を指示し、

膝をつかせて目を閉じさせたのだ。

 呪文のような物がエレナの耳に聞こえてくる。

エレナは暗闇に一人残されたような錯覚に陥り、

ついそこには存在しない髪飾りをいじる真似を

してしまった。

 小さい頃から何かある事に髪飾りをいじって

いたので、ついその癖が出てしまったようだ。

〝どうして分かってくれないの!? 私の声を

聞いて!! クラウン!! お願いよ!!〝

 ついにエレナにもカトレイアの声が聞こえた。

それは二人の気持ちが通じ合ったからではない。

 エレナの中に、カトレイアが、彼女の魂が入り

込もうとしているからだ。

 エレナの魂を追い出し、カトレイアが彼女の体に

存在するように精霊王が仕組んでいるからだ。

 エレナはふわふわとする感じを必死に振り切ろうと

したけれど、体から離れ始めている魂をそのまま体に

閉じ込めておく事は出来なかった。

〝私は、生きていたくないのに!!〝

(ルーク……最後に、会いたかった……)

 エレナが意識を保っていられたのはそこまでだった。

カトレイアの魂が完全にエレナの体に同化し、エレナの

魂が弾き飛ばされてしまったからだ。

「カトレイア……ようやく君を……!!」

「エレナ!!」

 ルークが飛び込んで来たのはその直後だった。

後ろから、ビショップ、カストル、そして精霊王の妹

であるアンジェが姿を現す。

「お前!! エレナから離れろ!!」

 ルークは精霊王に向かって銀色に煌めく剣を叩き

つけようとした。

 精霊王は口元に笑みを浮かべながらそれを

回避する。その笑みは、勝利と喜びの笑み

だった。

「お姉ちゃん!! お姉ちゃん!!」

「あんたがエレナなの!? しっかして!!」

 ビショップとカストルが必死にエレナを揺さぶる。

しかし、エレナは、正しくはエレナの体に宿った

カトレイアは、目を見開いたまま動かないばかり

だった。

 同化したばかりでまだ魂が定着していないのだ。

自体に気付いたのはアンジェだけだった。

「兄さん!! やっぱりあなたは……!!」

「もう手遅れだ!! あの娘の体に、あの娘の魂は

すでにない!! 私の愛するカトレイアが、ようやく

蘇ったのだ!!」

「お姉ちゃん、が……?」

 精霊王の言葉に、カストルはショックのあまり動け

なかった。

 生き返る意思などなかった姉を、彼は生き返らせて

しまったのだ。

 でも、カストルにも彼の気持ちが分かる気がして、

そんな自分を心中で責めた。

 カトレイアと似た、サイドポニーに結った髪が

元気をなくしたようにしおれて垂れ落ちる。

「エレナは、エレナはどうなったんだ!!」

「そんな娘は知らぬ。カトレイア、ようやく君にまた

会えた!!」

 精霊王が彼女に近づく。

もはや、ルーク達の姿は彼には見えていなかった。

 かつて愛した娘、カトレイア以外は。

「クラウン……」

 ようやくエレナ――否、カトレイアが顔を上げた。

その顔にはどこか憂いが宿っている。

「カトレイア……!!」

「クラウン……!!」

 間に合わなかった、と膝をついたルーク達は、

かつての恋人達が抱き合おうとするのを、ただ見て

いるしか出来なかった――。

 ようやく、ルーク達がエレナと

再会しつつも遅かった!なお話に

なってしまいました。

 修正&追記をしたので、よかったら

古い作品も見ていただけると嬉しいです。

 修正作業、全部終わったのでまた投稿

開始します。

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